#027

銃剣タイプのインストガンの銃口を向けて言うアン。


わずか一瞬の間で血塗れにされたリョウガは地面に屈し、呻きながら彼女のことを見上げている。


「強い……。これがアン·テネシーグレッチ……」


その様子を見ていたミントは、アンのあまりの強さに驚愕していた。


彼女の相手は雑兵ぞうひょうではない。


マシーナリーウイルスの力を持ったストリング帝国の准士官だ。


階級がそれほど高くないとはいえ、曲がりなりにも特殊能力者。


先ほどはその力でブレシングを圧倒していたというのに、アンからすればこうも簡単に倒せてしまうものなのか。


「これが世界で唯一のマシーナリーウイルスに適合した人の力なの……?」


ミントが驚いていると、突然閃光がアンに向かって放たれた。


アンはこれを避けると、光が飛んできた方向へ視線をやる。


「まだ帝国兵がいたのか……。うん? あれはノピアかッ!?」


アンはそう言うと、その無表情を歪めた。


そして、背負っていたジェットパックを起動させ、ミントに向かって言う。


「下がっていてくれ。今度は派手な戦闘になる」


「今ノピアって言いました?」


「いいからブレシングを連れて下がっていろ。巻き込まれるぞ」


そして、アンは推進剤を噴出して空へと飛び上がっていく。


彼女が上がっていった空中の先には、リョウガと同じ深い青色の服――帝国の軍服姿にスカーフを巻いた男が浮いていた。


それはアンの言う通り、このスペースコロニーであるムーグツーを襲撃した帝国軍を指揮するノピアラシックだ。


「くッ!? 将軍が来たのかッ!?」


リョウガはアンの後を追おうと、なんとかその場から立ち上がった。


血塗れとなった姿のわりには傷は大したことはなさそうだったが、それでも出血は酷い。


しかし彼は痛みを堪え、ジェットパックを起動させてアンの後を追う。


「お前だったのか……。これは一体何の真似だ、ノピアッ!」


デジタル音声のように――。


これまで抑揚よくようのない声で話していたはずのアンが、感情的になって叫んだ。


怒鳴られたノピアはフンッと鼻を鳴らすと、首に巻いているスカーフの位置を手で直し始める。


「連合国は地球を食い潰し、そのうえこれから宇宙そらまで手に入れようとしてるのだ。それを放っておけるか。私はお前のような傍観者ではないのだからな」


「それがお前のやり方かッ!? メディスンから聞いているぞ。お前はできる限り武力行使を避けていたと……。お前は……平和的に世界を救おうとしていたんじゃなかったのかッ!? それが今さらなんでこんな真似をするんだッ!?」


「お前に何がわかる! これまで世界ために死んでいった者たちの無念が、今の私を突き動かしているんだ!」


互いに声を張り上げ合ったアンとノピアは、それからそれぞれの持つ武器をぶつけ合った。

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