#058
――レジーナら連合国の上層部が部屋を出た後。
ノピアはスカーフと軍服の上着を脱いで、用意してもらっていたジャケットを羽織る。
「傲慢な連中だったな。自分たちが書いた脚本が、そのまま舞台上で
軽口を叩くノピア。
彼の周りにいたストリング帝国の将校や兵たちは、その言葉を聞いて笑っている。
「そのことに気がづきもせん。さながら道化役者もいいところだな」
ノピアが部下を和ませるように冗談を口にすると、彼は早速パロットたち上層部から購入した約束のもののことを話し始めた。
その約束のものとは――。
ムーグツーでの戦闘で全滅した――連合国の主力部隊ベクトルが所有していた巨大光学兵器である。
帝国はこの兵器を欲しがった理由を、使用されている半導体や原子炉が目的だからだと答えた。
しかし、本当は違う。
ノピアはこの巨大光学兵器――ビーム砲を使ってあることをしようとしていたのだ。
だが、上層部もそこまで馬鹿ではない。
譲り渡した光学兵器には莫大なエネルギーが必要であり、とてもじゃないが正規の領土を持たない今の帝国では、その出力の半分も貯めることができないと踏んでいる。
パロットたち上層部は、仮に帝国が攻撃目的で巨大光学兵器を使用しようとも、その威力がスペースバトルシップの主砲と変わらないことをわかっているのだ。
だからこそ、今回の和平交渉が実現できたと言える。
上層部からすれば、これで街に現れた獣が大人しくなるくらいにしか思っていなかった。
それでもノピアは、彼ら彼女らは何もわかっていないと思い、先ほどの冗談のような苦言を吐いたのだった。
ノピアは目の前にあるテーブルを眺める。
テーブルの上には、連合国側がこの会合のために用意した豪華な料理があった。
帝国側の料理は残さず食べられていたが。
連合国の上層部たちはほとんど食べ残しており、ノピアはその皿を見て巻いてもないスカーフの位置を直そうとする。
だが、ノピアは気が付く。
連合国側でただ一人――出された料理が残っていない皿があることに。
「この席にいたのは……たしかレジーナ・オルゴーだったか。彼女は他の連中とは違うようだな」
独り言を呟いたノピアは、テーブルの前から窓のほうへ移動する。
そして、空を眺めながら内心で思う。
(アン……。私もまた、奴らと同じ道化を演じている。もしまだお前が人を、世界を信じているのなら……私の前に出てきてみろ)
それからノピアは、将校や兵たちに巨大光学兵器の運搬を指示すると、この国の宇宙行きのシャトルがある施設へと向かった。
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