第35話

「足を見せてみろ」


明楽を椅子に座らせた。


「私も、まだまだですね…」


「明楽は成長段階だ。普通の事。本当の戦闘になる前に万全の状態で戦えればそれでいい。大丈夫だ」


傷口を綺麗に消毒した。


「このままお風呂に入ろう。風呂でも綺麗に洗って手当てする」


「うん」


明楽を支え、服を脱ぎ、湯船に浸かった。


「痛い…しみる…」


「我慢だ」


「でも、いい汗かいたから気持ちいい…」


明楽はホッとしていた。


「クロ」


「なんだ?」


「ワイヤーの避け方がいまいちわかんないです…」


「あぁ…」


クロはどう答えていいのか悩んだ。


「うーん…」


「まさか…」


「頑張れ!」


クロは開き直った。


「あ…はい…」


「ただ、一つ言えるのは、相手の体の動きに注目することだな」


明楽は不思議がった。


「どう言うこと?」


「構え方、動き、なんでもだ。ワイヤーの軌道の予測もあればいいが、戦闘で瞬時にそれは難しい。ましてや、ワイヤーに魔法をかけていたら、一本のワイヤーが蜘蛛の巣のように広がることもできる」


「まじ!?」


「俺はワイヤーに魔法をかけ複数に見せつつ、相手がワイヤーに集中してる隙に色々攻撃するんだ」


クロはどこか悪魔の顔になっていた。


「クロって頭いいよね…」


「これは経験しかない」


クロは湯船から上がり、頭と身体を洗った。


「明楽。洗ってあげようか?」


「え…じゃぁ…」


明楽の頭を洗い、身体も洗った。


「スッキリ。ありがとう」


「どういたしまして」


明楽とクロは身体を拭き、着替えた。


「今日は疲れた」


「そうだな。今日はもう休もう」


明楽はベットに入った。クロも横に入った。


「おやすみ。明楽」


「おやすみ。クロ」


二人は眠った。




クロは夢を見た。小学の時だろうか。ライトの城の図書室。勉強の疲れか、机で寝ていた。


「クロ。起きなさい」


メガネをかけると、ライトがいた。


「叔父さん…」


「がんばりすぎじゃ」


クロの横に温かいミルクが入ったマグカップを置き、椅子に座った。


「俺、まだまだですよ。小学校でも全然です」


クロはミルクを飲んだ。


「そうか?君は賢い」


ライトはマグカップに入ったお茶を飲んだ。


「そうだ。クロ」


「どうしたの?」


「クロは龍が好きだろ?」


「うん!大好き!かっこいいし、いつかライダーになりたい!」


クロの目は輝いていた。


「それに、明楽ちゃんやナイトくんが大きくなったらお友達なりたい。なって、ナイトくんに明楽ちゃんと一緒に空を飛びたいな」


「いい夢だな。そんな未来が早く来てほしいな」


ライトは顔を曇らせた。


「どうしたの?」


クロはライトの顔を覗いた。


「実はな。龍が減ってきておるんだ。全種族で…」


「そんな!」


「それでな、まだ調べてはないが、もしこの星に龍が居なくなるとどうなるんだろうと私は疑問に思うんだ。何が起きるのか…」


「俺は、龍が居なくなるのは嫌!絶対に助ける!」


ライトはクロの頭を撫でた。


「そうだよな。一匹でも多く龍を守ろうな。クロも大きくなったら、一緒に龍を守っていこうな」


「うん!」


ライトは笑顔でクロを見つめた。




クロは目を覚ました。


「叔父さん…」


外はまだ薄暗い。横で明楽が寝息を立てていた。


「そうか。俺、ガキの頃…明楽ちゃんって言ってたんだな」


明楽の頭を撫でた。


「叔父さん…」


すると、窓を突く音がした。クロはベットから出て、窓を開けた。すると、一羽のカラスがクロの肩に止まった。


「君は…あまり見かけないな。わざわざありがとう」


クロの耳元でカラスはクチバシを動かした。


「…なんだと。そんなことが。どうして俺に?」


カラスはまた耳元でクチバシを動かした。


「そうだったのか。他のカラスが教えてくれたんだな。ずっと見張っててくれてありがとう」


クロは机の引き出しから、カラスのおやつを取り出した。


「後でそこに行く。また合流しよう」


カラスはおやつを咥え飛び立った。クロはカラスを見送った。

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