蕃先生 その2
第11話 わかりませんけど
―――――――――
そして待っていた生徒に声を掛ける。
「おまたせ。じゃあ、行こうか」
「はーい」その生徒は元気よく返事をして、「教室、異常ありませんでした?」
「なかったよ。いつも通り」
「へぇ……交換条件ってやつですか?」
「数学のテスト問題を教えた代わりに、情報を聞き出そうってことですか?」
「ああ……そんなつもりはなかったけれど……」言われてみれば交換条件みたいになっていた。「じゃあ、そうしようか。私の質問に答えてくれたら、他の科目の問題も教えてあげるよ」
「あんまり嬉しくない条件ですね……数学以外は大丈夫なんですけど……」だから数学の問題を聞いてきたのか。「まぁ、いいですよ。答えられないことは答えませんけど」
階段を下りながら、
「
「ああ……先生のクラスにいる美人さんですよね」やはり美人という評価らしい。「名前は知ってますよ。話したことはないですけど」
「どんな人に見える?」
「どんな人って……クールで、ちょっと無愛想? まぁ見た目だけの話ですけど」
だいたい合っているかもしれない。やはり見た目というものは重要なファクターだ。
その生徒は首を傾げて、
「
「ちょっとクラスで孤立してしまっていて……なんとかクラスになじませてあげたいんだけど……」
孤立は悲しい。だから友達を増やしてあげたい。
「別にいいんじゃないですか? 孤立していても」意外な答えが返ってきた。「今は学校以外にコミュニティを作るのも難しくないですし……クラスで孤立しているからって、問題ってわけでもないですよ」
「……そういうものなの?」
「そうなんじゃないですか? 最近の子はインターネットとか、当たり前のように使いますからね。
好きで孤立。なんとも意外な言葉だ。
孤立というものは悪いことだと思っていた。だから当然孤立している人も悩んでいるのだと思っていた。
しかし最近の生徒はそうでもないらしい。ああ……なんか自分は年齢を重ねたのだな、と変なところで悲しくなってしまった。若者と価値観が合わなくなってきている。
その生徒は言う。
「まぁ……
「……直接?」
「はい。結局は……人の心なんてわかりませんよ。本心が知りたいなら、直接聞くしかないと思います。答えてくれるかどうかは、わかりませんけど」
……なるほど……それもそうかもしれない。
こうやって外部から情報を仕入れようとしても意味がないのかもしれないな。この人の言う通り、本人の心は本人に聞くしかないのだろう。
……
ならば行動は1つだ。
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