第43話

レイは高速で元へ来た道を飛んだ。


「追っては来ないか。間抜けが」


すると、さっき入って来た空間の歪みが見えた。しかし、少しづつ小さくなっていった。


「レイ。急げ」


無くなる前になんとか入り、元の世界へ戻った。


「谷川先生。お疲れ様です」


工藤が駆け寄った。


「無事に三日月さんを捕まえましたよ」


レイの腕の中で明楽は眠っていた。


「とりあえず戻りましょう」


「そうですね。目覚めてしまって暴れてしまったら危ない」


工藤はレイに跨がった。


「それじゃ、戻るか」


レイは勢いよく飛び、学校へと向かった。


「それにしても、うまくいきましたね」


「あぁ。それと、あの男が生きていたとは。ライトの甥…クロが」


「でも、こうして確保できたし。ただ、襲撃してくるかもですかね?」


工藤は警戒した。


「多分な。その時には君にクロの殺害を頼むよ」


「任せてください。あいつ、弱いんで」


しばらくすると、学校に着いた。レイはゆっくりと着地し、明楽を谷川に渡した。すると、レイは小さくなり、谷川の肩に登った。


「三日月さんはまだ眠っている。とりあえず、監禁しておきましょう。気がついたら話をしないと」


谷川と工藤で明楽を校長室にある監禁部屋へ運び、鎖で繋いだ。


「とりあえず、片付けしましょう」


「はい」


「工藤くん。くれぐれもここの監禁部屋の情報は吐かないように」


「わかっています」


監禁部屋に施錠をし、谷川と工藤は片付けに取り掛かった。


「…」


二人が校長室を出たあと、レイは外に飛び、監禁部屋についている小さな窓を眺めた。


「明楽…お前…」


まだ明楽は眠っていたが、明楽に何か異変がある事をレイはこの時見破ったが、谷川はこれに気づくことはできなかった。


「まぁ…いい。あいつの物にされるより、お前がその道を進んだならそれでいい」


そう言い、また校長室に戻り机の上で丸くなった。






「クロ。みんな異常なし。城は強風で所々傷だらけだが問題ない」


「そうか。ありがとう」


クロは部屋で悩んでいた。明楽を救出するにはと。


「どうすれば…ただ、行くなら夜…」


横でウルフも考えていた。


「この前みたいに、全員は連れて行ったほうがいいよね」


「あぁ…ただ、明楽が暴走したら、誰も止められない。ましてや…」


「ましてや…?」


ウルフは疑問に思った。クロは悩みすぎて頭を掻いた。


「うーん。なるべく、明楽確保って時に兵士を出して、移動する時に護衛って形がいい…」


すると、ウルフが閃いた。


「あ!兵士消せばいいじゃん!」


「…お前いいこと言うじゃん。天才」


「でしょ〜」


「よし。兵士たちにも話すか」


クロは立ち上がり、ウルフと一緒に大広間へ向かった。大広間には兵士が集められていた。


「急遽集まってもらって申し訳ない。先ほど侵入者が現れて、明楽が連れ去られてしまった」


兵士たちは真剣な眼差しでクロを見ていた。


「犯人は、皆も覚えているであろう。俺の叔父。ライトを殺した張本人。谷川だ。谷川は明楽の力を欲しがっている。明楽の力は強力で、この世…いや。この星自体をなくす力を持っていると言われている。谷川たちは、明楽の力を使って世界を支配するだろう」


兵士たちは驚いた。


「そこで今日の深夜。明楽を救出しに行く。明楽は、俺の大事な人だ。そして、この城のファミリーでもある。ただし、相手も我々がくる事を想定して準備していると思う。兵士たち。そして…」


クロはウルフを見た。


「この城にいる全員をこの世に連れて行き、明楽を救出しに行く。みんな。俺に協力してほしい」


クロは皆の前で頭を下げた。


「クロさま。頭あげてください」


「みんなで明楽さんを救いに行くぞ!」


「谷川…許せない!」


口々に兵士たちが声を上げた。


「ありがとう」


クロは頭をあげた。


「それで、作戦だが…」


クロは作戦を丁寧に説明した。皆がメモをとりながら、話を聞いた。


「よし。今夜よろしくお願いします!」


その声に皆が返事した。




「クロ。なんであんたがそんなに冷静で落ち着いてるの?」


部屋でウルフがクロに話しかけた。


「…」


クロは無言だった。


「あんた…まさか…」


ウルフの驚きにクロは目を逸らした。


「いつ貰ったのよ。なんで言わなかったの!」


「明楽から二人っきりになれるところに行きたいと言ってな。年末だ。明楽自身から俺に力の一部を…」


「でも、それと今回の何があなたを冷静にできるの?」


クロは椅子に腰をかけた。


「仮契約の身だが、あいつらが無理やり明楽から力の一部を貰おうにも、俺がもう受け取っている以上できない。一度っきりだ」


そう言うと、クロはライダーの本を取り出した。


「最近。三日月龍やライダーについて調べてた。明楽がなぜ俺に託したのかって。それは、仮契約でも、他の奴に力の一部を譲ることができないとわかってだ」


「じゃぁ、明楽ちゃん」


「あいつらに囚われてるが、あいつらの思惑はできないってことだ。だが、尋問や拷問はしてるだろう。だから、準備が整い次第明楽を救いに行く。尋問や拷問は許せない行為だ」


「そうだったの…」


「だが…一つ疑問が残っている」


クロは大きく息を吐いた。


「明楽が暴走したら、俺はどうなるのかわからない」


「だからさっき…」


ウルフの疑いが晴れた。


「とりあえずあいつらを捉え次第、地獄以上の事をする。いいな」


ウルフはニコッとした。


「それは、私のお仕事。任せてね」


「頼むぞ」


そう言うと、クロは窓を見た。


「明楽…待ってろ」


そう言うと、武器である手甲鉤を準備した。

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