第12話 それぞれの夜――高天原ヒカリ――
AmaTerasとしてアイドルデビューを果たしたその夜――ヒカリは真っ暗な
自室の中、ベッドの上で横になり、唯一の明かりとなっているスマホの画面を眺めて
いた。
「ここも……やっぱりそうだ……。次のところも私だけ少しリズムがずれてる……」
自分が今日立ったステージをアーカイブ配信で見直しながら呟く。繰り返し、繰り返
し見てはまた繰り返し、これで何度目の再生かも覚えていない。
「それに私、序盤はこんなに顔が強張っていたんだ……。自分では笑っていたつもり
なのに……」
見返すたびに次々と駄目だった部分が見つかる。逆に良かった部分など一つも見つか
らないというのに。
「これじゃ……最下位は当然だよね……。全部私が足を引っ張ったせいだ……」
結果発表で表示されたランキング。一番下にあったAmaTerasの文字を思い出
し、ヒカリはぎゅっと目をつむった。
AmaTeras 獲得総投票数1
呆然と見つめるしかなかったあの光景がずっと脳裏に焼き付いて頭から離れない。
いくら目をつむったところで突き付けられた現実は容赦なくヒカリを追い詰めて
きた。
たった一人にしか支持されなかった。それもこれも全て自分の実力が足りなかった
せいだ。
なのに最後は出しゃばって、アカネを怒らせてしまった。
ヨミがこのステージにどれほど賭けていたのかも知らず、台無しにしてしまった。
結果――ステージ後のAmaTerasはバラバラになってしまった……。
全部私のせいだ。私が、私が、私が私が私が私が私が私が私が私が私が――
懺悔と後悔の念にヒカリの心が染まった瞬間――
ドクンッ!
持病の発作が起きる前触れである心臓が大きく跳ねる衝動にヒカリは息を呑んだ。
そのまま呼吸がし辛くなり喉が詰まる感覚に襲われるが、ヒカリは慌てずヒュー……
ヒュー…と浅い呼吸を繰り返す。
数分ほどそれを繰り返した頃だろうか。徐々に息が戻り、再び肺まで酸素がしっかり
届き始めたことを確認できるようになると、なんとかやり過ごすことが出来たとヒカ
リは乱れた呼吸を整えるために安堵の息と共に何度も深呼吸を繰り返した。
(ナミお姉ちゃん……。アイドルになるのって、こんなにも辛くて……苦しいもの
だったんだね……)
今は暗闇に隠れて見えない写真立てがある方を見つめ胸中でナミに語りかけると、
ヒカリは意識を闇に奪われないように体を丸くして震える自分の体を強く抱きしめる
しかなかった。
【続く】
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