第15話 チームの再結集

由美は次のステップに向けて、再びオフィスでのミーティングに挑むこととなった。現地市場での試飲会を通して得られた手応えがあったものの、それだけでは足りない。もっと大きな市場に浸透させるためには、現地のリーダーやチーム全体としっかり連携し、新たな戦略を立てる必要があった。


「本日は、試飲会の結果を基に、今後の戦略を再調整するための会議です。」由美は会議室のテーブルに立ち、集まった現地チームのメンバーと日本本社のリモート参加メンバーに向けて話を始めた。


「まず、現地フレーバーに関しては、消費者から非常に好意的な反応を得ました。これを基に、より幅広いマーケティングキャンペーンを展開し、消費者への浸透を図るべきだと考えます。」


スクリーンには現地での試飲会の映像が映し出され、消費者たちが紅茶を手に取り、味を確かめる様子が映し出される。映像を見ながら、リチャードが補足説明を入れた。「そうですね、特に若年層を中心にフレーバーの評価が高く、SNSでも徐々に話題が広がっています。これを利用して、インフルエンサーとのコラボレーションも考えています。」


由美は頷きながら次の議題に移った。「一方、プレミアムラインについては、意見が分かれました。しかし、私たちはこれを諦めるつもりはありません。このラインが『午後の紅茶』のブランドの核であり、長い歴史を持つ味わいだからこそ、しっかりとその魅力を伝える方法を模索する必要があります。」


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リチャードは静かに頷いた後、口を開いた。「確かにプレミアムラインの評価は厳しい面もありましたが、全体のフィードバックを整理すると、特定の層には非常に強く刺さっているのも事実です。特に、グルメ志向の強い層や、他国の文化に興味を持つ消費者には響いています。彼らに向けたアプローチを強化するべきかもしれません。」


由美はその言葉を受け、即座に反応した。「そうです。私たちは消費者のニーズを無視せず、同時にブランドの核を守る方法を見つけなければなりません。そこで提案です。プレミアムラインの試飲会をもう一度、よりグルメ志向の消費者をターゲットにした特別なイベントとして開催してはどうでしょうか?高級感のある空間で、紅茶の歴史や文化を深く知ってもらう機会を提供します。」


会議室の空気が一瞬変わり、全員が彼女の提案に興味を示した。


「面白い提案だ。」リチャードが再び言葉を発した。「高級志向の消費者にアプローチするには、確かにそれが一つの突破口になるかもしれない。特に、現地では食文化や飲み物にこだわりを持つ層が増えてきている。彼らに直接訴えかけることで、ブランドのプレミアムラインを定着させることができるだろう。」


他のメンバーも少しずつ賛同の声を上げ始め、由美の提案は大きな前進を遂げた。


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ミーティング終了後、由美は深い呼吸をついた。確実に前進している感覚があった。しかし、まだ全ての問題が解決したわけではない。彼女の胸には、成功の喜びと共にさらなるプレッシャーが渦巻いていた。


「次のイベントが鍵になる。」由美は小さな声で自分にそう言い聞かせ、再び計画を練り始めた。現地市場にブランドを浸透させるためには、この高級志向のイベントを成功させなければならない。それが次なる目標だった。


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由美は、ついに計画した高級志向の試飲会を開催する日を迎えた。会場は現地の一流ホテルの豪華なラウンジに設定されていた。由美の目の前には、特別に用意されたテーブルが並び、「午後の紅茶」のプレミアムラインが美しくディスプレイされている。リチャードや現地チームも準備に奔走し、今日の成功を確信していた。


「ここで成功させれば、現地でのブランド定着も一気に進む…。」由美は自分に言い聞かせながら、最後の確認を行った。


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会場には、現地の高級志向の消費者や、インフルエンサー、グルメ雑誌の編集者たちが集まり始めていた。由美はホストとして彼ら一人一人に挨拶をしながら、「午後の紅茶」に込められた物語や日本の伝統を伝える機会を大切にしていた。


「こちらの紅茶は、日本で長い間愛されてきた特別なブレンドです。豊かな香りと深みのある味わいを、ぜひ体験してください。」

由美は丁寧に説明し、消費者が紅茶を口にする瞬間を静かに見守った。


一人のインフルエンサーがカップを手に取り、ゆっくりと一口飲んだ。「これは…素晴らしいわ。味に奥行きがある。こういう紅茶は今まで飲んだことがない。」


その言葉に周りの消費者たちも興味を持ち始めた。次々と紅茶を試飲し、少しずつ会場の雰囲気が盛り上がっていく。


「プレミアムラインも、しっかりと現地の消費者に受け入れられている…」由美は心の中で喜びを感じつつ、次のステップを考え始めていた。


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しかし、成功の裏には新たな課題が待っていた。イベントが終わり、片付けが始まったころ、リチャードが由美に近づいてきた。


「試飲会は成功だったが、これで終わりじゃない。継続的にブランドを成長させるためには、もっと大きなアプローチが必要だ。現地での販路拡大や、さらに広範な広告キャンペーンを打たないと、今の勢いがすぐに消えてしまうかもしれない。」


由美はリチャードの指摘に頷いた。確かに、試飲会での成功は大きな一歩だが、それだけで現地市場を攻略できるわけではない。彼女の胸には、新たなプレッシャーが生まれていた。


「次のステップは、どう動くかが本当に重要になるわね。」由美は自分に言い聞かせた。試飲会で得た手応えを生かし、次にどう進むべきかをすぐに考え始めた。時間は限られているが、ブランドの未来は彼女の手の中にある。

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