第28話

深夜。谷川の家で谷川と工藤がいた。


「資料に一通り目を通しましたが…」


「時間…かかりましたが、手がかりが少しありましたね」


工藤はソファーにもたれた。


「だが、実行が難しい…」


谷川はコーヒーを飲んだ。


「私が考えた案は二つ。一発勝負の強行突破…」


「…っ」


「もう一つは。誰かを犠牲にして、奴らの城に潜入する。信用を得たタイミングで強行突破する。その時に、そいつに明楽を誘導させる」


「だが、その信用を得るタイミングもわかんないですし、リスクありません?」


「そこなんだよな。強行突破でもいいが」


谷川は悩んでいた。


「本番一発勝負。灰色の世界に行っても、どこに到着するかも不明」


「ただ、灰色の世界へ行けば明楽の気配をレイが察知して向かうはずだ。そもそも龍は鼻が効くから、匂い等でわかると思うし、方向感覚もある」


「ただ、着いたところで奴らにバレると警戒体制に入りますし…」


工藤も悩んだ。


「レイに聞いてみますか…」


谷川は重い腰を上げ、窓を開いた。


「レイ!」


大声で叫ぶと、機嫌が悪そうに遠くの方でレイが顔を上げた。


「うるさい」


「レイ。もし、全速力で飛ぶとなれば、どのくらいのスピードがでる?」


「そもそも。お前らが魔法で瞬間移動すればいい話…」


「それも考えたが、明楽の気配自体を我々は感知できない」


レイは鼻で笑った。


「クソな人間どもめ…地球なら本気を出せば数時間で一周できる」


「なるほど。だそうだ。工藤くん」


谷川は工藤を見た。


「では…一発勝負にかけるとして、時空の歪みをどうするか」


「そこに焦点を置きましょう。見つけ次第行動です」


「…」


レイは無言だった。


「では今日は失礼します」


工藤が部屋を出た。


「風呂に入るとしますか」


谷川も部屋を出た。


「明楽…」


レイはポツリと呟き、また眠った。






「前より、姿勢が綺麗だよ」


明楽はルナに跨り、クロの指導を受けていた。


「だいぶコツを掴んできてるな」


「バランスを保つことが難しい。歩様が変わると、なんとかしがみついてる感じです。特に早足は…」


「あぁ…早足は難しいよ。動きが大きいからな」


明楽はルナを歩かせた。


「今日はここまでにしとくか」


明楽は愛撫し、ルナから降りた。


「明楽は乗られる側だが、乗る側もどうだ?」


「いや…龍と馬じゃ違いますよ…多分」


「まぁそうか」


馬装を外し、ルナを放牧させるとルナは砂浴びをして楽しそうだった。馬装を片付け、ブーツを脱いだ。


「疲れたか?」


「まだ大丈夫です」


「じゃぁ、少し勉強するか?」


「いいですね」


クロは明楽を連れて、部屋に入った。


「たまには別の科目をするか」


そういうと、馬の教科書を出した。


「これは…」


「最近ルナに乗ってるんだ。少しでも、馬の事知ってくれたらいいなーって」


教科書を開くと、骨格や歩き方。さらには病気や怪我のリスクなども書いてあった。クロは丁寧に明楽に教えていった。


「すごい…」


「だろ。普通科じゃやらない所だ。気分転換にいいだろ?」


あっという間に時間が過ぎていった。


「そろそろいい時間だな」


クロは立ち上がった。


「クロ?」


「どうした?」


「ありがとう」


明楽は笑顔で言った。


「どうしたんだよ。急に」


クロは明楽の頭を撫でた。


「なんとなく」


「可愛いな」


すると、ウルフが部屋に入ってきた。


「遊びに…って!ずるい!二人でイチャイチャ」


「いいじゃないか。別に。な?」


明楽はクロの問いに微笑んだ。

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