第70話 仕事の効率化
店に向かう途中で妹にも声を掛け、皆でリバーさんの所でご飯を食べました。
めでたしめでたし。
で、終われば良かったのだが。
「固定パーティが組みたい、ねぇ」
「駄目、だろうか?」
食事も終わり、皆でのんびりし始めた頃。
思い切ってランブルをパーティに誘ってみた結果。
物凄く渋い……というか、腑に落ちない顔をされてしまった。
なんだかソロに拘っているみたいだし、やはり誰かと組む気はないのだろうか?
でも模擬戦では本人も楽しそうにしていたし、実際に凄く強かった。
パーティを組んで共に高め合えるというのは、とても良い事に思えるのだが。
「あぁ~そうだな。正直ソロって肩書きは、一人で何でもできるって意味で結構注目を浴びる訳だ。だから俺は、ある意味“目立つ為”にソロでやって来た。その方が割りの良い仕事が貰えるからだ」
「それは、確かにそうかもしれないが……」
「だが、暴風。アンタとなら組むのも悪くねぇ、正直そう思うのも確かだ」
「じゃ、じゃぁ!」
「落ち着け、最後まで話を聞いてくれや」
ガタッと席を立ちあがる俺に、掌を向けて制止を掛けるランブル。
今の話だとこのまま組んでくれそうな発言だというのに、いったい何をそこまで渋っているのか。
今一度席に腰を下ろしてから、次の言葉を待ってみると。
「正直言うぞ? 今のままだと、あんまりウマミがねぇ。というかギルドとしても、俺等が組むのは微妙なんじゃねぇか?」
「え?」
彼の発言の意味があまり理解出来ず、思わずリーシェさんの方を振り返ってしまったが。
彼女は、少々困った様な笑みを浮かべながら。
「まぁ~個人的には、ダージュさんの目的を叶えてあげたいっていう気持ちは強いんですけど。しかし、ギルド職員としてはそうですね……お仕事的な意味では、二人が別々に動いてくれた方が、その……助かるのは確かです」
そこまで言われてから、ランブルの発言の意味を理解した。
現状俺は、“残った仕事”の処理を多く担当している。
そしてここ最近、俺と同じ様な事をしていたというのが……ランブルだったらしい。
つまりソロでも対応出来るのであれば、ギルドとしては二手に分かれてより多く仕事をこなして欲しい。というのが正直な所なのだろう。
理解は出来る、出来るのだが……。
「いや、でも……その」
「デケェ仕事をやる時に一緒に組む、それなら分かるぜ? だがパーティってのは、普通助けあうのが目的。というか、一人じゃ対処出来ねぇから他の奴らと組むってのが常だ。でも火力が足りねぇ訳でもないんだろ? 俺等が組んでも、正面火力が上がるだけだぜ?」
もう、心が痛い。
確かにね、ホントその通りだ。
俺とランブルで組んで、いったい何を相手にするというのか。
また特大の敵をすぐに相手する訳じゃないし、巨像程度の相手なら俺一人でもなんとかなる。
そこらの小物相手に物理特化が二人になったところで、殲滅速度が少し上がる程度だろう。
だが二手に分かれて仕事をこなせば、その分多く依頼がこなせる。
分かっては……いるんですけどね。
「……」
何かこう、それらしい事でも言おうとしたが。
俺達が常に組むメリット、確かに何も無いかも。
ただ単純に固定パーティが組みたいっていう願望を叶えられる、仕事中お喋りする人が居る。
本当にその程度だ。
仕事である以上、そんな事ばかり優先させていく訳にはいかないので……諦める他、ないのだろう。
ガクッと項垂れてみれば、リーシェさんと妹が左右からポンポンと肩を叩いて慰めてくれるが。
哀しい、とても悲しい。
「ま、まぁでも! ホラ、アレですよ! 今度大きな仕事を受ける時は、二人で一緒に出れば良いじゃないですか! い、いやぁ私もダージュさんとランブルさんが組んでる所みたいなぁ! ア、アハハ……」
「な、何か凄いなお前等……暴風へのフォローが厚すぎないか?」
フィアまでそんな事を言って慰めてくれたが、ランブルは若干呆れ顔。
彼女の言う通り、大物を狩る様な時には組んでくれるのかもしれない。
しかし普段からそんな相手がポンポン現れる訳ではないので……今回もまた、固定パーティはお預けの様だ。
と、思ったのだが。
「ダ、ダンジョン! ダンジョンなら、俺達が組んでも! その、不思議は、ない!」
コレだ! と思い付いて発言してみたが。
彼は溜息をつき、リーシェさんの笑顔がピシッと凍り付いた。
「あのな、それだって“たまに”だろ? ダンジョンアタックを繰り返す冒険者に、今後方向転換すんのか? 戦い方から生き方までガラっと変わる上に、担当受付嬢も変わるが……それは良いのか? 依頼する仕事内容が全く違うんだから、当たり前だよな」
「ダージュさん……そんな事を言われてしまうと、私は悲しいです」
ごめんなさい、やっぱり無しの方針で。
※※※
「中々うまくいかないものだなぁ……」
「そんなモノですよ、兄さん」
家に帰って来てから、妹と二人テーブルを囲んでいた。
ワイワイと賑やかな食事を楽しんだまでは良かったのだが、最後の最後で俺が落ち込み、皆が気を使う様な雰囲気を作ってしまった。
反省。
「しかしあのランブルという槍使い、強かったですか? 模擬戦をしたんですよね?」
「あぁ、そりゃもう強かった。対人戦で、久し振りに本気を出したよ。それに相手も、“英雄の武器”を保有しているらしい」
「それはまた……なんかシスターが来てから、ポンポン出てきますね。そういった武具の数々が。こう、何と言うか……そういう物は引かれ合ったりするのでしょうか?」
「それは流石に無いと思うけど……単純に偶然だろう」
などと言いつつも、確かに最近増えて来たな。
この街だけでも俺とシスター、そしてランブル。
三人もそういう武器の保有者が居るのだ。
というか、そう言えば二人の武器を直接見た事が無いな。
もしかして、人前でぽこぽこ“光の剣”を使う俺の方が異例なのだろうか?
とはいえ、あの剣それ以外に使い道ないしな……。
「今後シスターが教会を辞められたら、一声掛けただけでも組んでくれそうな気もしますけどね」
「確かに。でもシスターがシスターを辞めるって、あんまり想像つかないな」
「私達の呼び方のせいなんですけど……発言がえらい事になってますね、兄さん」
まぁ何はともあれ、今回も固定パーティの話は無くなった。
緊急依頼とか、大物退治なら協力してくれると言ってくれたから、悪い結果ではないのだが。
そっかぁ、効率かぁ……。
確かにその辺、あまり考えずに仲間が欲しいって言い続けていたな。
本来であれば生き残る為に、何かを成し遂げる為にパーティを組むものだもんな。
ソロで問題無いのであれば、それに越したことはないって事なのだろうが。
ずっと一人だったから、そういう事をあまり考えた事が無かった。
「ん、あれ? ちょっと待った。その場合って、ミーシャがちゃんと冒険者稼業を始めても……俺と組むのは、ギルドとしてはあまり良い顔をしないのか?」
「あぁ~えぇと、そう……かもしれませんね、まぁ組みますけど。けど最初は私の“お守り”として認めてくれる可能性はあります。慣れて来た頃には……実力証明の為他の方と、とは言われるかもしれませんが」
あれ? もしかして俺って……ミーシャが本格的に冒険者を始めても、固定パーティ組むの……しばらく無理?
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