第6話 星の女神



朝。鶴川市内にある6階建てマンションの最上階、角部屋に表札を掲げる高天原邸。


その日もヒカリは日課として続けている早朝ジョギングを終え、シャワーを済ませて


から朝食の席に着く。


父親はすでに会社へと出勤しているので母親との二人きりでの食事だ。そういえば


最近はレッスンで帰りも遅く、家に着くなりすぐ眠ってしまうことが多くなったので


あまり話せていないなとヒカリは思いながら、トースターで焼けたばかりの食パンに


イチゴジャムを塗ってかじりついた。


「あっ、お母さん。テレビのチャンネル変えてもいい?」


「いいわよ。何か見たい番組でもあった?」


「うん。ちょっとね」


言葉を少しはぐらせてからリモコンでチャンネルを変えるヒカリ。


この時間は朝のニュース番組ばかりで基本的にどのチャンネルでも放送している内容


は似たり寄ったりであったが、事前にアキから聞かされていた時間に合わせてその


番組を選んだ。


そして、しばらくニュースキャスターが原稿を読みあげた後にCMに入り、それが


明けると――


「芸能ニュースチェック!本日の話題はまずこちらから!


今年で15年目の開催。フレッシュ アイドル フェスティバル、最後の出場者が


決定!」


立ったままでコーナーの進行を務める女性アナウンサーが画面の下側に表示された


テロップを読み上げると、過去のF.I.Fの映像へと切り替わる。


「フレッシュ アイドル フェスティバル。通称F.I.Fは毎年こどもの日に開催され


ている新人アイドルによる祭典で、出場できるのはデビューしてから2年以内の


アイドルのみ。


その予選となるネット投票で選ばれた上位20組と、特別枠1組からなる全21組の


中からNo.1新人アイドルを決める大会でもあります。


過去には山形スモモさんや松井ヒジリさん、伊座敷ナミさんといった後にトップスタ


ーへと昇りつめたアイドルはこぞってここで優勝しており、新人アイドルにとっての


登竜門としても有名な一大イベントなのです」


「あら、ナミちゃんじゃない。久しぶりにテレビで見たわねぇ」


「うん……」


過去の映像の中でも歴代の優勝者すらをも圧倒するほどのパフォーマンスを見せる


ナミの姿を複雑な気持ちと面持ちで見つめるヒカリ。


一方で母親はこれが見たかったのねと納得していると――


「そしてそのF.I.Fですが、昨夜、シークレットとされていた特別枠の出場者が


ついに公開されました。


今年の特別枠に選ばれたラッキーガールの名は――AmaTeras!」


中央にアキ手製の赤いステージ衣装を着たアカネ。その左に紫色のヨミ。右には緑色


のヒカリという配信動画の時と同じ立ち位置で撮った宣材写真がテレビの画面いっぱ


いに表示されると、母親はぽかーんと口を開けて右手に持っていた箸を落とした。


「ちょ、ちょっとヒカリちゃん!これヒカリちゃんじゃない!?ヒカリちゃんよ


ね!?」


箸を拾うことも忘れて興奮させた顔を向けてくる母親の言葉は止まらない。


「もぉ~!なんで黙ってたのよぉ~!テレビに出るって分かってたらこんなのんびり


朝ごはんなんて食べてなかったのに!カメラ!動画に撮ってお父さんに送らなく


ちゃ!!」


「こ、こういうのは家族に対しても守秘義務っていうのがあるの!あと恥ずかしいか


らそういうのやめてよぉ~!」


慌ててスマホを取りに行った母親を止めようとするが、ヒカリの静止の声などまった


く届かなかった。


幼い頃に入退院を繰り返さなければならないほど病弱な体に産んでしまったこと。


さらに入院中のヒカリが望んだ願いを叶えてあげられなかったことが両親にとって


負い目となっているらしく、娘が元気になった今でも――むしろ昔よりも一層、文字


通りヒカリが親の愛情で溺れ死ぬくらい溺愛するようになっていた。


その親馬鹿っぷりはすさまじく、授業参観となれば父は仕事を休み、当然のように母


と同伴出席。


運動会となれば父兄席の最前列で両親揃って身を乗り出しながらビデオカメラを


構え、声が裏返るほどの応援を送り、中学の時の文化祭で喫茶店をやった時などは


開場と同時に席の一角を独占し、一日中ヒカリの働きっぷりを飽きずに眺めている


ほどであった。


そんな目に余りまくるほどの親馬鹿っぷりが恥ずかしがった思春期の娘から学校行事


への出禁を言い渡されたこともあったが、父がショックのあまり三日三晩寝込む事態


になったので結局は取り消しとなった。


そして今日もスマホのカメラを鼻息荒くしながら構え、テレビに映る最愛の娘の姿を


撮り続ける母の姿があった。


まぁこの溺愛っぷりのおかげでヒカリが望むことは基本的になんでも叶えてくれるよ


うになり、Re:SETに入る時も慎重な態度を見せたものの反対はされず同意書にサイ


ンしてもらえたのだが。


ともあれこうなったら最早何を言っても無駄だと悟りを開いているヒカリはため息を


ついて諦めると、そちらはもう無視してテレビに集中することにした。


「こちらのAmaTerasは画面左から照月ヨミさん。大須佐アカネさん。高天原


ヒカリさんの三人で結成されたばかりのアイドルユニットで、中でも注目は天才子役


として一世を風靡し、現在も女優として活躍中の照月ヨミさん。


自身のSNSでは『由緒あるF.I.Fに出場できることは大変名誉なことであると


身が引き締まる想いであると共に、とても嬉しく思っています。役者としての幅を


広げるためにこの度アイドル活動を始めましたが、まだ日が浅く未熟な部分も多分に


あるかと思います。


ですが皆様のご期待に添えるよう努力してまいりますので、何卒AmaTerasを


よろしくお願いいたします』


と発言しており、これに対しネットでは、



【あの照月ヨミがアイドルになるってマジ!?】



【子役時代にイベントで歌ってたの生で見たことある!すごく可愛かった!】



【昔からのファンだからアイドルとしての彼女も応援したい!】



と大反響を呼んでおり、早くもF.I.Fの目玉となるのではと注目を集めています」


(わ……。こんなふうにテレビでも取り上げられるなんて、やっぱり照月さんって


凄い人なんだ)


改めてヨミの知名度にヒカリが感服していると、そこで画面がスタジオへと戻った。


「しかし注目されているのは彼女だけではありません。今日はなんと、予選の人気投


票で2位に大差をつけトップ通過した、今最も勢いのある彼女達にもスタジオに来て


いただいてます。


それではAstraeaアストライアーさん!こちらへどうぞ!」


進行役の女性アナウンサーに呼ばれ、アイドルらしからぬ黒をベースにした衣装を


着た三人の少女達が横一列になって歩み寄ってきた。


そして、予め決めてあったバミリの位置で立ち止まって自分達を映すカメラへと体を


正面に向けると、


「皆さん、おはようございます。私達――」


『Astraeaです♪』


三人の指で星の形を作る決めポーズと共に自己紹介をし、画面にはユニット名とそれ


ぞれの名前がテロップで表示された。


「お目覚めテレビをご覧の皆さんおはようございます。Astraea、リーダーの


羽雁はかりリサです」


画面右に映るショートカットの少女がまず視聴者への挨拶と自己紹介を行う。


それをヒカリは食事の手を止め、事前に調べておいた彼女達の情報と照らし合わせな


がら凝視していた。




――Astraea――




ギリシア神話に登場する【星の女神】の名に由来する三人組のアイドルユニット。


そのリーダーを務めるのが今、自己紹介をした少女。羽雁リサ――16歳。


アイドルとしては珍しいショートカットの髪型に加え、中性的で凛々しい顔立ちを


しているため男性のみならず同性のファンも多い。


「皆はん、おはようございます。星宮ほしみやアカリと申します。よろしゅうお願いしま


すぅ」


次に中央、ゆったりとした京都弁で自己紹介をする少女。その立ち位置が示す通り、


Astraeaのセンターであり、人気だけでなく実力もハイレベルな三人の中でも


突出したエースでもある星宮アカリ。16歳。


肩下まで伸びたサラサラな黒髪が白い透明感のある肌によく似合い、性格もはんなり


ほんわりとしている和風美人であるが、一度ステージに上がれば別人のように鋭く


キレのあるダンスパフォーマンスで見る者を男女問わず魅了する。


「みなさ~ん!おっはよ~ございま~すっ!Astraeaの麦原むぎはらマホで~す!


今日はマホ達の名前を是非覚えていって下さいね~♪」


そして最後は元気一杯な自己紹介をする画面左の少女。


ツーサイドアップに束ねた髪型とマッチした幼い顔立ちの通り、リサとアカリよりも


二つ年下の14歳。まだ現役の中学生である。


身長も一番低いことからもAstraeaの中では妹キャラ兼マスコットとして


ファンから愛されている。


――といったように、年齢や身長などAmaTerasにおけるヒカリと共通点が


多いマホであったが大きく異なる点が一箇所。


(え?なにその胸? え?確かこの子って私よりも一つ年下だからまだ中学生だよ


ね? え?え?中学生の大きさじゃないよねそれ。っていうかアカネさんより大きく


ない?もしかして衣装の下にスイカかメロンでも入れてるのかな?うんきっとそうだ


そうに違いない。いや~危なかった危うく騙されるところだったよあっはっはっ)


衣装の下から遠慮無用でアピールしている二つの超たわわに目を釘付けにされながら


現実逃避することで自らの小さな自尊心をなんとか守り切るヒカリ。


一度お気に入りのマグカップに入った麦茶を飲んで心を落ち着かせると、改めて


テレビの画面に目をやった。


「実はAstraeaにとってこれが東京のテレビ局初出演だそうですね?」


「はい、そうなんどす~。うちら大阪の芸能事務所やもんで、これまでの活動も


ずっと関西が中心やったんどすよ。


せやから今回こうして東京のテレビに出れるんはめっちゃ嬉しいどすわぁ」


なぁ、リサはん。マホはん。と二人へ振って、そのバトンを受け取ったリサが言葉を


続ける。


「ええ。今日はお招きいただき、本当にありがとうございます。


私達Astraeaが出場するF.I.Fは東京で開催されますので今回はこうして


遠征という形で来てますが、フェスの結果次第では今後の活動をこちらへ移す予定な


んです」


「なに言ってるんですかリサさん!マホ達Astraeaは無敵で最強なんですから


東京進出はもう決まっているようなものじゃないですか!」


「おっ、それはもしかして優勝宣言でしょうか?」


「い、いえ。今のはそういうわけじゃなくてですね……」


「はい!AstraeaはF.I.Fをぶっちぎりで優勝するつもりです!」


「ちょっとマホ!勝手なことを喋って後でマネージャーに怒られても知らないから


な!」


「まぁまぁ、ええやんかリサはん。どの出場者かて優勝するつもりで出るんやし、


うちらやってそうどすって言うとるだけやん。な~んも問題あらへんて」


そう言うとアカリとマホは「ね~?」と笑顔を向き合わせてハイタッチをした。


そしてリサだけが額に手を当て、「はぁ~~……」と大きなため息をつく。


どうやらリーダーはいつもこんなふうに自由奔放な二人に振り回されている苦労人の


ようだというのが画面越しから伝わってきて、お茶の間の笑いを誘った。


「さて、そんな仲良し三人組のAstraeaですが、去年の9月に発売された


デビューシングルがいきなり音楽配信3位という華々しいデビューを飾りました。


その後もライブを中心に活動を行い、新人離れしたパフォーマンスの高さが注目され


ると、瞬く間に大勢のファンを獲得する破竹の快進撃を続けてきました。


今では関西でAstraeaの名前を知らない人はいないと言われているそうです


ね?」


「いえ、さすがにそれは言い過ぎですよ。私なんて大阪の道を歩いていても誰にも


気づかれたりしませんし、ホントまだまだ頑張らくちゃと思っています」


「えっ?うち、寮の近くの商店街でよう買い物するんやけど、めっちゃ声かけられる


ようになったで?いつもテレビで見とるから頑張りや~って。


ほんでな、皆はんめっちゃおまけしてくれるんよ。もぉ~ほんまうち、あの商店街の


こと大好きやわぁ~」


「マホもこの前、知らないおばあさんからアメちゃんもらいました!」


「あ、あんた達……ここは謙虚に否定するって台本に書いてあったでしょうが……」


「せやかてリサはん。うち、嘘つくんは好きやないどすし。


リサはんかてこの前、オフの時に初めてサインを求められたってめっちゃ嬉しそうに


言うとったやん」


「あっ!マホはそのサインをあげた女の子のファンと一緒に撮ったスマホの写真を、


リサさんが一人でこっそりとにやにやしながら見てたのを目撃しました!」


「わーっ!わーーっっ!!バカ!そういうことをテレビで言うな!しかも生放送なん


だぞこれ!?」


顔を耳まで真っ赤にして両手をバタバタさせながら慌てるリサの姿がアップで映し出


される。


「す、すいません。なんか思いっきり脱線しちゃって……。あとでこの子達にはよく


言い聞かせておきますから……」


「いえいえ、こういうのも生放送の醍醐味ですし。それに飾らない皆さんのほうが


魅力的だと私は思いましたよ」


「そう言っていただけるとホント助かります……」


「ドンマイやで、リサはん♪」


「そうですドンマイですよ、リサさん!」


「あんた達がドンマイ言うな!ってか全部あんた達のせいでしょうが!」


笑いの本場仕込みのキレのあるツッコミをリサが炸裂させると、司会者は心からおか


しそうに笑う。


「では最後になってしまいましたが、F.I.Fの告知と意気込みをお願いします」


「あっ……は、はい」


リサは一つ咳払いをして心をリセットすると、すぐにAstraeaのリーダーと


しての顔に戻り、


「5月5日。武蔵の丸総合ホールで今年のナンバーワン新人アイドルを決める


フェレッシュ アイドル フェスティバルが開催されます。


入場チケットはすでに全て完売してしまっていますが、リアルタイムでの公式配信も


行われますので是非そちらからチケットをお求めください。


私達も人気投票で選んでくださったファンの皆様のご期待に応えられますよう精一杯


頑張りますので、応援のほどよろしくお願いします」


『よろしくお願いしま~す♪』


最後はアイドルらしく全員で可愛く両手を振り、


女性アナウンサーの「本日のゲスト、Astraeaさんでした。ありがとうござい


ました」という締めの言葉で番組はCMに入った。


(あの人達がAstraea……。幡豊さんがチェックしておきなさいって言って


た、若手の中で今一番勢いのあるアイドルグループ……)


すなわち同じアイドルである自分にとってはF.I.Fだけでなく、その後もライバル


となる存在だ。


だからこそアキは、まず目標となる敵を知れと彼女達が出演するテレビを見るように


勧めてきたのであろう。


(何よりAmaTerasと同じ三人組だし、年齢とかも似ている点が多いんだよ


ね。そういった意味でも参考にしなさいってことなんだろうけど……)


今、実際に見て感じたAstraeaとAmaTerasとのイメージを重ねて


みる。


しっかり者のリーダーであるリサはヨミ。


グループのセンターであるアカリはアカネ。


そして、年下の妹分であるマホは自分に。


イメージを重ねたまま、今見たテレビの内容通りのことをAmaTerasがやって


いたと想像し……まったく似合っていないどころか、ぐだぐだになった自分達の姿が


容易に思い浮かんだヒカリは「うわぁ……」と顔を引きつらせた。


メンバー同士の親密性。ト-ク力。アドリブ力。そして何より自然体が足りない。


司会者も言っていたが、ヒカリもAstraeaのトークを見て、飾らないありのま


まの自然体でいられることこそが彼女達の人気の理由なのだろうとヒカリは感じた。


かつて――伊座敷ナミもそうであったように。


(デビューしてまだ1年も経っていないって言ってたけど、私達も同じくらいの時間


を一緒に過ごせばあんなふうに分け隔てなく話せるようになるのかな……)


アカネと一緒にヨミをからかう自分をさらに想像して、「うん、私には無理だ」と


ヒカリは秒で諦めた。


(そ、そのまま同じことをしてもキャラ被りになるだけだしね!私達にはきっと


私達なりのキャラの立たせ方があるはずだし、参考はあくまで参考までに留めて


おかないとね!)


そして自身を強引に納得させていると、止まっていた朝食を再開しながら食卓の上に


置いておいたスマホを操作し、SNSのアプリを起動させた。


(わっ!AmaTeras公式アカウントのフォロワーがもの凄い勢いで増えて


る!)


間違いなく今の放送の効果であろう。昨夜、F.I.F公式が特別枠を発表したのと


同時に公開されたAmaTeras公式アカウントであったが、寝る前に確認した時


よりもフォワロー数は現在進行形で急増していた。


(照月さんとアカネさんが自分達のSNSと配信チャンネルでそれぞれ宣伝してくれ


たから、初動はほぼ期待値通りって幡豊さんは言ってたけど……)


これはもしかするとアキの予想を遥かに上回ったのではないだろうか。そうヒカリは


興奮を隠せぬまま、今度は配信チャンネルの方を確認してみると、こちらもやはり


チャンネル登録者が急増加していた。


(わー!わー!こっちも凄いことになってる!もしかして私、いきなり有名人に


なっちゃった!?通学中に声とかかけられたらどうしよう!?)


その光景を想像して、「うひ……うひぃひぃ……」と声と同じくらい顔をだらしなく


緩ませていると、不意に背後から母親が操作中のスマホを覗き込んできた。


「ちょ、ちょっとヒカリちゃん!そのAmaTerasって今テレビで言ってた


ヒカリちゃんのいるアイドルグループよね!?動画配信チャンネルなんてあった


の!?も~!どうして教えてくれないのよ!?これもお父さんに教えてあげなく


ちゃ!URL!その動画のURL教えてヒカリちゃん!!」


そして先程のテレビと同じように、というかむしろさらに高くなったテンションで


体を揺さぶられ、ヒカリは「はっ!?しまった!?」と我に返った。


「こ、これは恥ずかしいからダメ!絶対教えないんだから!」


「そんなこと言わないで!先っちょだけ!先っちょだけでいいからぁ~!!」


「なんの先っちょなのよぉ~~!!」


母親と自分のスマホを取り合っていると不意に音が鳴った。


ヒカリは力任せに母親の手からスマホを奪い返すと画面を覗き込む。


「イスズちゃんからだ。なんだろう?」


背後で「いいもん!自分で調べるもん!」と子供のような拗ねた声をあげている母親


を無視し、イスズから届いたメッセージを確認すると、




『ごめんヒカリちゃん!家を出るの遅くなっちゃったから先に学校行ってて!』




「どうしたんだろ?寝坊でもしたのかな?」


だとすれば決して時間にルーズではないイスズにしては珍しい。そう思いながら


【御意】と文字が書かれた武士のスタンプで返事したところでヒカリもあることに


気づいた。


「えっ!?もうこんな時間なの!?」


いつもならとっくにイスズが家まで迎えに来て一緒に登校している時間であった。


ヒカリは慌てて食べかけだった食パンを咥えると、スマホを鞄にしまい立ち上がる。


「学校行ってくるね!」


「はぁ~い、いってらっしゃ~い。車には気をつけるのよ~」


自分のスマホでAmaTerasの配信動画のことを調べながら、小学生の子供を


送り出すように言ってくる母親の声に、ヒカリは「は~い!」と返事をすると足早に


玄関に向かった。



【続く】

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