#024
突然目の前には現れたミントを見て、リョウガは戸惑った。
この緑髪の少女は明らかに民間人だ。
先ほど彼女が言った台詞も、連合国軍の敗北からだと思っていたが、どうやら様子が違う。
そして何よりもリョウガを困惑させたのは、ミントが満身創痍のブレシングを守るように自分の前に立ったことだった。
最初は
「あんた、ミント·エンチャンテッドって言ったっけ?」
「はい」
「エンチャンテッドっていえば、連合国の上層部の一人だったよな。あんたは……そいつと何か関係があるのか?」
「私はパロット·エンチャンテッドの娘です。ここまで聞いてどうです? 少しはあなたの主のもとへ連れていってくれる気になりましたか?」
「そいつが本当なら、上の連中は喜びそうだが……」
リョウガは迷っていた。
それはミントを連れていくかどうかいう話ではない。
彼はミントと対面し、ブレシングから感じ取ったものと同じ感覚を味わっていた。
それはマシーナリーウイルスによる力――。
特殊な人間同士の意思の疎通を
(なんだこの女は? ブレシングの奴もだったが……。こうも立て続けにくるこの感覚……。オレのP-LINKはおかしくなっちまったのか?)
戸惑うリョウガに、ミントは自分の手を差し出す。
「さあ、早く私をあなたの主のもとへ」
「ダメだッ!」
そんな彼女を止めたのは、満身創痍のブレシングだった。
ブレシングはフラフラと歩きながら、彼女を強引に自分の後ろへと追いやる。
「何を考えてるかわからないけど、そんなことはさせない」
「あなたは……ッ! そんな身体でまだ戦うつもりですかッ!? いいからもう私の邪魔をしないでくださいッ!」
リョウガの目の前では、先ほどの光景が始まっていた。
ブレシングとミントの言い争い――。
互いが納得などしない非生産的な言葉のぶつけ合いだ
「ハハハ。お前ら、面白いな――ッ!?」
そのとき、リョウガはとてつもない重圧を感じた。
目の前にいる二人からではない。
こちらに近づいてくるプレッシャーを。
(なんだこの感覚はッ!? こんなの……まるで将軍並みじゃないかッ!?)
そして、リョウガは重圧を感じる方向へ視線をやると、そこには一人の女性が立っていた。
ボロボロのワイシャツにジーンズを穿いたみすぼらしい格好――。
ナチュラルブラウンのボブスタイルの髪型――。
どこにでもいそうな貧民層の出で立ちの人物だったが、リョウガには女性が誰かすぐにわかった。
「アン……アン・テネシーグレッチッ!?」
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