第17話

目を覚ますと、ベットの上だった。見渡すと、クロの部屋だった。奥の方で声が聞こえたが、聞き取れなかった。すると、扉が開いた。


「目を覚ましたか」


心配そうにクロが近づいてきた。


「私…いつの間に…」


「明楽。ごめんな。辛い思いさせて」


明楽の手を握った。


「お父さん…ずっと私を監視してたんだな…」


明楽は寂しい表情になった。


「だが、明楽を操れるって相当力がいるぞ?」


「それくらい余裕だと思うよ。でも、今回は私も記憶がある。なんとか止めないとって。クロが傷つくと思った」


「ありがとう」


「それと、気になってたんだ。クロが歌った歌…聞いたことある。だけど、どこで聞いたか覚えていない」


「あぁ。あの歌は、叔父さんが明楽とナイトの子守唄として歌ってた歌だ。この歌には、不思議な力が込められてるそうだ。ナイトを卵にした時にも歌ったんじゃないかな?」


「その歌。すごく好き。でも、お父さんはその歌苦手なのかな?徐々に抜けて行った感じがあって、全部抜けると、体が軽くなったんだよ。不思議な歌だよね」


「明楽に傷をつけたくない。でも、乗っ取られてる。そう思って、ちょっと歌ってもた。恥ずかしかったけど…」


クロの顔が少し赤くなった。


「でも、普通歌を歌ったら何とかなるって思わないでしょ」


「いやー。一理あるかと思って…」


明楽とクロは笑った。


「でも、クロ。ありがとう。止めてくれて」


「それが、俺に与えられた使命だし、明楽を守りたい。それだけだ」


クロは部屋の明かりを消し、ベットに入った。


「クロ」


「どうした?」


「近々、二人っきりになれる所に行きたい」


クロは少し驚いた。


「どうした?」


「いや。また行きたいなって思っただけ」


「明日、調整してみるよ」


「ありがとう。おやすみなさい」


「おやすみ」


二人は眠った。






夜中。谷川の家の庭でレイは暴れていた。


「クソッ!」


怒声を上げながら土を掻きむしったり、木を焼き払っていた。


「レイ!いい加減にしろ!今何時だと思ってる!」


谷川はたまらず大声をだした。レイは谷川を睨んだ。


「それに、多少の収穫はあったじゃないか」


「アン?」


「三日月さんはこの世にいないって事だ」


「…だから?」


「灰色の世界の行き方を、徹底的に調べるぞ。うまくいけば、来年には三日月さんを奪還できる事だ」


「どうやって行くんだ?」


「今、調べてる。だから、大人しくしてろ。だが、今日のお前の働きで少し前進した思えばいいんじゃないか?」


谷川はレイを撫でたが、レイは威嚇した。


「あの野郎…」


「誰なんですかね…」


谷川はため息をついた。


「庭…どうしましょう。まぁ、もうすぐ雪が降るから春までにどうするか、考えるとしましょう」


すると、護衛が走ってきた。


「工藤くんに、今回の火事についての処分は、三ヶ月給料減給に留めると伝えといてくれ」


「わかりました」


護衛は走って去って行った。


「レイ。もう寝るぞ」


レイは翼を叩み、谷川がレイを小さくして肩に乗せた。






「おはよう。明楽」


目を覚ますと、クロが顔を覗かせていた。


「お…おはようございます」


「調整が付いた。今日の昼に行けれるようになった」


明楽は体を起こした。


「それと、もう年末だ。この城を支えてる兵士達に冬休みに入ってもらおうと思う。カラス達も怪我だらけだし。今は皆を休ませようと判断した」


「そうなんだ」


「期限は年明けまでだ。だから、一週間くらいは二人っきりになれるぞ」


「いいの?」


「もちろん。ただし、午前中はきつめの稽古をするが…いいか?」


「もちろん!」


明楽は嬉しそうに答えた。


朝食を終え、明楽は準備をした。


「明楽ちゃーん。おはよー」


ウルフが入ってきた。


「おはようございます」


「カラス達の状況なんだけど」


ウルフは椅子に座った。


「ウルフ。どうだ?」


クロが気になっていた。


「みんな大丈夫。みんな生きているよ」


「よかった」


「時間はかかるけど、羽も生えてくるからまた飛べるよ」


クロはホッとしていた。


「二人とも。もう稽古でしょ?頑張ってね」


ウルフは出て行った。


「明楽。そろそろ行くぞ」


「うん」


稽古場へと向かった。

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