#023
二つの円形ユニットは上下左右から不規則にブレシングを切り裂こうと飛んで来る。
そして正面からは光の刃が突かれ、ブレシングは防戦一方どころか、その全身が少しずつ切り裂かれ始めていた。
なんとかギリギリ避けて防いでいるつもりでも、先ほどよりも勢いを増した斬撃の嵐に、これ以上もう持ちそうもない。
「どうしたブレシングッ! 来いよッ! 打ち返してして来いッ!」
ブレードと円形ユニットの攻撃だけでなく、リョウガはマシーナリーウイルスによる機械化――
これではいくらブレードの間合いを詰めようが、殴り飛ばされて距離を離される。
「クソッ!」
打つ手なし。
ブレシングは銃剣タイプのインストガンで強引にリョウガを後退させると、ミントのほうを一瞥する。
だが緑色の髪をした少女は、その場から動かずに先ほど出した治療キットでエヌエーに応急処置をしていた。
「まだ逃げていないのか……。なんなんだあの子はッ!」
苛立つブレシング。
だがそこには、頼りない足取りで立ち上がったニコの姿が見え、ブレシングは瀕死の電撃羊に向かって声を張り上げる。
「動けるかニコッ! その状態で悪いんだけど、その子とエヌエーを連れて逃げてくれッ!」
「おい、よそ見したな」
ブレシングがニコに声をかけた瞬間。
二つの円形ユニット――RELAY-Gが彼の手足をかすめた。
怯むブレシングのその手からはインストガンが放れて地上へと落下。
さらに前方からは、すでにブレードを振り上げているリョウガの姿があった。
「オレを無視して羊に声かけてる場合じゃないだろッ!」
ブレシングは態勢を動かし、ジェットパックをコントロールして避けようとした。
なんとか間に合い、光の刃が頬をかすめただけで済んだが、背後に回っていたRELAY-Gによって飛行装置を攻撃されてしまう。
「墜ちる、お前は墜ちるよ、ブレシングッ!」
リョウガが高笑う姿を見ながら、ブレシングは地上へと落下していく。
このままでは先ほどのエヌエーと同じになってしまうかと思いきや――。
ブレシングは損傷したジェットパックを背中から外すと、まだ推進材を吹いている飛行装置を両手で掴む。
落下中にも関わらず、その手際の良い動作でジェットパックにしがみつき、ある程度高度が落ちてから近くにあった建物の屋根に飛び転がった。
勢いのついた彼はそのまま屋根から落ち、側にあった木の枝を身を受けながら地面に叩きつけられる。
「おぉッ! 凄いぞブレシングッ! さすがはオレが何か感じた男だ!」
その様子を見ていたリョウガは、まるで水族館のイルカショーでも観た子供のように両手を叩き、地面で呻くブレシングを称賛。
そして、そのままブレシングが倒れているところまで降りてきた。
「だが、もう戦闘は続行できないみたいだな。残念だ。お前ともっと遊びたかったのによ」
顔を上げて目の前にはいるリョウガを睨むブレシングだったが、立ち上がろうにも身体が言うことを聞かない。
(僕は死ぬのか……? こんなところで、エヌエーさんもニコも、あの子のことも守れずに……? こんなんじゃ……なんであの人に憧れて軍に入ったのかわからないッ!)
ブレシングは立ち上がった。
自分に逆らう手足を無理矢理に従わせ、目の前に立つリョウガと向き合う。
リョウガはそんなブレシングを見て両目を見開いていた。
そして、再び笑みを浮かべるとその口を開く。
「まだやれるのか? マジで凄いよ、お前」
「僕は……人を守りたくて嫌いな軍人になったんだ……。このまま誰も守れずに死んでたまるかッ!」
とはいうものの――。
全身打撲となったブレシングに戦える力は残されていなかった。
気迫と言葉だけで敵を倒せるはずもなく、このままでは彼は、確実にリョウガに殺される。
だがそのときに、ブレシングとリョウガの間に一人の少女が割って入ってきた。
明るい緑色の髪をした少女――ミント·エンチャンテッドだ。
「これ以上の戦いは無意味です。さあ、ストリング帝国の准尉さん。私をあなたの主のもとへ」
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