第33話

クロは着替えとタオルを準備した。ふと鏡に映った背中の傷痕が目に入った。


「はぁ…嫌だな。これ以上増やしたくない」


そうこうしているうちに、浴槽がいっぱいになった。


「明楽。風呂入るぞ」


「はーい」


服を脱ぎ、クロと明楽は浴槽に浸かった。


「あったかい…」


稽古の疲れを癒した。


「怪我とかないか?」


「大丈夫。切り傷は平気だし。クロは大丈夫?」


「俺は大丈夫だ。明楽。強くなったな」


「そんな事ないよ。私は、まだまだですよ」


しばらく湯船を堪能し、明楽は頭を洗った。


「前から思ってたが…」


クロが明楽に問いた。


「なに?」


「なんで明楽は髪が長いんだ?切るって発想はなかったのか?」


明楽は少し考えた。


「うーん。考えた事なかったですね。切った方がいい?」


「いや。むしろ、その方が素敵だ。明楽に似合うぞ」


髪を流し、綺麗にタオルで束ねた。浴槽に浸かると、クロが入れ替わりで頭を洗った。


「ふぅ…いい汗かいたな」


髪を掻き上げる姿がどこか爽やかだった。浴槽からでて、体をタオルで拭いた。


「気持ちかった〜」


「よかったな」


服に着替え、明楽はベットへダイブした。


「ボフッ!」


「明楽。髪といでやるよ」


枕で遊んでいた明楽を座らせ、髪をといだ。


「明楽の髪は綺麗で好きだ」


クロは明楽の髪を縛らなかった。


「たまにはいいだろ?」


「でも、寝る時下ろしてるよ?にしても」


明楽はベットに横になった。


「ごめん。疲れた」


「だな」


クロもベットに横になった。


「昼寝するか」


「うん」


明楽はだいぶ疲れていたのか、すぐに眠った。


「よくここまで来たな」


そう呟くとクロも眠った。




気がつくと、暗くなっていた。


「寝過ごしたか…」


メガネをかけ、体を起こした。椅子に座り、灯りをつけた。


「はぁ…本でも読むか…」


机をみると、書類が置かれていた。クロはそれを手にした。


「ほう…三十人が帰ったか。よかった」


名簿と天へ帰ったと書かれていた。


「一人でも多く、帰れるといいな」


すると、明楽が起きた。


「クロ…?」


「どうした?起きたか」


「うん。お腹すいた…」


明楽は大きく伸びをした。


「何か作ろうか」


部屋の灯りをつけ、キッチンに立った。


「クロ」


明楽はクロの横に来た。


「どうした?」


「ありがとう」


明楽は笑顔で答えた。


「こちらこそありがとう」


明楽の頭を撫で、二人で夕食を作った。






あれから数日が経った。


「なかなか見つけれませんな…」


レイの背中に、谷川と工藤が乗っていた。砂漠地帯の上空を飛んでいた。


「暑いですね…」


ふとレイが着地し、翼をダランと下げた。


「どうした?」


「暑い…少し休ませてくれ…」


呼吸が荒かった。


「わかった。工藤くん。少し散策してみましょう。もうすぐ夜になります。気温が下がるから、レイも少しは良くなると思うんです。それまで、時間潰ししましょう」


辺りを見回すが、一面砂漠。


「わかりました」


二人は歩いた。木や草が一切生えていなかった。


「あつい…」


工藤は汗で服が濡れていた。


「おかしい…」


谷川は疑問に思った。


「どうしたんですか?」


「昔、ここに町があったが…」


辺りは砂漠。すると、夕日が沈みあたりが少しずつ暗くなった。


「レイのところに戻りましょう」


二人はレイの方に戻った。


「町が本当にあったんですか?こんな砂漠に」


「あぁ。オアシスもあった。なぜだ…」


あたりが暗くなり、気温も下がった。


「動けるか?」


「あぁ…」


レイは重々しく翼を広げた。レイに跨り、レイは飛び立った。


「砂漠の範囲が広がったな…」


すると、砂漠で何かが走っていた。


「なんだ?」


見ると人喰い狼だった。


「我々の匂いに感ついたんでしょう。でも、こちらは空を飛んで…」


すると、上空からこちらへ何かが飛んできた。


「谷川先生!」


見ると、大きなワシがレイに向かって急降下した。それも複数。


「レイ!」


レイは当たらないように避け、速度を上げた。


「工藤くん!しっかり掴まれ!」


レイは一気に加速し、ワシ達から遠ざけた。


「今のって…」


「とりあえず、安全地帯まで飛びましょう。町があるところで今日は休みましょう」


しばらく飛ぶと、砂漠を抜けた。山脈が繋がる地帯へ飛んでいた。ふと、町らしき灯りが目に入った。


「今日はここで休みましょう」


町外れに着地し、レイは小さくなり谷川の肩に乗った。町へ行くと、人気が少なかった。


「夜中なのか、人少ないですね」


宿を見つけ、受付を済ませ部屋に入った。レイは谷川から降り、窓際で休んだ。


「我々も休みましょう。今日は疲れた」


谷川はベットに座った。


「しかし、砂漠に人喰い狼といい、ワシといい。怖いですね」


「あぁ…昔より危険地帯だ」


工藤はベットに横になった。


「もう休みます。おやすみなさい」


「あぁ。おやすみ」


谷川もベットに横になった。

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