第11話
太陽の光が明楽を顔を照らした。
「うぅ…ん」
目を擦った。
「明楽。おはよう」
リビングからクロが顔を出した。
「おはようございます…」
リビングに行くと、朝食が用意されていた。
「今日はご飯と味噌汁に、だし巻き卵だ」
味噌汁を飲むと、ホッとした。
「美味しい…」
「よかった」
「今度…一緒に作ってみたいです」
明楽は照れくさそうに言った。
「別に構わないよ。むしろ嬉しいよ」
食べ終えると、明楽はリビングにあった本棚をみた。
「色々あるんだな…ん?」
その中に、手書きの本があった。明楽はそれを取り出した。
「クロ。これは?」
クロもその本を見た。
「あぁ…懐かしいな。大学の頃の日記だ。まぁ、バイトの日記だがな」
「バイトの日記?」
「読んでも構わないよ」
明楽はペラっとめくった。そこには、明楽と同じ名前が書いてあった。
「彼女は、三月明楽。明楽と似てて初めて出会った時びっくりしたんだ」
「本当ですか?私に似た人いたんだ…」
「だが彼女はもう居ない」
「え…」
「死んでしまった。元々病気も持っていたのと、事件に巻き込まれてね。でも、本当に強いお方だったよ。ちなみに、仕事内容は主にボディーガードと、家事だったな」
読んでいくと、朝食夕食の献立や仕事の同行、三月明楽の体調などが書かれてあった。
「すごいな…」
「三月さんからは色々教わったよ。なお、バイト代だが…」
「いくらだったんですか?」
「二ヶ月?してタダだったよ」
明楽は驚いた。
「え!?」
「でも、衣食住完備で戦闘も経験できたし…まぁ、いっか…と」
「クロって…軽いね…」
「でも、経験できないことをしたと思えば、勉強代だと思ってるよ」
明楽は日記を本棚に戻した。
「そういえば、クロ」
「なんだ?」
「ライトさん…亡くなってから、谷川は何かやったんですか?」
クロは少し曇った。
「昨日戦争の後の話聞いていなかったので…」
「もちろん、谷川が勝利したさ。そして、四種族の野生の龍が絶滅した」
「え…」
「俺は二年間、この灰色の世界で稽古をしていた。この世には一度も行ってないんだ。と言っても、この灰色の世界の存在を知る人間は俺と叔父さんだけだと思う。向こうはカラスが情報収集してわかったんだ」
クロは数々の龍が書いてある本を取り出した。ページをめくると、丸が書いてあるところがあった。
「まるで囲ってある種族は、絶滅した種族だ」
明楽は龍の種族の少なさに驚いた。
「こんなに少ないのに…」
「今も絶滅に向けて、行動しているとは聞いている」
明楽はふと思った。
「ライダーも…嫌われてますよね」
「そうだな。でも、谷川もレイを飼ってるから、おかしい話だよな」
「でも、お父さん…強いんだよね…」
「レイには会ったことがないが…最強と言われているからな」
「そうなんだ」
「でも、俺は龍も好きだし、ライダーに憧れている。かっこいいじゃん。龍と共に生活だぜ。嬉しいよ」
目を輝かせていた。
「いつか、叔父さんができなかったライダーになる夢、叶えたい」
「龍を大事にする人には、絶対来ますよ。私も、ナイトと生活してて、すごく楽しかったし」
クロは窓を見た。
「もうお昼か。明楽。一緒に作るか」
「え?いいの?」
「よし。一緒に昼ごはん作ろう」
二人はキッチンで楽しく料理をした。
数十分後…
「明楽。意外と料理うまいな」
肉を一口食べて驚いた。
「そうですか?嬉しいです」
ただ焼いた肉だが、火加減の調整が上手いのか、柔らかくおいしい。
「明楽…普段料理してたのか?」
「焼くと煮るしか…洞窟では、こう言う調理器具なかったので」
クロはすぐに食べ切った。
「よく生きてたな…」
「狩がうまくいかない時は、ナイトが遠くまで連れてってくれたので。食糧難?にはなった事がないです」
改めて、明楽の凄さにクロは感激を受けた。食器を片付けると、クロが声をかけた。
「明楽は、学校で勉強とかしたか?」
「実は…勉強は全然ダメでした。授業もよくわからなくて、置いていかれました」
「そうか…それじゃ、俺が教えよう」
「え…」
「こう見えても、学年でトップだったんだぞ」
そう言うと、大学の時に使っていた教科書を見せた。数学だろうか。教科書に訂正して正しい答えを書いてあるところもあった。
「クロって…天才?」
「普通じゃないの?」
「テストで…一点取れれば良かったです…」
クロの目が点になった。
「本当にわからなくて、教科書もいじめで破られてたし。先生も無視だったんで…」
クロは悲しくなってきた。
「そうか…辛かったな」
「でも、体育ではいい点数取ってたんですよ」
明楽は誇らしげに言った。
「そうか。流石だ。授業で習わなかった所、俺が一から教えよう。それとも、学校戻りたいか?」
クロは明楽に問いかけた。
「学校は…嫌です。行きたくない…本当はずっと洞窟でナイトと生活したかった。でも、行かないとダメかなって使命感?なんですかね。嫌々行ってたんですが、高校で…あんな扱いされたらもう、行きたくない」
明楽は俯いてしまった。
「辛いよな。俺も、高校までは一人でいたんだ」
「え…」
「別に友達もいらないし、親がうるさい親で参ってたんだ。親が嫌でずっと叔父さんの城。今のあの城へ遊びに行くついでに勉強や礼儀作法教えてもらったんだ。実はさ、大学の学部選んだ理由がさ、明楽のためだったんだ」
「そうなの?なんで?」
「俺が選んだ学部は封印学部。明楽が暴走した時に、どうやって動きを封印できるかなど、役に立つかなって選んだ。叔父さんが教授してる学部も良かったんだけど、夏休み等に教えてくれたし。だから、大学で二つの学部を学んだな」
クロは本棚をから一冊の本を取り出し、明楽に渡した。
「まぁ、急ぐわけでもない。いつでもいいし、明楽がやる気出た時に教えるでもいい。これからスタートしようか」
そこには『基本の普通科』と書かれていた。中を見ると、本当に初歩から応用までの全ての学科が入ってる本だった。
「初歩でも…わかんないのあります」
「大丈夫だ。俺が教える。今教えてもいいよ?」
クロは明楽に丁寧に教えた。すると、あっという間に時間が過ぎた。
「…明楽」
「なに?」
「本当に…勉強苦手…だよな?」
あの短時間で応用まで進んだ。
「うん…」
「教える奴がダメだったんだな。明楽は頭いいじゃん」
「そう?」
「うん。すごいよ。応用手前だが、いいところまで行ってるぞ」
勉強面で褒められた事が初めての明楽にとって、嬉しかった。
「ありがとう」
「よし、今日はここまでにしよう。夕飯作って、食べようか」
「うん!」
夕飯の支度をし、談笑しながら食べた。
「明楽。来た頃より、だいぶほぐれたな」
「クロが悪い奴じゃないと思った。でも、来た当初は恐怖で仕方がなかった」
「あの時は悪かった。でも、君を止めるにはそれしかなかった」
「龍を止めるって、相当難しいんじゃ?」
「コツさえ掴めばある程度は動きを制限させれる。翼を使えなくすることも一つの手だ。飛ぶ事が出来なくなったら、地上戦しかできなくなるからこっちからしたら楽だな」
明楽は納得した。
「クロって、過去に龍と戦ったことあるの?」
「うーん。戦ったことはない。明楽が初めてだよ。龍の構造や体格は叔父さんから学んだ。それを元に戦っただけだ。明楽は、龍になった事が少ないから、うまく体を使いこなせてないところが欠点だった。だけど、それが良かった。止める事が出来たから」
クロは食事に出ていたパンを一口食べた。
「じゃぁ、あの薬は?」
「あれはウルフが準備してくれた。本当は説得して連れて帰るつもりだった。暴れるは想定してたんだが、初めて龍と戦うことになる。ましてや暴走状態。正直自信なかった。でも、うまく行って良かったよ」
「そうだったんだ」
「無理やり連れてきたって思ってもらってもいいが…明楽がこうやって笑顔になって過ごしてくれてる事に、俺はここに連れてきて良かったと思ってる」
クロはお茶を飲んだ。
「正直、ここに来て良かったって思ってます。むしろ…もっと早く会いたかった」
明楽はそう呟いた。
「そう思ってくれて良かった。ありがとう。さてと、そろそろ片付けるか」
クロが立ち上がった。明楽も立ち上がり、食器を片付けた。明楽はシャワーを浴び、ベットに座り窓を見ていた。綺麗な満月が昇っていた。
「今日は満月か」
シャワー上がりのクロが入ってきた。明楽の横に座った。そっと明楽の肩に手を置いた。
「怖いか?」
明楽は頷いた。
「ごめんなさい」
「大丈夫。明楽は悪くない。辛いよな」
「どうしてクロは優しいの?」
明楽は疑問だった。
「嫌がる事したら、誰だって嫌だろ?明楽が嫌なことは俺はしない。ただ、稽古で苦手を克服目的で攻める時はあるよ?」
「…あの時の出来事がフラッシュバックしてしまう。怖かった」
「その犯人、俺が始末してもいいか?明楽をここまで追い込ませた奴が許せれない。ましてや、計画的だ。そう簡単に殺したりはしないし、死んでも苦しめる」
「ん…?どう言う…」
クロは悪魔の笑みを浮かべた。
「明楽に一生消えない傷をつけたんだ。償いはいるだろ?明楽は心配しなくていい。さ、もう寝よう」
明楽が横になるとクロも横になった。
「おやすみ。明楽」
「おやすみなさい」
二人はそのまま眠った。
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