Chapter1

やったねテルちゃん!仲間が増えるよ!

前書き


前回投稿した六話ですが、事情ありまして削除し新たに書き直しました。


 グダグダに進んでいますが、よろしければこれからも『異世界ラーテルは喧嘩を売る。』をよろしくお願いいたします。


――――――――――――――――――


「大型の鎧熊の討伐依頼……ねぇ。」

「はい、麓に降りて街周りを縄張りにしてしまって…………勿論貴方達2人だけなら厳しそうだから、他にも冒険者を即席パーティーとして斡旋するわ。」

「なるほどね。」


 ギルドの受け付けにて、受付嬢とインディはその様な会話をしていた。


 いつものように掲示板に貼られた依頼を見に来たら、受付嬢からインディへと直接……つまりはギルドからの直接的な依頼なのである。


 因みにテルは休憩所で爆睡中である。先日の肉体労働で相応に疲労が溜まっているそうな。。


 鎧熊とは、名の通り硬い外殻をもつモンスターでその硬さから危険度はB級、熊の動きは損なわずに硬い外殻を持ち、大きさも大狼並の3M級。更に大型とつくからにはそれ以上の大きさなのだろう。危険度はB級である。


 B級は5段階の危険度で言えば二番目だが、A級は突出したモンスターであり、その為に軍が動くことを考えると、事実上B級がギルドで受けられる最高ランクのモンスターである。


 鎧熊はB級の中では下から数えたほうがはるかに早いくらいには弱いモンスターだが、それでもB級、中の上冒険者ならば4人のフルパーティーを組んでも呆気なくやられる可能性のあるモンスターだ。


 インディとテルも、2人だけでは相応に厳しい相手でもある。


 テルが聞いたら喜んで受けるのだろうが…………ギルドからよ直接依頼というのがこの依頼を受けるのを悩ませる。


「ギルドからの依頼ってことは……報酬絞られるわよね?」

「素材の売却権は譲るとは聞いていますが……その分報酬金は……」


 そう言って受付嬢は六の数字を指で作る。つまり相場の7割減と言う事だ。ギルドは金にがめついのだ。


 しかし、ここで依頼をこなせばギルドに名前を覚えてもらえる。


 それは良い依頼を斡旋してもらえる可能性や何かあったときに融通を利かせられる可能性が増えるということである。


「うぅん……」


 インディは脳内でリスクとリターンを天秤に重ねる……普段は亡骸すらギルドに取られるのを考えれば、相応に受ける価値のある依頼ではある。人員もよこしてくれると派言うが。


「そのお供してくれるのはどんな冒険者?」

「一人はダークエルフのグラップラー。一人は魔機使いの女の子。腕は確かです。」

「……それ絶対ほかに受けられる仕事ないから断腸の思いで受けただけよね?」


 説明をしよう。ダークエルフは褐色のエルフ族の事である。


 いわゆる突然変異で褐色になってしまっただけで、普通のエルフと何ら変わらない……が、数も少なかったり、エルフ族自体が潔癖な種族と言うことで本場のエルフ族からは嫌われていたり差別されていたりもする。


 その為、ダークエルフの行き着く先は冒険者や色町なのだが……色町でもダークエルフは忌避される存在であり、冒険者としても物珍しい。


 そして、何の因果かダークエルフは魔術を使えない……エルフで魔術を使えないのは、例えるなら……弓はあるが矢はない状態と言った所か。


 兎も角、悪い言い方をすれば相応に役立たずな存在だ。グラップラー……武闘家とは言うが、実際それくらいしかなれる職業がなかったのだろう。



 続いて魔機とは……こちらは下手をするとダークエルフなんか可愛く見えるレベルの厄ネタだ。


 魔機と言うのは古代の遺物、いまから何百年か前に魔力を元にして半永久的に動くとされた機械――オーパーツの事である。


 その魔機をしようして、昔はこの世界は大変栄えていたとされている……裕福な場所なら、天に基づくほどの建物が立ち並んでいたと言う。

 

 しかし、ある日を堺に魔機の多くが暴走……特に兵器類は、只管に当たりの生物を見境なく殺す殺戮兵器へと変化してしまった。


 その蹂躙具合は機械の悪魔とまでよばれ…………この世界の文明レベルを数世代落としたとまで言われている。


 なぜそうなってしまったのか……理由は不明とされている。スピリチュアルでオカルトな話をすれば、あまりにも高い技術力を持ったせいで神からの怒りを買ったとされている。


 それくらい不自然なほど発展し、不自然なほど崩れ去ったのがのが魔機が普及していた時代なのだ。


 そんな古代の遺物、魔機を使用するのが魔機使いと言う訳だ……まぁ、語った通り世界を滅ぼした遺物と同種を使っている時点である程度は避けられる人種だ。


 しかも捨てれば良いものを好き好んで持っているのは、より一層不気味だ。


 無論何かしらの理由があるのだろうが……平時だったら関わりたくない人種であるのは確かだ。


 事実、ダークエルフも魔機使いも、双方依頼を受けても向こうからチェンジを要請されることも少なくないと言う。案外贅沢なやつも多いのだ。


 しかし、冒険者は何時でも非常時、使えるものは何でも使うのが吉だ。


「わかったわ。受けるわその依頼。」

「ありがとうございます。手続きはこちらでやっています、休憩所に先程話した冒険者さん達がいらっしゃるので挨拶してきてはどうですか?」

「そうね。行ってくるわ。」


 インディはそう言って、手続き等の細かい所は受付嬢に任せて、休憩所へと足を進めるのだった。





「テル……居る?」


 インディは休憩所の扉を開ける。


 すると、そこには、瓶に詰められた蜂蜜を貪るテルと、その様子を優しげに見守る一人の(何故か)メイド服姿の褐色の耳長族……ダークエルフが居た。


 インディはその光景を見て一つの疑問を浮かべる……テルが、今蜂蜜持っていたか?……と。インディは恐る恐る問いかける。


「……テル、その蜂蜜どうしたの?」

「そこのダークエルフの姉ちゃんから貰った。」


 次の瞬間、テルの頭の上にインディの杖が叩きつけられた。テルは痛くはないが、さすがにいきなり叩かれたのでは声を荒げる。


「何すんだよ!」

「あんた……まさか乞食したとかじゃないわよね!?」

「そんな意地の無い真似するかよ!ダークエルフの姉ちゃんが蜂蜜が多くて食いきれねぇってぼやいてたからもらったんだよ!」


 テルがそう声を上げると、インディはそのダークエルフの方を見る。すると、そのダークエルフはハスキーな声でつぶやく。


「あぁ……依頼の報酬で貰ったんだが、俺は甘いの駄目でな。捨てるのも勿体ないし、貰ってくれて助かった。」

「はぁ……それならよかった。テル、あんたお礼言った?」

「言ったぜ、普通に。蜂蜜もらえたんだから。」

「……あぁでも一つ訂正しておく。」


 すると、そのダークエルフは不意に口を開いた。


「俺は姉ちゃんではない……どちらかと言えば兄ちゃんだ。」

「男!?」

「……!?」


 メイド服……しかもミニスカの物ををきた男性……その事実に、インディだけでなくテルも頭にはてなマークを浮かべる。


「あぁ、肉体から精神まで男だ。」

「えっ……なんでメイド服?」

「趣味だ。」

「趣味ぃ!?」


 またキャラの濃い人間だと、インディは頭を抱える……すると、ふと受付嬢の言っていた鎧熊退治の仲間について思い出す。


 たしか一人は……グラップラーのダークエルフ……そう言えば、名前は聞きそびれてしまった。


「……えっと貴方、もしかして鎧熊退治請け負ったりしてる?」

「あぁ、冒険者としてギルドから依頼がな……人が集まるまで待ってほしいと言っていたが……それを態々聞くという事は、お前が?」

「そう……なるわね。」

「?何の話だ?」

「テルは後で説明するから黙ってて。」

「……?」


 インディにそう言われて唖然とするテル。インディはこんなキャラの濃い女……じゃなくて、男と行動をともにするのかと頭を抱えた。


 すると、突然インディとダークエルフの間に入る小柄で根暗そうな少女がいた。


「あのっ」

「うっわ!?」

「っ!?」

「うおっ!?」


 その少女は黒色の頭巾のようなものを被っており、胸には布に巻かれた筒のようなものを持っている。


 胸と言えば、その少女の胸はかなり豊満で……身長だけなら150cmないと言うのに、そのサイズはインディよりも一目で大きいとわかるくらいのサイズだ。


「ひっ、お……驚かせちゃいました?ごめんなさい!」

「いや、こちらこそすまん……」

「その……気づかなかったの……ごめんね?」

「いえ、私影薄いので……」


 影が薄いと言うかそんなレベルじゃなく。本当に気づかなかったのだが……テルの野生の勘ですら気づかなかったほどだ。


「あの……鎧熊の退治……その……私も……受け、てて……」

「あぁ、貴方が……そう。」


 思わず魔機使いと言う単語が出そうになったが……あまり大きな声で言うものでもないと、インディは口をつむぐ。事の次第を全く把握していないテルは只管に首を傾げる。


「えっと……取り敢えず自己紹介からするべきかしら。私はインディ・ケルタ、よろしくね。ほら、テルも。」

「……?お、おう……テルだ。性はねぇ、ただのテルだ。」


 すると、根暗そうな少女とメイド服の女装ダークエルフが声を上げる。


「えっと……飛鳥馬、じゃなくて……ユナです。ユナ・アスマ。」

「アローカ・バトルホッパーだ。武闘家をやらせてもらっている。」


 これが、後に苦楽を共にする事になる仲間とのファーストコンタクトだった。

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