第36話

朝日が明楽を照らした。


「明楽。おはよう」


朝食の準備をしていたクロが目に入った。


「おはよう…」


ゆっくりと起き上がった。


「足の傷はどうだ?」


明楽は足の傷を見た。


「もう、治ってるよ」


「早いな。さ、食べよう」


甘い香りが漂っていた。


「今日はフレンチトーストだよ」


メープルシロップがたっぷりかかっていた。


「おいしそー」


明楽はフォークとナイフで食べた。


「うま…」


「よかった」


クロは温かいお茶を飲んだ。


「明楽」


「何?」


「今日はウルフに稽古をお願いするよ。俺はちょっと調べたいことができたから」


クロもフレンチトーストを食べた。


「わかった」


朝食が終わると、ちょうどウルフが部屋に入ってきた。


「おはよ〜」


「おはようございます。ウルフさん」


ウルフは椅子に座った。


「ウルフ。明楽の稽古を頼む」


「了解」


食器を片付け、明楽は稽古の準備をした。


「怪我しない程度にな」


「うん。クロも用事終わらせてね」


明楽は稽古場へ歩いた。


「さて…行くか」


クロは指を鳴らすと、その場から消えた。




「ふぅ…」


クロはとある砂漠に着いた。少し風があるのか、砂が舞っていた。


「ここは…?」


すると、クロに目掛けてさっきのカラスが飛んできた。クロは手を出すと、カラスはその手に止まった。


「叔父さんのカラスは本当に優秀だな」


クロはカラスを撫でた。カラスはクロの耳元でクチバシを動かした。


「…なるほど。そうだったのか」


クロは辺りを見渡した。


「ここで、龍と共存して豊かになってた所だとは思えない…」


辺り一面砂漠。建物や木など一切ない。生物も見かけなかった。クロは歩いた。


「どの辺りに家があった?」


カラスに問うと、カラスはクロの耳元でクチバシを動かした。


「わかった」


数十分歩き、カラスが教えた場所のついた。だが、一面砂漠。ふと、足に何かが当たった。クロはその場でしゃがみ、砂を払った。


「これは…」


そこにはお店だろうか。看板があった。


「龍が居なくなると、こうも世界が変わるのか」


すると、カラスはまたクロの耳元でクチバシを動かした。


「まだあるのか。各地でこんなに荒れてしまうとは。いかに龍が大事な存在かわかるな」


すると、カラスはクロの肩から落ちていった。


「おい!」


カラスを抱き抱えた。よく見ると、カラスの毛艶が悪くボロボロだった。


「そっか。叔父さんが亡くなってもう時間が経ってるもんな。こんなボロボロになるまで見守っててくれてありがとう」


すると、カラスは最後の力を振り絞ってクロに伝えた。


 ライトさんとクロさんに出会えてよかった…


すると、カラスは風と共に砂となって消えていった。


「ありがとう…」


クロはカラスを見送った。






「ウルフさんの鞭!難しい!」


「そうでしょ!」


ウルフの振るう鞭を明楽はなんとか避けていったが、攻撃ができない。


「隙あり!」


ウルフの攻撃を明楽は刀で受け止めた。稽古場に鞭の音が響いた。


「チィッ!」


「いいね…」


ウルフは明楽に目掛けて鞭を振るった。


「絶対に当たったら引き裂かれるやつ!」


明楽の顔目掛けて飛んできた。


「よく見て…」


そう自分に言い聞かせた。すると鞭を持っていない手から、何かを持とうとしている仕草を見つけた。


「させるか!」


紙一重で鞭を交わし、ウルフに近づいた。ウルフは鞭の持っていない手から粉を一握り持った。


「今夜は明楽ちゃんと一晩過ごすわ!」


粉を明楽に目掛けて投げた。そして鞭を振るうことで粉が舞った。


「トラップね…」


明楽は綺麗に舞った粉を避け、ウルフの前に来た。


「あら。やるじゃん」


明楽は刀をウルフに目掛けて突いた。


「いっけ!」


しかし、ウルフも鞭で明楽の刀を受け止めた。


「私の鞭を舐めてもらっては困るわ!」


激しい女のバトル。すると、クロが現れた。


「お前達。いつまでしてるんだ」


その声に明楽とウルフはクロの方を向いた。


「帰ってきたぞ。それに、もう夕方だぞ。飯にするぞ」


明楽とウルフは戦闘状態を解いた。


「はーい」


「私もお腹すいた。クロ何か作って」


二人は汗だくだった。


「わかったから。さっさと汗ながして来い」


クロは夕飯の支度をした。その間、明楽とウルフはシャワーを浴びた。


「だいぶ勘が鋭くなったわね」


「ありがとうございます」


髪を綺麗に洗い、体も洗った。


「気持ちいい…」


ふと明楽はウルフを見た。


「ウルフさんって、胸大きい…」


「いいでしょ!鳩胸と言いなさい。でも、明楽ちゃんも大きいわよ?」


「いや。ウルフさんより小さいですよ」


「まぁ、いずれ大きくなるわよ」


タオルで体を拭き、いつもの着物に着替えた。クロの部屋に入ると、夕食の準備が整っていた。


「ちょうどできた所だ。今日はクリームシチューだぞ」


明楽とウルフは席に着いた。


「冷めないうちに食べよう」


「いただきます」


明楽はスプーンで一口飲んだ。


「美味しい。優しい味だな…」


「よかった」


ウルフも一口飲んだ。


「稽古上がりのご飯は最高!」


そのまま三人は食事を楽しんだ。

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