柿本教授の手記2
喰ひに関して その二
七月一六日から二一日まで、何の収穫も無し。トレイルカメラを複数仕掛けたが、鹿とフクロウしか映らない。園内の土を調べてもみたが、未知の糞や足跡は無かった。
女の子達が飽き始めた。私より西沢さんが焦って、近くの渓流に釣りに誘ったり、山菜採りを勧めたりしている。そういうことをすると、よけい彼女達の興味が『喰ひ』からそれると思うのだが。
ここ数日で猛暑が少し落ち着き、来園客が増えてきた。他県ナンバーの車が多い。自然を満喫するにはいい場所だが、園内のスピーカーから流れる流行曲のオルゴールが耳障りだ。
せっかく鳥や虫が鳴いてるのに、台無しだ。文化祭気分の老人が音頭を取るから、こういう無様な公園になる。イライラしてきた。水遊びをする子どもの声が猿の鳴き声に聞こえる。
議員の息子の頼みを聞いておけば、何かいいことがあるかもしれない。そういう気持ちも今回の動機にはあった。
あのハクビシンの死骸、よもや西沢の自作自演じゃあるまいな。
精神がささくれるのを止めるため、酒以外の何かが必要だった。買い出しと称して車を出し、少し大きな街に行った。楽しんだ後、安い温泉施設に寄る。女は勘が鋭いから厄介だ。長湯して帰った。
結局、進展は無い。
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