#046
それから子供たちが起きてきて、皆で朝食を取る。
その食事中、子供たちに普段通りに接するミントだったが、ブレシングに対しては露骨に冷たい態度を取っていた。
だがブレシングはもう諦めたのか、肩を落としながらスープを口にしている。
「ブレシング兄ちゃん、なんか元気ないね?」
「ホントだよ、何かあったの?」
そんなブレシングに向かって子供たちが無邪気に訊ねると、彼は乾いた笑みを浮かべてなんでもないと答えた。
男の子たちは何故ブレシングが元気がないかわからないでいたが。
女の子らはそれとなく察したようで、クスクスと笑っている。
きっとミントの態度から理解したのだろう。
その様子を見ていたアンは、やはりこういうことは女子のほうが敏感だと内心で思っていた。
食事を終えた後は、日課である勉強の時間だ。
学校へと通っていない子供たちのために、アンが皆に読み書きや計算の仕方、この世界の歴史などを教えている。
教室の代わりにしている別の丸太小屋へと移動し、子供たちは今どきめずらしい手書きのノートと紙の教科書を開く。
「みんな近いうちに学校に通えるようになるからな。街で恥をかかないようにしっかりと覚えるんだぞ。わからないことがあればすぐに訊くように」
子供たちは「は~い」と素直にアンの言うことを聞いていた。
どうやら子供たちは皆、勉強が嫌いではなさそうだ。
アンの教え方が良いのか、それとも何もないここでは娯楽くらいの感覚なのだろうか。
皆楽しそうに、鉛筆を手に取ってアンの話に耳を傾けている。
ミントとブレシングも一緒に、アンの授業を受けていた。
当然ミントは読み書きも計算もでき、学校で習うような歴史も知っている。
ブレシングのほうは、以前にアンから同じ内容のことを習っている。
そのせいか、二人とも畑仕事しているときよりも退屈そうだ。
「じゃあ、ブレシング。この問題を解いてみろ」
「えッ!? なんで僕がッ!?」
「いいからやるんだ」
子供が習うような内容だ。
ブレシングにとっては簡単な計算だったが、アンは強引に彼に問題を答えさせていた。
しかし、子供から見ればやはり凄いことなのか。
皆がブレシングを
「スゴイやブレシング兄ちゃん!」
「さすが兵隊さんだッ!」
「いや、兵隊は関係ないから……」
褒められても嬉しくなさそうなブレシング。
しかし、子供たちは彼のことなど気にせずに褒め続けていた。
それを見ていたミントは、つい笑ってしまっていた。
そして、隣にいる立ち上がっていたブレシングに声をかける。
「素直に喜んだらどうですか?」
「こんなことで喜べないだろう。あんな簡単な問題、できて当然なんだから」
「でもあの子たちから見れば十分すごいんだから、見本をみせてあげたと思えば、少しは喜んでもいいんじゃない?」
「そこは、そうかもね」
ブレシングは、いつの間にか不機嫌じゃなくなっているミントを見て、女という生き物はよくわからないと思った。
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