第20話

目を覚ますと、もう暗くなっていた。


「寝過ぎた…」


メガネをかけ、窓を見るとちょうど月が出始めた頃だった。明楽を優しく揺さぶった。


「うん…?」


「おはよう」


「おはよう…」


「夕飯食べよう。ケーキも完成させないと」


明楽は一瞬頭が真っ白になったが、ハッと我に帰った。


「あ…そうだった」


「その前に、着替えようか」


サッと着替え、リビングに移動した。


「クロ…」


「なんだ?」


明楽は顔が赤くなった。


「いや…こんなに優しくされるの…初めてで…」


クロは蝋燭を炊き、テーブルに置いた。


「ありがとう。明楽」


「こっちも、ありがとう」


二人はお互いに笑った。


「さて、夕飯はっと」


「クロと一緒に丸鳥食べたい!」


「結構大きいぞ?まぁ、いっか」


丸鳥を出し、下処理をしてオーブンに入れた。


「その間に、ケーキをデコレーションしよう」


「楽しみ」


冷蔵庫から取り出し、クロは丁寧にケーキ生地に生クリームを塗った。


「綺麗…」


「コレに関しては…練習した」


フルーツで飾り、余ったクリームも無駄なく使い切った。すると、オーブンが焼き上がった。


「いい匂い」


取り出すと、こんがりと仕上がっていた。


「さて、食べますか」


「うん!」


明楽は丸鳥を食べた。


「美味しい…」


「こう言う時じゃないと食べない物だからな」


クロも美味しそうに食べた。


「クロって、苦手な食べ物あるんですか?」


「苦手な食べ物か…特にはないが、お酒はダメなだけだな。酔って吐くんだよ」


「そうなんだ」


「逆に明楽は何が苦手だ?」


「うーん。辛い物は苦手ですね」


「そうか。まぁ、辛いと痛いしきついよな」


「うん」


二人は食べ進め、あっという間に丸鳥は骨だけになった。


「意外と食べれたな」


「ケーキ…入らないかも」


「ケーキは明日食べよう」


「うん」


「片付けしておくから、先にシャワー浴びてきて」


「ありがとう」


明楽は着替えを持ち、シャワーを浴びた。クロは食器を片付け、テーブルを拭いた。


「クロ。シャワー終わったよ」


明楽が着替えて出てきた。


「わかった。ちょうど片付けが終わったところだ」


クロも着替えを持ち、シャワーを浴びた。


 明楽…可愛かったな…


そんなことを思いながら、シャワーを終え着替えた。


寝室に行くと、明楽は横になっていた。


「具合悪いか?」


「ううん。ちょっと疲れただけ」


クロはベットに座り、明楽の背中を撫でた。


「明楽。今日はありがとう」


「私も嬉しかった。ありがとう」


「今日はもう休もう」


「うん。クロ、おやすみ」


「おやすみ」


ベットに入り、寝ようとしたが明楽が手を握ってきた。


「いい?」


「もちろんだ」


手を繋いだまま二人は眠った。




朝日がクロを照らした。


「もう朝か」


メガネをかけ、明楽を見た。


「よく寝ているな」


明楽の頭を撫でた。起こさない様にそっとベットからでて、着替えた。すると、ルナの鳴き声が聞こえた。


「どうしたんだろ」


外に出ると、ルナが待っていた。


「乗って欲しいのか?」


ルナの額撫でると、鼻を鳴らした。


「わかった。でも、今日は明楽を乗せてみたいと思うんだ。頼んだよ」


クロは馬装を整えて、ルナに跨りウォーミングアップした。すると、明楽が起きてきた。


「明楽。おはよう」


「おはよう…」


「ちょうどよかった。乗ってみるか?」


クロはルナから降りた。


「いいの?大丈夫?」


「大丈夫」


明楽はルナに跨った。


「一人で乗るのって、雰囲気変わりますね」


クロはルナを引いた。


「どうだ?」


「すごくいい」


「じゃぁ、一人で動かしてみるか?」


明楽は手綱を握った。


「踵でルナのお腹を軽く蹴ってごらん?」


するとルナは前進した。


「なるほど…」


「乗馬はここからスタートなんだ。馬術までは相当時間かかるがな」


クロの指示の元、明楽はルナを動かした。


「楽しい」


「それはよかった。そろそろ終えるか」


明楽はルナに愛撫し、降りた。


「馬具の外し方も教えるよ」


クロは馬具を外した。外し終えると、ルナはまたどこかへ去って行った。


「いつも通りだな」


「馬具の鞍の部分、ナイトの鞍とあまり変わらない気がする」


「そうか。それなら大丈夫だな。さて、朝食にするとしよう」


「クロ。ありがとう」


部屋に入り、朝食の準備をした。クロはフライパンで卵を焼いた。


「そういえば明楽」


「なに?」


明楽は皿とコップを出した。


「今日クリスマスなんだ。プレゼントを大切な人に贈る日でもある。何か欲しい物はあるか?」


「いいですよ。いつも良くしてくれてるし。それに、この生活が何よりのプレゼントですよ」


明楽は椅子に座った。クロは皿に焼いた卵を入れた。


「いや…この前、明楽から力の一部もらったから、お礼がしたい。なんなら俺の…」


「クロの力の一部は、今の現状を終えてからがいい」


クロも椅子に座った。


「お父さんがいつどう言う行動をするかわからないのに、私が暴走したらクロもどうなるかわからない。今は、私の力の一部しか受け取ってないから、私が暴走してもクロには影響がないと思う。私のライダーとしての契約が半契約だから。クロにはこの状況が落ち着いたら、絶対に力の一部をもらうから…」


明楽は少し俯いた。


「明楽。俺の事を考えてくれてありがとう。俺は別に焦ってもない。俺は無理矢理やるのが好きじゃない。だから、明楽がここって言うタイミングでいい。俺はいつでも待ってる」


「ありがとう」


「で、冷めてしまうから食べよう。あ、ケーキもあるんだったな」


クロは冷蔵庫からケーキを取り出した。


「暗い話でごめんね」


「全然。むしろ大事な話だ」


クロはケーキを丁寧にカットした。


「よし、食べよう」


「いただきます」


明楽はケーキを一口食べた。


「美味しい…」


「よかったな」


クロはお茶を飲んだ。


「で、明楽。プレゼント欲しいか?俺が考えてもいいが」


「なんですか?」


「明楽に振袖を贈ろうと思う」


明楽はわからなかった。


「振袖って…なんですか?」


「あぁ、知らないのか。イベントの時に着る綺麗な着物だ」


「でも、どうやって作るんですか?」


クロは人差し指を立てた。


「そこは魔法の力だ。俺らは魔法使えるじゃん」


朝食を終え、クロはデザインを描いた。


「明楽って、こんなの似合いそうだな」


そこには赤黒い背景に桜が舞っているデザインだった。


「クロって、絵も得意なんですね…」


「明楽って、桜似合うと思うんだよな。で、帯は金にして…」


どんどんデザインができてきた。


「可愛い…」


「明楽はいつも髪を高く縛ってるから、そこはあまり変えずにだな」


髪飾りのデザインも書いて行った。


「よし。これでどうだ?」


「素敵…」


クロはデザインに呪文を書いて行った。明楽は不思議そうに眺めていた。


「これでっと」


そう言うと、デザインを床に置き何かを唱えた。すると、デザインが光だしゆっくりと物が浮かんできた。


「え…」


全部出てしまうと、光は止んだ。


「これでどうだ」


そこには振袖と帯、髪飾りがあった。


「着てみるか?」


「うん…」


明楽はまだ現実を受け入れてない様だった。クロに着付けを手伝ってもらい、振袖を纏った。


「綺麗だ。似合うぞ」


明楽は鏡を見て感動した。


「私…」


「明楽。俺からのクリスマスプレゼントだ」


「ありがとう。私、こんなの着るの初めて…」


「喜んでくれて嬉しいよ。明楽に贈ってよかった」


明楽はクロを抱きしめた。


「ありがとう」


「どういたしまして」


クロも明楽を抱きしめた。


「最高のクリスマスだよ。クロ」


明楽とクロはお互いに笑った。


「明楽。これからも頼むな」


「うん!」


明楽は汚さない様に、振袖を大事に片付けた。

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