第12話

朝方。クロは目を覚ました。メガネをかけ、窓を見ると一羽のカラスがいた。窓を開けカラスを中に入れた。カラスはクロの耳元でクチバシを動かした。


「なんだと…わかった」


そのままリビングへ行き、カラスにおやつを与え外に逃した。


「明楽。起きろ」


明楽を揺さぶり起こした。


「どうしたんですか…?」


「急遽城に帰ることになった。支度するぞ」


「何かあったんですか?」


「あぁ。移動中に説明する」


外に出ると、あの黒馬がいた。クロは急いで馬装を整え、明楽を乗せ自分も乗った。


「動くぞ」


明楽は鞍にしがみつき、クロは馬を走らせた。


「クロ。どう言うこと?」


「ウルフから連絡で、この灰色の世界に誰かが入ってきたらしい」


「え?でもなんでわかるの?」


「まぁ、色々あるんだ。だが…この世界。そう簡単に生きて帰れる世界ではないんだが」


「どう言うこと?」


「明楽も時期にわかる。とりあえず、急いで城に向かうぞ」


黒馬はスピードを上げた。


城へ着くと、入り口にウルフが待っていた。


「クロー。明楽ちゃーん」


兵士に黒馬を託し、クロはウルフから情報を聞いた。


「どう言うことだ」


「クロ達がいた所よりも遠いけど、二人組が入ってきたの。で、カラスの監視で後数時間でここに着くらしい…」


「ここの場所をわかってるやつか…まさか…」


明楽が声をかけた。


「あの…何がどうなってるんですか?」


ウルフが答えた。


「この灰色の世界に二人組が入ったの。ちなみに、なぜ入ったのわかったかって言うと、雷が鳴るのよ。一回鳴ると一人て感じで。ただ、城から離れると雷がわからないの。だからクロに連絡入れたのよ」


「そうだったんだ」


「できたら、夜まで来ないでほしい…」


クロはそう呟いた。


「夜?」


「この灰色の世界が、化け物になる」


明楽はわからなかった。


「兵士に警戒しろと伝えてくれ。それと明楽。武器を準備してくれ。ウルフも武器を」


「はーい。明楽ちゃん。武器取りに行こ?」


「はい」


ウルフはクロの部屋へ明楽を連れて行き、明楽の刀二本を返した。


「ウルフさんは、何使うんですか?」


「私?私のお供は…」


腰から取り出したのは、長い鞭だった。


「この鞭、痛いのよ。細かい刃がついてるから皮が裂けるし、締め付けたら食い込むのよ。もう…苦しんでる敵を想像しただけで…」


「あ…はは…」


「でも、明楽ちゃんは私たちが守るからね!大丈夫よ。ただ、自分の身に危険があるなら全然攻撃して」


ウルフは真剣な表情で言った。


「ウルフさん。わかりました」


「よし。それじゃ、敵の進行状況確認しようか」


するとクロが部屋に入ってきた。ため息を吐きながら、椅子に座った。


「クロ…どうしたの?」


「予想が的中したかもしれん…」


ウルフもどこか納得していた。


「私もそう思った。でもさ、どう言うつもりで来たんだろうね」


「一つしかないだろ」


クロは明楽を見つめた。


「明楽を連れて行きたいんだろう。この世の世界で明楽の情報が回ってるそうだ。さっき、カラスから連絡きた。明楽に懸賞がかけられてるそうだ。ほんと、明楽をなんだと思ってるんやら」


「私…何もしてないのに。私の力を欲しいがために…」


「腹立つよな。他人を当てにせず、自分らでやれって話だよな」


クロも怒っていた。


「だが、俺とウルフがメインで戦う。明楽は後ろで待機だ」


「わかった」




夕日であたりがオレンジ色に染まった。城の鐘が鳴った。


「敵がみえたぞ!」


一人の兵士が叫んだ。


双眼鏡を見ると、確かに二人組が確認できた。


「やはりか…」


クロは確信した。


「知ってるの?」


明楽はクロに問いかけた。


「俺の親だからな…」


明楽は驚いた。


「相変わらず、悪趣味ね。まじ怒」


ウルフも呆れてた。


城の入り口の門を閉め、クロとウルフが立ちはだかった。明楽は後ろで待機。


「オヒサシブリネ。クロ」


色白の女が片言で喋った。


「私達は、三日月さんを奪いにきた」


日本顔の男がそう言った。


「はぁ…父さんも母さんも何を言うと思ったら…」


「明楽ちゃんは絶対に渡さないし、ライトさんを…よくも殺してくれたわね」


ウルフが怒りで震えていた。


「アンタハ、タニンデショ!ライトハシンデトウゼン。オカネノムダ」


「権力がある方についた方が後々楽じゃないか。今、三日月さんを連れて行けば、我々の評価も上がる。死ぬまで豊かだ」


クロの親は武器を手に取った。クロとウルフも武器を取った。


「ウルフ。俺は父さんをやる」


「女同士の方が、こっちも楽よ」


すると、クロの母が先に先手をウルフにうった。


「アンタハ、キモイノヨ!」


短剣を振り回したが、ウルフは華麗に避けた。


「私は、ライトさんの助手をしていただけよ!アンタみたいにお金取ってもない。自分の兄弟を殺すなんてもってのほかよ!」


ウルフは腰から鞭を取り出し、クロの母に振るった。


「コレクライノコウゲキ、ハジケレルワヨ!」


短剣で弾いって言った。ウルフとクロの母は、女同士の壮絶な争いをしてる中、クロとクロの父がぶつかっていた。


「そんなに親の意見が聞けないのか!」


クロの父が持つ剣と、クロの手甲鉤が激しくぶつかった。


「親の意見?ふざけるな!一方的に押し付けだろうが!」


何度もぶつかり合い、火花が飛び散った。


「三日月さんをこちらに寄越せば、貴様らは殺さん」


「明楽を、なんだと思ってるんだ!」


そこから互いに斬り合いになった。血が飛び、削れていった。


「まだまだだな」


「あぁ、俺はまだ修行が足りないは自覚してる。でもな!」


クロはクロの父の腹を斬った。


「俺はみんなを守るために、強くなったんだ!」


「ぐっ…」


一方ウルフとクロの母も激しく攻防していた。


「キニクワナイワネ」


「それは、こっちのセリフよ!」


クロの母が太ももから数本のナイフをウルフに投げた。ウルフはそれをかわしたが。


「スキアリヨ!」


ウルフの胸を裂こうとしたが、ウルフはなんとか避けた。


「コレガネライナノ…」


クロの母は腰から鎖を取り出し、明楽にめがけて発射した。


「しまった!」


ウルフが気づくも、体勢が悪い。明楽もそれに気づき、二本の刀を抜き鎖をなぎはらった。


「っ…」


鎖はバラバラに破壊されたその時。


「もう一本あるぞ…」


クロの隙をつき、クロの父が明楽にめがけて鎖を発射した。


「させるか!」


クロは電光石火の如く、明楽の方へ行き、鎖を切り裂いた。


「大丈夫か」


「ありがとう…」


すると、クロに衝撃が走った。


「ぐっ…」


クロの父がいつのまにかナイフを投げていたのだった。


「隙ありすぎる。ほんと、つまらん息子だ」


血で服が赤くなっていった。


「クソ…でも、これくらい」


手甲鉤を突き立てた。


「これくらいで、倒れるわけないだろ!」


クロが叫んだ。すると、空気が一変した。


「なんだ…?」


「何?」


クロとウルフは顔を見つめた。同時にクロの両親も互いに顔を見つめた。


「ナニガ?」


すると、風の如く明楽がクロの母の懐に入った。


「エ…」


声が出る前に、明楽はクロの母を切り裂いた。クロの母は、声もあげず倒れた。


「次はあなた…」


明楽は人が変わったようにクロの父に刀を向けた。


「かかってくるがいい。お前を動けなくしてから、あの方に譲るんだ…」


だが、もう明楽は動いていた。一瞬で懐に入った。


「うるさい…」


クロの父はなんとか剣で明楽の刀を止めた。


「ぐぅ!」


だが力が違った。


「へし折ってやる」


明楽は二本の刀で剣をへし折った。


「なんだと!」


クロの父は距離を取ろうと、バックステップしたが。


「私の大事な人たちを傷つける奴は、許さない!」


明楽はクロの父を切り裂いた。


「クソが…」


クロの父も倒れた。明楽はクロの父の心臓にトドメを刺そうとした。


「待て!」


クロが叫ぶと、明楽は刀を下ろした。ウルフの肩を借り、クロはクロの父の方に近づいた。


「父さん。明楽を誰の所へ連れて行く予定だったんだ」


クロの父は息が絶えそうだった。


「お前も知ってるだろ。あの戦争の首謀者だ。だが…あのお方は、ここの存在をあまり知ってないと思う。俺らが三日月さんを連れてくる電話をしても、あまり相手にしてなかったからな…」


クロの父はクロの母の方を向いた。


「あいつは、昔からライトが気に入らなかったんだ。親の意見に反対し一人で成功を収めてたのを見てたからな。嫌がらせから始まり、憎しみに変わっただけだ。だから、お前にも強く当たった。でも…お前も、ライトの方に行った。死ぬ間際ながら、これで良かったと思うよ」


クロの父はため息を吐いた。


「俺は…妻に加担しただけの存在だ…クロ…じゃあな」


そう言い残すと、クロの父は息を引き取った。


「…すまん。何も言えない」


「もうすぐ夜だから、すぐ城へ行こう。明楽ちゃん。ちょっと手を貸して」


「…うん」


明楽はウルフの指示のもと、クロに手を貸した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る