第42話

早朝の校庭。


「工藤くん。準備はいいですか?」


「はい。準備できています」


工藤は小さいコンテナを抱えてた。


「よし。それを鞍に繋げたら出発するぞ」


工藤はレイにつけている鞍にコンテナを繋げ、跨った。谷川もレイに跨り、レイに指示を出した。


「とりあえず、最速で見つけろ」


レイは舌打ちしながらも、大空に向かって羽ばたいた。雲の中をしばらく飛びながら、レイは歪みの気配を探していた。


「工藤くん。しばらく時間かかりそうですな」


「そうですね」


レイは速度をあげた。強風を谷川と工藤は耐えていた。


「谷川先生。明楽はどのように捉えるんですか?」


「とりあえず無力化します。眠ってる間に拘束して連れていきます」


「なるほど」


「三日月さんの力を手に入れれば…」


すると、レイが唸った。


「見つけたのか」


谷川の声にレイは無言のまま、降下した。雲を抜け、とある島に目が入った。


「小島…ですか」


島の浜辺にレイは着地した。谷川と工藤はレイから降りた。


「レイ。どこら辺だ」


そう言うと、レイは島の中に向かった。木々が生い茂り、蒸し蒸ししていた。


「工藤くん。行きましょう」


レイの後を追った。しばらく歩くと、レイの足が止まった。


「…」


「ここか?」


目の前には木々がない空間だった。レイが睨むと、空気が変わった。


「…」


「なんだ…」


すると、何もない空間が少しづつ歪んだ。


「工藤くん。準備を急いで」


「はい」


コンテナから特殊な器具をだし、一つはレイの鞍にくくりつけ、一つは工藤が手に持った。


「紐だと足りないかもしれないので、これだと帰りに俺がいる方角へ飛ぶと光がでます。それと、コレは距離は関係ないので、はるか遠い宇宙でも通用できます」


「なるほど」


谷川はレイに跨った。


「工藤くん。待っててください」


「はい」


レイは空間の歪みの前に来た。


「行くぞ。レイ」


するとレイの目が血のように赤く光った。そして勢いよく歪みの中へ入った。






明楽はシャワーを終え、着替えた。


「ウルフさんに怒られちゃったな…」


少ししょんぼりしながらも、クロの部屋へ向かおうとした。


「っ…!」


ふと明楽の身体が硬直した。


「やめて…」


しかし身体が言うことを聞かない。


 見つけたぞ…


明楽は城の外へ歩き出した。明楽の目が血のように赤くなった。




「コレでいいだろ。あとは頼んだ」


「ありがとうございます」


クロの部屋から兵士が出ていった。


「明楽…遅いな」


心配していると、雷が鳴った。


「!?」


クロが警戒すると、外にいた兵士が大声で叫んだ。


「侵入者がこちらにものすごい勢いで来ています!」


その声で兵士たちは戦闘体制に入った。すると、ウルフが部屋に入って来た。


「クロ!明楽ちゃんがいないの!」


クロは外を見ると、門の前に明楽の姿があった。


「しまった…!」


勢いよく部屋の窓に突撃し、外に出た。ガラスがクロの頬をかすった。魔法で空中を駆け抜け、明楽の元へ走った。


「明楽!」


黒い物体が門の目の前に来ていた。すると、何かの断末魔のような声が城全体に響いた。


「なんだ…?」


心が悲しみに包まれそうな感触になった。


「三日月さんを確保する!」


そう叫び声が聞こえると、明楽の身体に鎖が巻き付いた。明楽は無抵抗だった。


「待て!」


クロはワイヤーを取り出し、明楽に向けてワイヤーを投げたが、黒い物体が翼で暴風を起こした。


「チッ…」


ワイヤーは明楽に届かず、クロは無抵抗のまま飛ばされ壁に激突した。明楽はそのまま黒い物体に確保されてしまった。


「レイ…行くぞ」


レイは来た方向へ飛び出した。


「…はっ!クロ!」


明楽は気がついたが遅かった。


「お前は眠ってろ」


レイのドスの聞いた声で、また明楽は眠った。




「クロ!」


ウルフがクロに駆け寄った。


「クソ…」


なんとか立ち上がった。


「兵士の状況確認を至急してくれ。それが終わり次第、皆を大広間へ集めてくれ」


「わかったわ」


「一刻も早く明楽を助けに行くぞ」


「そうだね」


ウルフは兵士たちに指示を出し、動いた。


「こんな一瞬でやられるとはな…」


クロは驚きつつも、冷静に考えた。

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