第38話

翌朝。クロはいつものように起きた。メガネをかけ、明楽を見ると明楽も目を覚ました。


「おはよう。クロ」


「おはよう。眠れたか?」


「うん」


明楽は目を擦っていた。


「朝食作ってくるよ」


クロは明楽の頭を撫でた。


「朝食、私も手伝うよ」


「ありがとう。じゃぁ、二人で作ろうか」


ベットから出て、キッチンへ向かった。


「今日は白米にしよう」


「じゃぁ、私は味噌汁作るわ」


手分けして淡々と作り、テーブルにならべた。席についた。


「いただきます」


「いただきます」


朝食を食べた。


「明楽。昨日の事話すの忘れてた」


「昨日の事?」


「あぁ…」


クロは味噌汁を一口飲んだ。


「昨日、俺が出かけてた理由だが…実はカラスからお呼び出しだったんだ」


「うん」


「各地で街が荒れ砂漠化や自然消滅が多発しているらしい」


クロの口調が重かった。


「俺が昨日行った場所は、元は人と龍が共に生活しているとこでさ。一度、叔父さんに連れてってもらった事がある。龍は野生だが、人々の生活に必要な存在で龍も人間を大事に扱う所だったんだ」


「うん…」


「そこが、何もない砂漠地になっていた。建物もない。人どころか生物もいない」


「え…」


明楽は驚いた。


「龍が居ないだけでそんなに変わるの?」


「俺も驚いたんだ。だが、実際に各地で起きている。それを、一羽のカラスが見ていたんだ」


「え?一羽?」


「叔父さんのカラスだ。しかし、俺に伝えた後亡くなった。あの戦争の後、叔父さんの多くのカラスが叔父さんの死を受け入れられず、自死していったんだ。その中の一羽だけ現状を俺に伝えてくれた」


「そうだったの…」


クロはお茶を飲んだ。


「あいつらがこれに気づいてくれたらいいんだがな」


「そうだよね。でも、気づいたところで遅いんじゃ?」


「まぁな。叔父さんが隠し玉でも用意していてくれたら話が違うが。叔父さん。俺の知らないところで色々しているからな。この前の研究者のライダーも俺全然知らなかったし」


クロは食器を片付けた。


「確かに…私もびっくりしたよ」


明楽も食器を片付けた。


「さて、今日も頑張ろうか。久しぶりに、ルナに乗るか?」


「いいの?」


「もちろんだ」


食器を洗い、ルナの所へ向かった。相変わらずの漆黒の馬体が美しい。


「今日は頼んだぞ?」


馬装を整え、クロと明楽はブーツを履いた。明楽だけヘルメットを被り、ルナに跨った。


「とりあえず、お互いにウォーミングアップしようか」


ウォーミングアップした後に、クロの指導が入る。


「今日は障害を飛ぶぞ。低いから大丈夫だ」


明楽はルナを障害のある所へ誘導し、飛越した。


「飛ぶ時に手綱引っ張りすぎたらきついぞ」


指導の元、何度も障害を飛越し、動きも慣れてきた。


「今日はここまでだな」


ルナを愛撫し、鞍の腹帯を緩めた。


「姿勢はだいぶ良くなってきた。その調子だ。今度は少し高い障害を飛ぼうか」


「はい」


ルナから下馬した。馬装を外し、ルナを洗った。


「ルナって、可愛いよね」


「だろ。見た目は怖そうだが、めちゃくちゃ甘えん坊なんだ」


水を切りタオルで拭き、馬房へ戻した。


「そういえばクロ」


「なんだ?」


「この城の馬って、何頭ほどいるの?」


明楽が疑問に思っていた。


「あぁ。大体二十程かな。馬も怪我や戦争で命を落とした馬達だ」


「そうなんだ」


クロはバケツに入った飼い葉をルナに食べさせた。


「さ、俺たちも休憩しよう」


「そうだね」


二人は部屋に戻った。






「では、改めて作戦を立てようではないか」


「そうですね」


夜の校長室。谷川と工藤が作戦を立てていた。


「工藤くんはこの世で待機していてください。私とレイが行きます。しかし、数分が限度の歪み。おまけにどこに飛ばされるかも不明。そこで、命綱をつけていこうと思います」


「なるほど。俺は、この世で命綱の見張りをしていればいいんですね」


「ただ、本物の紐をつけていても、どこまで移動するか不明なので、光の紐を用意します。これならばどのくらい移動しても尽きることもないし、紐自体切れることもない」


「なるほど」


そんな中、レイが目を覚ました。二人がうるさく感じ、外へ出た。


「鬱陶しい…」


何処か疲れていた。最近の長距離飛行だろうか。


「はぁ…」


レイは月を見た。今日は欠けてた月だった。


「明楽…もうすぐ会えるのか。どうなってるんだろう」


夜風を浴び、少し気分も良くなった。すると、谷川がレイを呼んだ。


「レイ。帰るぞ」


「あぁ…」


校庭に出ると、レイは大きくなり谷川を背に乗せ飛び立った。


「日程が決まった。来週だ」


「…そうか」


「頼むぞ」


「…」


レイは家へ目指し飛んだ。




「ふぅ。終わった」


工藤は車に乗り、またトレーニングセンターへ向かった。現地につき、車の中で注射を一本打腕に打った。


「キク…」


トレーニングセンターに入り、ウォーミングアップをした。


「よし…」


すると、店員らしき男が工藤に声をかけた。


「お客様。当店は薬物の使用禁止です。退出願います」


「なぜわかった」


すると、店員の肩に橙色の龍が乗っていた。


「ほう…ライダーか」


「それがなんでしょう。私は普通に営業しています。薬物の影響で他のお客様にご迷惑をかけることがあるので、退出願います」


工藤は舌打ちしながらトレーニングセンターを出た。


「まぁ、いいや。俺はコレであいつを殺せれる」


薬を確認し、車を発進させた。しばらく走ると、自宅へ着いた。鍵を開け、部屋へ入った。


「ふぅ…」


ベットへダイブした。


「最近しんどいよな…でも、あいつを殺して、三日月を連れてこればいいだけだ。あ、シャワー浴びてない…」


工藤は急いでシャワーを浴び、ベットに横になった。

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