第50話
城のベランダに着いた。開いている窓から宴会の声が聞こえて来た。
「まだ、みんないますね」
「明楽。報告してもいいか?」
クロは明楽を見た。
「うん。いいわよ」
二人は宴会に戻った。ウルフは酔い潰れていたが、兵士たちは互いに楽しそうにしていた。
「みんな悪い。話したい事がある」
クロの声に、兵士たちはクロに注目した。
「実は…」
クロは明楽の方を見た。
「俺は、三日月明楽と結婚する事になった」
兵士たちは酔いもあったのか、ポカーンとしていたが、一人が拍手すると皆が拍手を送った。
「クロさま。立派になられた…」
「明楽さんと幸せに!」
クロの過去を知っている兵士は涙を流していた。
「みんな…ありがとう」
クロは感謝述べた。明楽は兵士たちに深く礼をした。
「クロと共に歩んでいきます。どうか、よろしくお願いします」
その姿に兵士はさらに拍手を送った。
「明楽さん!よろしくお願いします!」
兵士たちはそう声を掛け合った。すると、拍手と歓声の音でウルフが起きた。
「なに…?なんなの?」
「ウルフさん!クロさまと明楽さんが結婚報告されたんですよ!」
一人の兵士がウルフに教えた。
「け…こん…え!?」
ウルフは飛び起き、明楽に抱きついた。
「明楽ちゃん!どういう事!?クロと結婚!?」
「ちょっ…ウルフさん!」
明楽は驚いたが、ウルフは泣いていた。
「なんで教えなかったの!ずるい!」
「ウルフさん…ごめんなさい」
すると、クロがウルフと明楽に抱きついた。
「ウルフ。俺と明楽は結婚するが、今まで通り兵士を導き、城を守っていく。もちろん、明楽を守る。お前を一人にはさせない。俺の大事な人だし」
クロは明楽を見た。
「私もウルフさんとこれからも過ごしていきたい。優しいお姉ちゃんだから」
ウルフは大泣きした。
「もう!あんたたちは…私、生きている時こんなに大切にしてくれる事なんてなかった。生きているうちに味わいたかった。だから、あんたたち!」
ウルフは二人を見つめた。
「私と違って、あんたたちは生きている。この時間を大切にしてほしい。私以上に生きている間に幸せを掴んで」
ウルフの言葉に、クロと明楽は頷いた。ウルフは笑顔になった。
「さ!兵士たち!二次会よ!クロと明楽ちゃんを祝って!」
ウルフの声に兵士は飲み物を持った。クロと明楽も慌てて飲み物を持った。
「かんぱーい!」
楽しい声が外まで響いた。
目覚めると、朝になっていた。
「明楽。おはよう」
いつものようにクロは朝食の準備をしていた。
「おはよう」
明楽は眠そうに答えた。
「朝ご飯できたから、食べよ」
「うん」
明楽は席に着いた。
「いただきます」
明楽はご飯を一口食べた。
「美味しい」
「よかった」
クロはお茶を飲んでいた。
「明楽。昨日は楽しかったな」
「そうですね。そういえば、ウルフさん。大丈夫でしょうか?」
クロは微妙な顔つきになった。
「早朝に目が覚めてな。コッソリ様子見に行ったんだが、潰れてたよ。おまけに、兵士たちの大半も潰れてたわ。まぁ、みんなが頑張ってここまで来たんだ。今日は多めに見るよ。まぁ、飲み過ぎの注意はするけどな」
「あ…ハハ」
明楽は苦笑いしていた。
「それに、昨日はありがとうな。俺の気持ち受け取ってくれて」
クロの顔がどこか赤くなっていた。
「ううん。すごく嬉しかった。それに、素敵な指輪ありがとう」
明楽は指輪を見つめた。
「すごく似合ってるぞ。喜んでくれてなによりだ。あ、ご飯が冷めるぞ」
二人は朝食を済ませた。
「今日は穏やかですね」
クロは食器を片付け、明楽の横に座った。
「なぁ。今から二人っきりになれるところに行かないか?」
「え?いいの?」
「だって、みんな潰れてるんだぜ。まぁ、大丈夫な兵士には一言言っておくが」
明楽は頷いた。
「行く」
「わかった。ちょっと言ってくるよ」
クロは部屋を出て、廊下をたまたま歩いていた兵士に一言言い、部屋に戻った。
「よし。今回は一瞬で行くか」
「うん!」
明楽の手を取り、クロは指を鳴らした。
「着いたぞ」
目を開けると、クロのもう一つの部屋についた。クロはベットに座った。
「ここは落ち着くな」
明楽はクロの横に座った。
「平和な時間が続くといいな」
明楽はのんびりとしていた。
「続くように、俺は努力するよ。でもさ。俺たち、歳をとらずに生きていくんだよな。全然実感がないな」
「うん。私も実感ないよ。どうなるんだろうね。これから…」
「でも、俺らは変わらないと思う。いつも通りの生活。だが、明楽を狙う奴がいたら俺は明楽を守る。それだけだ」
「うん」
ふとクロは思いついた。
「そういえば明楽。結婚式…しないか?」
明楽は首を傾げた。
「結婚式?なんですか?」
「あぁ。知らないのか。俺と結婚の誓いをみんなの前でするんだ。女性は綺麗なドレスを着るんだ」
「そうなの?気になるな」
「じゃぁ、ドレス作るか?振袖と同じ要領で作れるぞ?」
「本当!?」
「あぁ。なら、今作るか」
クロはそう言うと、デザインを取り出した。
「明楽は着物も似合うし、ドレスも似合うし…迷うな」
「そうですか?」
「明楽は可愛いからな。うーん」
クロは悩んでいた。
「ちなみに、クロは何着るの?」
「ん?それは、お楽しみだ」
「えー」
「基本男性はタキシードとかだぞ?今と同じスーツ姿みたいな感じだ」
「へー。気になるけど、楽しみにしておくわ」
クロの描いているデザインを明楽は眺めていた。数時間で三つの案をクロは描いた。
「こんなところかな。ごめん。ちょっとお茶飲んでくるよ」
クロはキッチンへ向かい、お茶を飲んだ。部屋に戻ると、明楽は一枚のデザインを眺めていた。
「クロ…これ」
「ん?それが気に入ったのか?」
「うん」
クロはデザインを眺めた。
「俺もこれ選ぶと思った。明楽らしいよ」
「いいの?」
「いいぞ。ただ、色を入れてないから色を入れてからだ。だが、今日は疲れた。色はまた明日にするよ」
クロはベットで横になった。明楽は窓をみると、もう夕方になっていた。
「早いですね」
「だな」
「夕食、私作りますよ?」
「じゃぁ、頼んだ」
「うん!」
明楽はキッチンへ向かい、何かを作った。しばらくすると、部屋中にいい匂いが広がった。
「クロ。できたよ」
「今行くよ」
クロは体を起こし、キッチンへ向かった。
「今日は野菜たっぷりのスープね」
見ると、ゴロゴロと野菜がたくさん入っていた。
「いいね。いただきます」
クロは一口飲んだ。
「うん。うまい」
「よかった」
明楽もスープを飲んだ。
「うん!ちょうどいい」
付属のパンと一緒に食べ終えた。
「ごちそうさま。ありがとうな」
「ううん。いつも作ってくれてるもん。こちらこそ、ありがとう」
二人は見つめ合って笑った。
「さて、片付けてシャワー浴びますか」
「そうね」
片付けをし、交互にシャワーをあびた。
「気持ちよかった」
明楽はベットに座り、丸い窓から外を見た。辺りは暗く、月は出ていなかった。
「お茶置いとくぞ」
クロは二つのマグカップを机に置き、明楽の横に座った。
「ありがとう」
「今日は穏やかな日だったな」
「うん」
二人は寄り添いながら、外の景色を眺めた。
「明楽。俺は、今幸せだ」
明楽を優しく抱きしめた。
「クロ。私もよ」
明楽もクロを抱きしめた。
「クロ。私を幸せにしてくれて、ありがとう」
明楽とクロは唇を重ねた。
「明楽。今夜はどうしたい?」
優しい目で明楽を見つめた。
「クロと楽しい夜にしたい」
「ほう。じゃぁ、今夜は明楽が楽しめる夜にしよう」
クロのエスコートでその日はお互いに愛し合った。
朝日がクロを照らした。メガネをかけ、明楽を見た。
「よく寝ているな」
明楽を優しく撫でた。服に着替え、朝食の準備をした。すると、明楽が起きてきた。
「クロ…おはよう…」
目をこすりながら、椅子に座った。
「おはよう。もうすぐできるから待ってて」
しばらくすると、食べやすいサイズにカットされたフルーツが机に置かれた。
「いいだろ?」
「うん。いただきます」
明楽はフォークで一口食べた。
「おいしい」
「俺も食べよ」
クロも一口食べた。
「うん。うまい」
「珍しいですね」
「まぁ。フルーツが食べたい気分だったんだ」
あっという間に無くなった。
「ごちそうさま」
「よし。今日はデザインの色付けしていこうか。で…その後帰るぞ。ウルフが怒りそうだから」
「ですね…」
クロは椅子に座り、デザインに色を塗った。
「この色の方がいいよな?」
「うん。でも、結婚式っていつやるんですか?」
「あ…」
クロは何も考えてなかった。
「いつしようか…」
「ねぇ?夜に結婚式するのどう?」
「いいと思うよ。あ。出来たらさ、三日月の日にやらないか?」
「いいね」
そんな会話をしながら、クロはデザインを完成させた。
「いいな」
「私、これ着るの…信じられない」
「絶対に似合うよ。明楽」
クロはデザインをしまった。
「ここで出さないの?」
「色々付け足しをしたい部分があるんだ。そこは、秘密だ。さ、城へ帰るか」
「うん…」
明楽はどこか寂しそうだった。
「また来れるよ。二人でまた」
「そうだね」
明楽の手を取った。
「行くか」
指を鳴らすと、二人は消えていった。
「明楽。ついた…」
明楽が目を開けると、ウルフが二人に抱きついてきた。
「あんたたち。どこへ行ってたのかな?」
ウルフの顔は悪魔のように怖かった。
「いや…その…」
「ウルフさん。何も言わずに出かけてて、ごめんなさい」
明楽はすぐに謝った。
「うん。明楽ちゃんは許す…が!」
ウルフはクロの足を蹴った。
「!?」
クロは倒れてしまった。
「クロ。正座しろ。明楽ちゃんも!」
ウルフは正座している二人にコンコンと説教をした。
「なんで私に一言言わないの!心配したんだよ!もし、侵入者来たらどうするの!せっかく新婚になったばかりなのに嫌でしょ!」
説教中、二人は頭が上がらなかった。数十分説教が続き、二人は解放された。
「で、何しに行ってたの?」
クロが立ちあがろうとしたが、痺れて動けない。
「何してるの。明楽ちゃ…」
明楽も痺れて倒れていた。
「はぁ…全く」
クロは無理やり立ち上がり、椅子に座った。
「イッテ…明楽と結婚式の話していた」
ウルフは驚いた。
「え!結婚式するの!」
ウルフは明楽を見ると、明楽もなんとか椅子に座った。
「はい。クロと結婚式するんです」
ウルフは二人を見つめた。
「いいんじゃない。むしろ、あんたたちの晴れ舞台みたいわ」
ウルフは羨ましそうに二人を眺めた。
「でもクロ。結婚式って、どこでするの?」
明楽はクロに話した。
「あ…考えて…」
「じゃぁ、城でしたら?みんなで明楽ちゃんとクロを祝うよ」
ウルフが提案した。
「いいね!」
「ウルフ。いい提案だな。よし、俺と明楽の結婚式はここでやろう。ウルフ。兵士たちにも伝えておくれ」
「了解!」
ウルフはウキウキしながら部屋を出た。
「そうと決まったら、明楽。行きたいところがある」
「どこですか?」
「叔父さんの墓参りに行こうかと。俺と明楽の結婚報告だ」
「うん。行く」
「よし。花を準備して行くか」
クロは明楽の手を取り、部屋を出た。花を準備し、墓がある城で唯一静かな所へ向かった。そこには墓が二つあった。
「ここで、叔父さんが眠ってる。その隣が、この前話した明楽さんが眠ってる」
「…」
明楽は花をライトの墓ともう一人の明楽の墓に添えた。
「叔父さん。俺は明楽と結婚することになりました。ずっと明楽を守って行くので、どうか見守ってください」
そして、クロはもう一人の明楽の墓に向きを変えた。
「明楽さん。俺は明楽と結婚することになりました。あなたと約束をした長生きを二人で共に守っていきたいと思っています。どうか、見守っててください」
二人は手を合わせた。すると、墓の横にある木が風で揺れた。
「明楽。戻るか」
「そうだね」
二人は元へ来た道を戻ったが、墓の横にある木から誰かがその様子を見守っていた。クロはその気配を感じ、後ろを振り向くが誰もいなかった。
「…」
「クロ?」
「なんでもない」
二人は戻っていった。
それからしばらくして、城では結婚式の準備で兵士たちが慌ただしく動いていた。
「落ち着いて行動してね。何かあったら報告よ!」
ウルフが先陣を切って兵士たちを動かしていた。
「後夕方になったら、私いなくなるから。明楽ちゃんの着付けしないといけないから、それまでよろしく!」
兵士たちは大声で返事をした。
「明楽。いよいよだな」
部屋で二人は待機をしていた。
「緊張するけど、ドレス着るの初めて…」
「だよな」
「でも、クロは何着るのよ?」
明楽はずっと疑問だった。
「いやいや。今日どうせわかるじゃん」
「そうだけど…」
するとウルフが入ってきた。
「明楽ちゃん。着付けするわよ。クロはあっちいって」
「見届けてもいいが…」
「女子だけ!男子禁止!」
そう言い、クロを部屋から摘み出した。
「明楽ちゃん。緊張してる?」
ウルフは明楽のウエディングドレスをみた。
「はい。めちゃくちゃ」
「だよね。一生に一度のことだもん」
明楽は着物を脱ぎ、ウエディングドレスを着た。
「すごく似合ってるわよ」
ウルフはウエディングドレスの青い帯を結んだ。そして、明楽の髪をセットした。
「明楽ちゃん。もう大人ね。綺麗よ」
「ウルフさん。ありがとうございます」
すると、ウルフは蕾状態の花飾りを明楽の髪にセットした。
「ウルフさん。これは…?」
「ふふっ。夜になったら咲くわ。このウエディングドレスの花の柄。この花と一緒なのよ」
「え!?クロ教えてくれなかった」
「内緒にしといてって言われてたもん。でも、今日咲くわ」
すると、ノックがした。
「入っていいよ」
扉が開くと、ハットを被りドレッサージュコートを着たクロが現れた。
「明楽…めっちゃ綺麗…」
明楽の姿にクロは驚いた。
「クロ…なんか貴族みたい」
「あら。クロらしいわね。タキシードより、そっちの方が似合うわ」
クロは明楽の前へ行き、膝をついた。そして手を差し伸べた。
「明楽。俺と一緒に」
明楽はクロの手を取った。
「えぇ。行きましょう」
二人は城の廊下を歩いた。ウルフは明楽のベールガールをしていた。外の広間に出ると、赤いバージンロードが用意されていた。兵士たちは一人ずつ蝋燭を片手に結婚式の明かりを保っていた。すると、二人の前に黒い馬が前に出た。
「ルナ。案内してくれるのか?」
クロの問いにルナは鼻を鳴らした。
「急で申し訳ありません。でも、ルナがどうしても出たいって嘶いていたので、急遽編み込んで正装しました」
よく見ると、尻尾も可愛く編み込んでいた。
「むしろ嬉しいよ。ありがとう」
月を見ると、今夜は三日月だった。ルナを先頭に二人はバージンロードに一歩踏み出した。音楽に合わせながら、ゆっくりと歩いた。月の光が二人を照らした。すると、蕾だった髪飾りが綺麗に咲いた。
「綺麗だよ」
「クロ。この花は…」
「月下美人って花だ。明楽に似合ってるぞ」
すると、明楽の額の三日月も輝いた。クロは手袋をして気づかなかったが、お互いの瞳がサファイア色に輝いた。教壇に近づくと、ルナは兵士たちのところへ整列した。教壇には老いた兵士がいた。
「生前、牧師をしていたので、今日二人を見届けることになりました」
クロはハットを取り、明楽と礼をした。
「今宵。クロ・ルーマスと三日月明楽の結婚の儀式を行う」
ウルフと兵士たちは、二人を見守った。牧師は儀式を進めた。
「では、まずクロ・ルーマス。あなたはここにおる三日月龍のライダーとして。そして、三日月明楽という人として共に歩み支え合う事を誓いますか?」
牧師はクロを見つめた。
「はい。誓います」
牧師は明楽を見つめた。
「三日月明楽。あなたはここにおるクロ・ルーマスの三日月龍として。そして、クロ・ルーマスのパートナーとして、共に歩み支え合うことを誓いますか?」
明楽は笑顔になった。
「はい。誓います」
牧師は笑顔で頷いた。
「では、誓いの証として指輪を交換しましょう」
すると、ウルフがプレートに乗せた指輪を持ってきた。明楽は驚いた。
「クロ。これ…」
「あぁ。コッソリ作った。指輪というよりリングだな」
黒いリングに青い三日月が描かれていた。すると、牧師が話した。
「指輪のデザインについて、私が説明します。黒は三日月明楽さんの父闇の帝王。三日月は母三日月龍。二人の血を引いた者の龍とそのライダーの意味を込めて、このデザインにクロが作成しました」
クロは手袋をそっと外した。明楽はクロの指にリングをはめた。クロも明楽の指にリングをはめた。
「クロ。ありがとう」
明楽は涙を流した。牧師は儀式を進めた。
「では、誓いのキスを」
明楽とクロは近づいた。
「明楽。俺を選んでくれてありがとう」
二人は唇を重ねた。すると、兵士たちは温かい拍手を送った。
「クロ。これからよろしくね」
「あぁ。こっちもよろしくな。明楽」
二人は兵士たちに礼をした。
「ライト。こんな光景を見させてくれてありがとう」
広間の影になっている木の下でライトとシルビアとナイトが、二人の結婚式の様子を見ていた。
「明楽の母親だ。娘の晴れ舞台を見せてあげないとな。それと、クロの晴れ舞台も見たかったし」
「明楽。綺麗だ」
ナイトが涙を流した。
「クロも立派な男になったな。さて、私たち以外にも見にきてる人がおるな」
ライトは後ろを振り向くと、なんともう一人の明楽である三月明楽がいた。
「死んでるけど、初めましてって言えばいいんでしょうか?」
「まぁ、固くならなくていい。君はなぜここに?」
明楽は結婚式の光景を眺めた。
「ただ、見にきただけです。あのクロがここまで成長してたんだって。それに、本当に私とそっくりですね。もう一人の明楽」
もう一人の明楽が幸せそうにしている光景に、明楽は安心した。
「これからも、もう一人の明楽を守り続けてほしいですね」
ライトは頷いた。
「あぁ。クロは守ってくれるさ」
結婚式が終わり、二人が退場する時だった。
「さぁ、我々も元のところに戻ろう」
「ライト。ありがとう」
シルビアはライトに顔を近づけた。
「また、彼らに会えるさ。君もそう思うだろ?」
ライトは明楽に訪ねた。
「えぇ。また、どこかで会える日を楽しみに待ってましょう…」
クロはふと後ろの視線に気がつき、後ろを振り向いた。そこには陰で見えにくいが一本の木だけあった。
見にきてくれてたのかな…
「クロ。どうしたの?」
明楽は不思議そうに眺めた。
「いや。なんでもない」
クロは明楽に視線を変えた。
「明楽。行こうか」
「うん!」
二人は歩き出したのだった。
(完)
月に恋した男 三日月明楽 @akira0915
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