第26話
「ここは、こう言う公式を使うといいぞ」
明楽に勉強を教えていた。
「解けた!」
「すごいな」
明楽の頭を撫でた。
「明楽は本当は頭がいい。自信持っていいぞ」
「クロには敵わないよ」
「もう暗いな」
クロは窓を見た。
「夕飯にしよう」
「早いわね。勉強道具片付けてくるね」
明楽は勉強道具を片付けた。
「今日は何食べたい?」
クロは食材の本を開いた。明楽は覗き見をした。
「このパスタ?食べたいな」
「ほう…じゃ、野菜スープパスタにしようか」
「うん!」
クロと明楽は一緒に作った。
新月の夜。レイは目を覚ました。
「あいつは居ないのか…」
敷地内に谷川の気配がなかった。水を飲み、空を見上げた。
「あぁ。懐かしいな。あいつはいつも一人で飛んでたな…」
レイは過去を思い出した。
明楽が生まれるずっと前。まだ三日月龍が絶滅前の話。
「全く…」
レイは毎晩この庭で三日月龍の群を眺めていた。時折美しい鳴き声に苛立ちを覚えた。
「目障りめ…」
レイはこの鳴き声が苦手だった。毎日観察していて、ふと気づいた。
「一匹だけ遅れてるな。毎日毎日」
よく見ると、群の最後尾に離れて飛んでいる三日月龍がいた。飛び方的に怪我をしているわけでも無く、わざと距離を空けて飛んでいたのだった。レイは様子を見ていたが、同じ三日月龍が飛んでいたのだった。
「ほう…差別か。何やらかしたんやら。だが、あいつは…メスか?」
次第に興味を持ち、毎晩その三日月龍を見ていた。
「美しい…」
そう思いながら、近づけれる日を狙っていた。ある日、谷川が出張でいない日があった。三日月龍の群が山の方へ向かっていた。レイは三日月龍の後を追った。人気のない山の方に来た途端。レイはその最後尾の三日月龍を捕まえた。三日月龍は激しく暴れた。
「大人しくしろ!」
そうレイは叫び、三日月龍を持ったまま地面へ落下した。三日月龍はただ叫んいた。地面へ不時着した後、レイは三日月龍に話しかけた。
「お前はなぜいつも最後に飛んでるんだ?差別か?」
しかし混乱してるのか、叫んでいるだけだった。
「答えろ!」
そう低い声で吠えた。
「私は!一族の生贄的存在なの!いらない存在よ!」
そう高い声で三日月龍は叫んだ。
「ほう。いらない存在なんだな」
「何するのよ!」
そう言うと、レイは三日月龍の翼を傷つけた。あまりの痛みに三日月龍は吠えた。
「前からお前のことが気になって仕方がなかったんだ。好きにしていいんなら、俺の子を作れ」
そう言うと、レイは三日月龍を襲った。叫ぶ気力もなくされるがままだった。コトを終え、レイは飛び去った。
「まぁ、あれだけ負ったんだ。死を選ぶだろう」
当時はそう思っていた。
「まさか、産むとはな。思いもしなかった。それに、強い力を持つ子。だから、その力を感じて行動を把握できていたのに」
明楽の把握ができない今、レイは何もできない。
「明楽。この前は把握できたのに、また消えた。それに、あの男の存在。あの男に似ていたな」
レイは丸くなった。
「明楽は誰のものにもしない。俺だけのものにする」
そう呟くと眠った。
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