第27話
気がつくと、もう朝になっていた。メガネをかけると、明楽が居なかった。
「明楽?」
ベットから出ると、いい匂いが漂った。
「明楽ちゃん。上手!」
ウルフの声が聞こえてきた。キッチンに行くと、明楽が料理をしているところをウルフが見ていた。
「おはよう。お前達何やってるんだ?」
「おはよう」
「クロー。遅いー」
明楽は器用にフライパン返しをした。
「ウルフさんが、フレンチトースト食べたいって。たまたま早く起きてしまったので、作ってました。クロの分もあるから」
「ありがとう」
クロは棚を開け、メープルシロップを出した。
「フレンチトーストには、これだろ?」
「クロ。気がきくね」
人数分の皿をテーブルに並べ、明楽は皿にフレンチトーストを乗せた。
「うまそう」
フォークとナイフで食べた。
「うまい。甘すぎないのがいい」
「よかった」
「明楽ちゃん。上手!ありがとうね」
ウルフは嬉しそうに食べていた。
「どういたしまして」
明楽は嬉しそうに答えた。すると、窓の方からコンコンと音が聞こえた。
「おっ」
窓を見ると、カラスがいた。クロが窓を開けカラスを入れた。カラスはクロの耳元でクチバシを動かした。
「無事に戻ったんだな。よかった」
カラスにオヤツを与え、撫でた。
「無事に戻れたの?あの人たち」
「あぁ。そのようだ」
クロはカラスを外に放った。
「さて。朝食終わったら、俺が稽古に付き合うよ」
「わかった」
「ウルフは、兵士の相手してやれ。多分襲撃が来ると思う。強化を頼む。ただ、無理は禁物だ」
「りょうかーい」
ウルフは元気よく返事をした。
「ぐぅ…」
明楽はクロの動きを抑えていた。
「いいぞ」
クロの反撃もなんとか避けた。明楽もクロにめがけて刀で突きに行ったが、避けられた。
「悪くはない。もう少しスピードが出てたら刺されるところだったよ」
また明楽は攻撃を仕掛けた。
「まだまだ!」
火花が飛び散った。
「おぉ…」
そこから刀と手甲鉤のぶつかり合いが始まった。速さも加速していったが、お互い譲らなかった。
「やるじゃないか。だが、いつまで持つかな」
「負けない!」
明楽はさらに加速した。そのスピードにクロがついていけなかった。
「まじか…」
明楽に取られてしまった。クロは瞬時にバックステップした。
「成長したな」
「やっととれた…」
かなり集中していたのか、大量の汗をかいていた。明楽は汗を拭った。クロも汗を拭った。
「今日はここまでにしよう。汗を流して、風邪ひかないようにしよう」
「うん」
明楽は刀を納めた。クロも手甲鉤を納め、明楽と稽古場を後にした。
「明楽。強くなったな」
明楽がシャワーを浴びてる間、クロは浴槽に浸かっていた。
「まだまだですよ。お父さん…闇の帝王レイに敵わないし」
明楽は綺麗に髪を洗った。
「俺も未知数だ。それに、谷川と工藤もおる。複数の兵士や生徒を巻き込んで襲ってくることもあり得る。どうなるかわからない」
「うん…」
濡れた髪をまとめ、明楽も浴槽に入った。
「でも、俺は明楽を守る。仮に明楽が拐われても絶対に助け出す」
「クロは私を守ってくれるの知ってるもん。信じてる」
明楽は体が温まったのか、リラックスした。
「そういえば、クロ」
「なに?」
「もし、クロと…こういう仲じゃなかったら…クロは私の事どうしてた?」
クロは一瞬何を言ってるのかわからなかった。
「あ…あぁーそういう事」
「え…」
「俺はただ明楽を救いたいだけでしか思ってなかったから。明楽がこの戦いが落ち着いて、この世でいい人と巡り会って幸せになりたいと思ったらそうしてもいいし。また洞窟生活に戻りたい思えばそれでもいいと思ってた。そもそも、叔父さんの頼みもあるが、恋愛感情なかったよ」
曇ったメガネを洗った。
「そうなんだ…」
「さて、俺もシャワーを浴びるかな。先に上がっててもいいぞ?」
「うん。髪乾かさないとだから、先に上がるね」
クロがシャワーを浴びてる間、明楽は体を拭き髪を拭いた。しばらくすると、クロもシャワーを終え上がった。
「いい湯だったな」
メガネを拭き、体を拭いた。
「クロとお風呂一緒に入るの、リラックスして好きになるな」
「ほう…だったら、毎日一緒に入ってもいいぞ?」
お互いを見つめ笑った。ふとクロは窓を見た。
「おっと。もうこんな時間か」
「もう暗い!」
「早いな。最近稽古をすると、お昼を忘れるな」
クロは着替えた。
「髪…綺麗にといでいいか?」
「いいよ。好きだね」
明楽を座らせ、クロは綺麗に髪をといだ。
「綺麗だ」
「ありがとう」
明楽の髪を緩く下で結んだ。
「さて、夕飯作るぞ」
「うん!」
明楽とクロは夕飯作りに取り掛かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます