第40話

クロは一人、稽古をした。


「…!」


丸太を手甲鉤で粉々に切り裂いた。複数の丸太がクロに向かって飛んできた。それを全て粉々に切り裂いた。


「ふぅ。だが、まだまだだな…」


クロは汗を拭った。外を見ると、夕陽が沈みかけていた。


「もう夕方か。早いな」


手甲鉤をおさめ、稽古場を後にした。部屋に戻り、すぐにシャワーを浴びた。


「ふぅ…」


タオルで体を拭き、着替えた。


「あぁ…今日は明楽いないのか」


寂しく呟き、キッチンへ向かった。


「久しぶりにお菓子でも作るかな」


しばらくすると、クロの部屋が甘い匂いで漂った。


「明楽喜ぶだろうな…」


出来たものを冷蔵庫に入れた。


「さて、軽く夕飯でも作るか」


手際よく作り、一人机で食べた。


「うん。まずまず…」


本を読みながら食べていった。


「明楽は普通の三日月龍じゃないからな…でも、龍が人間で例えると、ああなるのか。来年以降も明楽と一緒にいることが出来たら、来年もああなるのか…フッ」


鼻で笑ってしまった。


「明楽。可愛いからな…」


食器を片付け、ベットに横になった。


「久しぶりに一人か…」


メガネを外し、考え事をしていた。


「この先…どうなるんだろうな…」


考えていくうちに、クロは眠った。




気がつくと、もう朝になっていた。


「もう朝か…」


メガネをかけ、ベットから出た。キッチンに向かい、お茶を沸かした。すると、ノックが聞こえた。


「…だれだ?」


扉が開くと、真っ青な顔でいかにも体調が悪そうな明楽が現れた。


「あ…明楽!?大丈夫か!?」


明楽に駆け寄った。


「クロ…トイレ…」


気持ち悪そうに口に手を当てた。


「わかった。すぐ行け」


明楽はトイレへ駆け込んだ。


「クロ〜」


その後でウルフが部屋に入って来た。


「お前な。何やったんだよ」


「エヘヘ」


ウルフはテヘペロしていた。


「明楽のこの後は俺がするよ。多分…この調子だと発情終わってるだろう…」


「じゃーよろしく」


ウルフは部屋を出た。トイレで明楽は思いっきり吐いていた。クロは背中をさするしか出来なかった。


「明楽…大丈夫か…?」


「む…り…」


「でしょうね…」


しばらくすると、明楽は落ち着いた。マグカップにお茶を入れ、明楽に渡した。


「落ち着いたか?」


明楽は一口お茶を飲んだ。


「うん…少しだけよくなった」


「今日は稽古は無しにするよ。ゆっくり休みな」


「うん…ごめんね…」


「気にするな」


明楽はベットに入り、横になった。


「また気分が悪くなったら言ってくれ。俺はこの部屋にいるから」


「うん…」


マグカップにお茶を入れ、椅子に座った。机の上に置かれた書類を片付けた。


「はぁ…多いな…」


頭を抱えながら、クロは書類に目を通した。




「う…ん…」


目が覚めると、もう夕方になっていた。


「起きたか。気分はどうだ?」


「だいぶ楽になった…」


「よかった。何か食べるか?」


「今はいらない」


クロは明楽の横に座った。


「で…何されたんだ?」


明楽は恥ずかしそうに答えた。


「え…その…うーん。ウルフさんより…クロの方が…」


「…ん?」


「その…丁寧って言えばいいのか。大事にしてくれる言えばいいのか。ウルフさん…激しすぎて…」


「あ…あぁ…もう言わなくていいよ。俺もあいつにやられたから」


「え!?」


明楽は驚いた。


「昔だよ。昔。あいつ昔から激しいの好きでな。俺も吐いてた」


「クロとウルフさんの関係って…」


明楽はドン引きしていた。


「関係って言われても、ウルフは俺の補佐役だ。それ以上の関係はない。ただ、あの時は俺が悪かったんだ。ウルフにめちゃくちゃ迷惑をかけてしまったから。で、許す条件でってなやつ…今思ったら、とんでも無いことしてたんだな…」


後悔が襲って来た。


「俺…やばいな…」


「でもさ、なんで私をウルフさんに預けたの?」


明楽は疑問だった。


「そりゃ。男は目の毒だと思ったし。女同士だったらいいかなって。でも、やっていいよは言ってないぞ。あいつの独断だ」


「そ…そう…」


「でも、明楽が嫌な思いしてしまったなら、また考えるよ」


「うん…お願い…」


クロはふと疑問に思った。


「で…今の気分は?」


「全くそういう気が起きません。むしろ…調子が悪いよ…」


「ですよね…」


明楽の背中を撫でた。


「寝るか?」


「うん…今日は寝込む日だわ」


「わかった。ゆっくり休んで。俺はここにいるから」


「うん」


明楽に布団をかけてあげた。


「おやすみ」


「クロ。おやすみ」


明楽は眠った。

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