第16話

あれから数日が経った


「クロ…」


「何?」


「クロって、ライダーに興味ある?」


明楽の問いに、クロは少し驚いた。


「どうした?そりゃ、興味があるよ。いつか、一緒に過ごしてみたいは思うよ」


「うん。じゃぁ…」


明楽が言おうとしたその時、ウルフが勢いよく部屋に入ってきた。


「クロ大変!数羽のカラスと連絡が取れなくなったの!」


クロは驚いた。


「なんだと!」


「今、カラスに緊急退避を出したんだけど…帰ってきたカラスたちが言うには、無差別にカラスを処分してる複数の男がいるそうよ」


クロは急いでカラスの様子を見に行った。城の外にカラス達の小屋があり、複数のカラスが休憩をしていたが、中には火傷を負ったカラスがいた。


「ひどい…」


火傷をしているカラスをクロは抱き上げた。


「よく帰ってきた。偉いぞ」


すると、カラスはクロになにか言いたい顔をしていた。クロはカラスを耳に近づけた。


「…うん。わかった。ありがとう」


「クロ。何があったの?」


心配そうに明楽はクロに尋ねた。


「どうやら、この世で無差別にカラスを火炎放射器で焼き払ってるそうだ」


明楽は驚いた。


「なんで…何にもしてないのに」


「クロ。とりあえずカラス達の治療は私がやるわ」


ウルフは複数の兵士を連れてきて、治療の準備をしていた。


「頼む。明楽。力を貸してくれ。だが、危険を感じたら逃げろ」


「わかった…でも、どうやって行くの?」


クロはカラスをウルフに渡した。


「とりあえず、準備をしよう」


クロと明楽は武器を準備した。


「じゃぁ、俺の肩に手を置いて」


明楽はクロの肩に手を置いた。


「行くぞ」


クロは指を鳴らした。






「人間の肉を食った可能性がある。俺らに攻撃するかもだ。焼き払え」


工藤は複数の男を雇い、野生のカラスを焼き払っていた。


「でも、複数すぎます。それに、山火事になりませんか?」


火炎放射器や、魔法でカラスと同時に木々も燃やしていった。


「大丈夫だろ。俺は、学校の仕事が残っている。この責任は俺が持つから、あと頼んだよ」


工藤はその場を去って行った。


「高額報酬というが、俺たちだけでやれって言うのかよ…」


「まぁ、夜だけだし。朝には誰かが鎮火してるんだろう」


黙々と作業をしていた。




工藤は車を運転していた。もうすぐ家に着くところだった。すると、電話がなった。路肩に止め、電話に出た。


“工藤くん。どう言うことかね”


谷川からだった。


「何がですか?」


“とぼけないでください。森を燃やすは私は支持していません”


「いえ…あの現場にカラスの羽がありました。カラスが人間の肉を捕食した可能性があったので、我々を襲うと思うと、先に先手を打ちました。私の独断です」


谷川は深いため息をついた。


“やりすぎです。今すぐ止めてください!”


「…わかりました。申し訳ありません」


工藤は電話を切った。


「チッ…まぁ、いいか」


工藤は走ってきた道を引き返した。






「ついた…」


クロと明楽は森に着いたのだが。


「なにこれ…」


木々が炎に包まれていた。


「明楽。離れるなよ。カラスが言ってた男達、この近くに居そうだ」


クロと明楽は炎に向かって走った。


「酷い…」


すると、複数の男が炎を出しているのが見えた。


「明楽。あいつらだ」


明楽も確認をとれた。


「六人が横一列で作業してる感じだな。明楽は手前から襲え。俺は奥から襲う。殺しても構わない」


「分かった」


二手に分かれ、同時にスタートと切った。


「なんだ!」


男達は気づいたが手遅れだった。


「森を、なんだと思ってる!」


明楽は二本の刀で男達を切って行った。


「そろそろ、燃やすの辞めようか」


クロも手甲鉤で男たちを切り、一人を生かし縛った。


「明楽。よくやった。さて…」


手甲鉤で男を脅した。


「誰の指示だ」


男は涙と汗でグチャグチャだった。


「工藤という男から、高額の報酬で雇われただけです!」


「狙いは?」


「詳しくはわかりません。人間の肉を食べたカラスは人を襲うとか言っていました」


「よく言ったな」


クロは男を瞬時に殺した。


「クロ…この火事どうする」


「もう百メートル近くは燃えてるな。山奥すぎて、街まで気づかったのが幸いだ」


警報音などが響かなかったのはそのせいだった。


「クロ。この火事、私が止める」


明楽はクロに言った。


「どうするんだ?」


すると明楽は月に祈った。今夜は月が欠けていた。


「月よ…」


すると明楽の体が青く輝き、三日月龍へと変わった。


「…っ!」


クロは驚いていた。明楽はジャンプし空を舞った。明楽は体を回転させ、風を舞い炎を舞い込んだ。森の炎が明楽へ吸い込まれ、全てを吸い込むと、明楽は翼を勢いよく広げた。すると、炎は小さな火の粉となり、森へ落ちる前に消えていった。


「すごい…」


明楽はクロの前で着地した。翼をたたみ、顔をクロに近づけた。


「明楽…ありがとう」


「どういたしまして」


「喋れるのか!?」


「喋れるよ?」


クロは明楽の額を撫でた。


「美しいよ」


明楽は力を抜くと、また青い光が明楽を包み人間へと戻って行った。


「どういたしまして」


「さて…帰ろう…」


クロが言いかけた途端、明楽の雰囲気が変わった。


「やめて…」




ここに居たのか…明楽!




明楽の中で何かが叫ぶと、明楽はその場で叫んだ。


「やめて!」


「明楽。大丈夫か?」


すると、明楽の目が赤く変わった。


「俺の明楽を…許さない!」


声は明楽だが、誰かが明楽を操っており、クロに向けて刀を突き出した。


「…お前は、レイだな」


クロは手甲鉤をはめた。


「俺を分かってるとは…お前は何者だ?」


「俺は、明楽を守ってるだけだ」


「ふーん。だったら…」


レイは刀を明楽の首に当てた。


「これはどうだ?ここから、明楽を守れるか?」


レイはクロを睨んだ。しかし、クロは落ち着いていた。


「そんなことしても、お前は明楽を殺せない。お前は明楽の力を欲しいだけだ。殺したら何もなくなるじゃないか」


レイは笑った。


「あぁ。こいつの力は欲しい。俺以上の力を持ってるからな」


またレイは刀をクロに向けた。


「じゃぁ、一回喧嘩しようじゃないか…な…」


刀を持っている手が震え出した。


「明楽…俺に歯向かうな…」


刀を落としてしまった。


「明楽…てめぇ…」


明楽が言うことを聞かないことに、レイは怒っていた。


「明楽…もがいてるんだろ?少しでも力になりたい」


クロは歌った。


「あん?」


レイは睨んだが、明楽から徐々に離れて行くことに気づいた。


「てめぇ…」


しかし、レイは何もできず、明楽から離れて行った。


「…クロ」


明楽はクロの歌う歌に懐かしさを感じた。歌が終わると明楽はフラついた。倒れるところをクロは抱き抱えた。


「明楽。大丈夫か?」


「うん…」


「よし。帰ろう」


すると、後ろから光が照らされた。


「…許さない」


クロは光の方を睨み、指を鳴らし、暗闇へ消えて行った。




「火事になってないだと?」


工藤は車から降りた。


「あいつら…トンズラしたな」


そう言うとまた車に乗り、自宅へと走って行った。

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