#026

アンはリョウガの前に立つと、その口を開く。


「その軍服、お前はストリング帝国の者だな」


「初めましてっとこか。オレはストリング帝国軍の准尉、リョウガ·ワスプホーネット。あんたがあのアン·テネシーグレッチだな? 伝説の適合者と会えて嬉しいよ」


「お前の名前など訊いていないぞ。そんなことはどうでもいい。それよりも、誰が帝国軍を指揮をしている?」


「つれないねぇ。まあいいや」


リョウガはそう答えると、背負っていたジェットパックからRELAY-Gを放出した。


だが、彼の周囲に浮いた二つの円形ユニットを見ても、アンは表情一つ変えていなかった。


そんな彼女の態度が気に入らないのか。


リョウガは笑みを浮かべながらも苛立つ。


「あんた、これがなんなのか気にならないのか? マシーナリーウイルスの力を持つ者の新兵器だぞ、こいつは?」


「だからどうでもいいんだよ、そんなことは。それよりも私の質問に答えろ。お前たちの指揮官は誰だ?」


「知りたいならオレを屈服させてみろよ。オリジナルの適合者さんよぉ」


リョウガはそう言うと光剣――ピックアップブレードの光の刃をアンへと向けた。


そして空いているほうの手を突き出し、クイクイと手招きしている。


わかりやすい挑発だ。


「そうか、なら身体に訊くしかないな」


その言葉が合図となり、アンが踏み込む。


銃剣タイプのインストガンを構え、一瞬でリョウガとの距離を詰めた。


(なッ!? 速いッ!? ジェットパックも使ってないのにッ!?)


アンはたじろいているリョウガに向かって銃剣を突き刺す。


リョウガはこれをなんとか防ぎ、円形ユニット――RELAY-Gを操作。


アンの左右から勢いよく回転した二つのユニット、彼女にが襲い掛かる。


「いくらオリジナルだからって、進化したオレの力に勝てるもんかッ!」


「オリジナル、オリジナルってうるさい奴だな」


だが、アンは目の前のリョウガを蹴り飛ばし、左右から向かって来ていたRELAY-Gを銃剣で弾き飛ばした。


そして、間合いが開くとインストガンで電磁波を連射。


正面にいるリョウガと、弾き飛ばしたRELAY-Gをさらに遠ざける。


「くそッ!? まだまだッ!」


ブレードを振り上げ、今度はリョウガのほうから飛び込んでくる。


リョウガは自分が飛び掛かるのと同時に、RELAY-Gを操作していた。


彼の直線的な攻撃と不規則に動く二つの円形ユニットによるオールレンジ攻撃。


全方位から襲ってくる斬撃の嵐である。


先ほどブレシングを苦しめた戦法だ。


しかし、アンはこれを冷静に対処。


まずは向かってきたRELAY-Gの一つを電磁波で弾き飛ばし、続いて機械の右腕でもう一つを吹き飛ばす。


そして、目の前から斬り掛かってきていたリョウガには、ブレードを避けながらその腹部に膝蹴りを叩き込んだ。


「ぐはッ!?」


「悪くない戦法だ……。だが、武器に頼り過ぎだな。もっと体幹たいかんを鍛えたほうがいいぞ」


そこからさらにアンは攻撃を繰り出した。


銃剣での突きがマシンガンのように放たれ、リョウガの手足、胴体を突き刺していく。


「でないと、こういう結果になる」


それからトドメとばかりに、その顔面に回し蹴りを喰らわせた。


吹き飛んで地面に倒れたリョウガを見下ろし、アンがその無表情で口を開く。


「さあ、もう十分だろう。さっさと話してもらおうか」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る