第34話
「クロ」
クロは明楽の勉学に付き合っていた。
「どうした?」
「もしさ、龍がこの世から全滅したらどうなるの?龍の私が言うのもあれだが…」
クロは少し悲しい表情をした。
「龍は環境を作っていると、叔父さんが言っていた。俺は詳しくはわからない。そこまで勉強していない。ただ、ある集落にいた龍の一族が全滅したことで集落も無くなったと聞いたことはある」
「え…」
「叔父さんはそう言うのを調査していたと思ってたが、基本は龍の保護活動に熱心だったから、そう言うのは聞いたことないかな。それに、あの戦争の後、俺は地上に出ていない。ずっと稽古に打ち込んでいた。カラス達から情報収集はしていたんだが、環境とかは頼んではいない」
「そうなんだ…」
「だが、今思えば調べる必要はありそうだな」
立ち上がり、部屋を出た。明楽もその後を追った。カラス達の小屋へ行くと、扉を開けた。
「みんな元気だな」
数十羽いるカラス達がクロを見つめた。
「お願いがある。龍が絶滅した地域を見てきてほしい。小さな情報でも構わない」
そう言うと、カラス達は一斉に飛び立った。
「賢いだろ?」
「でも、どうやって地上に?」
「カラスは自分で道を作っている。いわゆる獣道のようなもんだ。さ、部屋に戻ろう」
部屋に戻り、椅子に座った。
「龍って、もう少ないんですよね?」
「あぁ。今把握してるだけで二桁の種族が全滅していると言われている。あの戦争の後、一気に追いやったそうだ。多分、何かしらの影響があるとは思う。とは言っても、俺も調べてないから勉強不足だ。ごめん。あ、もうこんな時間か」
見ると、外は暗くなっていた。
「お腹すいたね」
「夕飯作るか。明楽。手伝ってくれるか?」
「うん!」
二人はキッチンに向かった。
「今日は寒いから、鍋でもするか」
「いいね」
支度をしていると、ウルフが入ってきた。
「お疲れ〜。お腹すいたから来た〜」
「ウルフさん。今日は鍋ですよ」
「いいね。待ってるわ」
しばらくすると、鍋が出来上がった。
「熱いうちに食べるぞ」
三人で鍋を突いた。
「美味しい」
「寒い日には鍋サイコー」
クロは黙々と食べていた。
「クロ。〆はある?」
「あるよ。うどんだ」
「いいね」
「とりあえず、具を減らせ。でないと入れないぞ」
ある程度具が減ると、クロはうどんを入れた。
「これがうまいんだよな」
少し煮込み、うどんをとった。
「なんで〆のうどんと、普通のうどんって味違うのかな」
ウルフは疑問に思った。
「さぁ。でも美味しいからいいんじゃないですか?」
「それもそうね」
あっという間に平らげた。
「ご馳走様。ありがとうね。食器は私が片付けるから、二人はゆっくりしてて」
ウルフは食器を片付けていた。
「クロ」
「なんだ?」
「食後の運動がしたい」
「ほう。いいだろ。なら、稽古場へいくか」
「ウルフさん。稽古場へ行ってきます」
明楽は準備をした。
「お。いってらっしゃい。二人とも。怪我しないでよ」
明楽とクロは稽古場へ向かった。
「さて。どうする?竹刀?ナイフ?それとも、お互いの武器で?」
クロはもう手甲鉤に手を入れていた。
「じぁ、私も」
明楽も刀に手を添えていた。一瞬静寂が走ると、お互い同時にスタートを切った。激しいぶつかり合いに火花が飛んだ。
「ほう…」
「…!」
明楽は手甲鉤を刀で払いのけ、突きに出た。クロはバックステップでそれを避けた。
「いいじゃん」
クロの左手からワイヤーが放たれた。明楽は避けたつもりが、右足に絡みついた。
「しまっ!」
ワイヤーを引っ張ると、明楽はバランスを崩し倒れた。
「うぐっ!」
その隙を狙ってクロは明楽に襲いかかったが、なんとか刀で受け止めた。
「ワイヤーとか、卑怯…」
「たまにワイヤーを使わないと、忘れるんだ」
明楽はクロを跳ね除けた。クロは少し飛ばされたが、綺麗に着地した。その隙に明楽はワイヤーを切断した。
「うっ…」
しかしワイヤーが深く食い込んでいたのか、血が多く流れた。明楽はクロに飛びかかろうと右足で蹴ったが、痛みでうまく蹴れずに倒れてしまった。
「ぐ…」
「今日はここまでだ」
クロは手甲鉤を納め、明楽の足を見た。
「ワイヤーが奥に入ってるな。ただ、筋肉で止まってるから骨と腱は大丈夫だ」
綺麗にワイヤーを取り除き、止血をした。
「すまんな。やりすぎた」
「いや。でも、本当に戦闘になると私死ぬ」
明楽を立たせた。
「歩けるか?背負うぞ」
明楽はクロの背中に乗った。
「少し痛い…」
「ワイヤーはコツがある。明日教えるから、今日は治療して休もう」
クロは明楽を背負って部屋へ向かった。
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