第39話

夢を見た。


「離せ…」


クロは二人の男に捕まって身動きが取れなかった。すると、背後から剣を構えている工藤がいた。


「今まで調子乗った罰だ。苦痛を味わえ!」


背中を斬られたところで、悲鳴と共に飛び起きた。呼吸も荒く、汗もひどい。窓をみると、まだ夜中だった。


「はぁ…はぁ…クッ!」


すると、横で寝ていた明楽が目を覚ました。


「クロ…?大丈夫?」


メガネをかけ、明楽を見た。


「あぁ…起こしてごめん。大丈夫だ。ちょっと悪い夢見たんだ」


クロはベットから出た。


「汗かいたから、シャワー浴びて来る」


タオルを持ち、シャワーへ向かった。服を脱ぐと、鏡に映った背中の傷跡が目に入った。


「たまに見るフラッシュバックがどうも克服できないな。俺…弱いな」


汗を流し、新しい服に着替えた。シャワーで目が覚めてしまい、寝る気も起きない。ベットに向かうと、明楽の寝顔を見て安心した。


「よく寝ているな」


本を取り出し、椅子に座った。


「さて…」


すると、一羽のカラスが外から窓を突いていた。それに気づき、窓を開けてカラスを入れてあげた。カラスはクロの肩に止まると、耳元でクチバシを動かした。


「…そうか。危険な所でよく見ていた。無理はしないでくれ。犠牲は出したくない」


机の引き出しから、オヤツを取り出しカラスに与えた。カラスはオヤツをクチバシで持ち、何処かへ飛んでいった。


「あいつ…落ちる所まで落ちたな。薬中とは。笑える」


月を眺めた。


「今夜は欠けているな。目が覚めてしまったし、本でも読むか…」


椅子に座り、机に置いてあるたくさんの本の棚から一冊を取り出した。


「三日月龍について、もう一度勉強しようか…」


表紙には、『月光のカナリア 三日月龍』と書かれていた。




朝。明楽がなかなか起きない事に、クロは不審を持った。


「明楽。大丈夫か?」


顔を見ると、真っ赤になっていた。


「どうした!」


すると、明楽が目を覚ました。


「クロ…おはよう…」


「おはようだが。熱でもあるのか?」


明楽の額に手を置いた。


「すごい熱…」


「クロ…朝からどう?」


一瞬何言っているのかわからなかった。


「朝から稽古か?別にいいが…」


「違うわよ…」


明楽が服を脱ごうとした。それに驚き、クロは阻止した。


「待て待て待て!明楽らしくないぞ!」


すると、ウルフが部屋に入って来た。


「おはよ〜。朝からなにイチャイチャして…」


「ウルフ!明楽がおかしくなったんだ!」


ウルフも明楽の様子を見た。


「ウルフさん。おはようございます。今からクロと…」


「やるわけないだろ!どうしたんだよ…」


その光景に、ふとウルフは思いついた。


「クロ…これ…もしかして。アレじゃない?」


「アレとは?」


「明楽ちゃん。龍じゃん?」


一瞬静寂が走った。


「あ…そうだった。てことは」


クロは夜中に読んでいた本を開いた。


「あぁ…これか」


そこにはこう書かれていた。


『三日月龍は大人になると、一年に一度発情をする。発情した雌は雄に積極的にアタックする所を複数目撃した。しかし、発情の時間は一日だけだった。一定の季節を選ばず、ランダムで発情がある』


「つまり…発情期?」


「みたいだね。男に積極的にアタックって書いてあるわね。ヤったら?」


クロの顔が赤くなった。


「やらないよ!それに、緊迫した状況だし仮にあいつらが来たらまずいだろ」


「確かに。でも、今日の明楽ちゃんには男は毒ね」


ウルフが明楽に声をかけた。


「明楽ちゃん。クロが今日は私が明楽ちゃんの稽古をつけて欲しいって言うから、一緒に行こ?頑張ったら、クロがご褒美くれるって」


「本当!」


明楽の目が輝いていた。


「うわぁ…まずいね。クロ。今日は明楽ちゃん預かるわね。稽古でヘトヘトにさせて寝させるわ」


「あぁ…頼む」


ウルフは明楽を連れて、クロの部屋を出た。


「やれやれ。あんなふうになるのか。まぁ、いい勉強になったな」


クロはまた本を読んだ。






「明楽ちゃん!動き鈍い!」


ウルフは厳しく明楽を動かした。


「ぐぅっ!」


ウルフの鞭捌きをなかなか避けられなかった。次第に明楽の腕や足にみみず腫れが増えていった。


「耐えてても意味ないよ!攻撃して来な!」


ウルフの声に反応し、明楽は飛び込んだがなかなか前に進めない。


「どうしたら…」


しかし、反撃できないまま明楽の体力がなくなり、地面に座ってしまった。


「今日はここまでね。明楽ちゃん。ボロボロ!」


ウルフは明楽に手を貸した。


「なぜか…今日は動けない…」


「無理しないでね。とりあえず、汗流そ?」


「うん…」


「気にしなくていいわよ」


ウルフは明楽と一緒にシャワーを浴びた。


「気持ちいい…」


長い髪を洗い、体も綺麗に洗った。


「明楽ちゃん。シャワー終わったら、私の部屋来てくれる?」


「え?クロは?」


「クロ。今日用事あるんだって。夜になったら帰るって」


「そう…」


「それまで、私が相手するから。とりあえず、待ってるよ」


体を拭き、着替えた。ウルフの部屋へ行くと、ウルフは色んな下着をベットに並べていた。どれも派手だった。


「いらっしゃい。待ってたわ」


「ウルフさん…?コレは…」


すかさずウルフは部屋の鍵を閉めた。


「え…」


「明楽ちゃん。今日は返さないわよ」


明楽をベットへ座らせた。


「な…何…するんですか…?」


「好きなの選んでいいわよ」


ウルフはニヤニヤしていた。


「え…着たことないのばかり…コレなんですか?」


そう言うと、紐系のを指で摘んでいた。


「可愛いでしょ。じゃーそれでね」


「えっ!?」


そう言うと、ウルフは一瞬で明楽の服を脱がせ、派手な下着を身につけさせた。


「似合うわよ!明楽ちゃん、色白だから似合うわー」


明楽の顔が真っ赤だった。


「は…恥ずかしいですよ…」


「そう?明楽ちゃんは、もう大人じゃん。こう言う大人の階段登らないと」


そう言うと、明楽をベットに寝かせた。


「ウルフさん!?」


「言ったでしょ。今日は返さないって」


ウルフも服を脱ぎ出し、派手な下着姿になった。


「明楽ちゃん。今日は私が相手するわよ。いつもクロばかりでずるい!」


ウルフは明楽の体を触った。


「ちょっ…ウルフさん…!」


「いい身体だね。羨ましいわ…」


ウルフはその日、明楽で楽しんだが。廊下から悲鳴が響いたことを誰も聞いていなかった。

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