第5話 異世界から地下世界へ

■エグナシア島 第二十五番地下通路


 翌朝、朝食を食べ終えたあと、海岸沿いにある洞窟から僕とアモス、そして母様は地下通路へと入っていった。


「こんなところがあったなんて……昨日もここから僕らの小屋まで来たの?」

「はい、その通りです。通路は避難も考慮されており、50以上この島を網羅して配置されております」


 コンクリートでもなく、プラスチックのような光沢のある壁と床に母様は不思議そうにキョロキョロするだけである。

 小屋で待ってもらおうと思ったけれど、あの環境に長時間置いておくわけにはいかなかった。


「石でも、レンガでもないのね。地下だから土だと思ったけれどそうでもないのに……不思議ね」

「光っている変なものは触らないでね。母様」

 

 異世界人からみたらそうだろうけど、僕としてはSF映画とかで見たことあるような光景なので、すんなり受け入れられていた。

 看板等はあるものの、書いてある文字は読めず、矢印などの記号で分かる部分があるので助かっている。


「アモス、休憩室とかはないの?」

「そうですね。そろそろ到着いたします」


 そういってアモスが通路の角を曲がるとそこには僕らがいた小屋よりも大きな部屋があった。

 ソファやテーブルがあり、冷蔵の様なものまで見える。

 ファンタジー世界の感覚では異常なことだが、なじみのある光景に僕としては逆にほっとした。


「すごく柔らかいのね……いったいいくらするのかしら……」


 母様は天然なのか驚きはするものの騒がずに慣れてくれている。

 こういうときは説明が大変になるので助かった。


「アモス、薬はここにもあるの?」

「ここにはないですが、転送領域ではありますので倉庫より転送いたします」

「転送!?」


 僕が驚いていると、アモスが壁につけられている操作パネルを触って薬と、お菓子や飲み物を転送するように指示する。

 5分とたたずに部屋の隅にあった透明なチューブへ品物が届いた。

 部屋同士をつないでいるようで、天井をよく見ればチューブがいくつもあることに気づく。


「こういう便利なものがあるんだね……地上にもこれで物資を運べればいいんだけど……」

「施設を建設すればそれも可能です。あの小屋では健康に悪影響があり、外的の脅威もありますので移住を提案させていただきます」


 僕の疑問にアモスが丁寧に答えてくれたが、その表情は無表情で深い考えは読めない。

 ただ、冷静な分析による判断はロボメイドだから間違っていないような気がした。


「そこは母様と相談して決めようと思う。これが薬だね」


 僕は届けられたカプセル型のケースを開けて中から錠剤とパックのおかゆらしい物の写真のあるものを取り出した。

 ソファーでぽんぽんと軽く跳ねていた母様の方へ近づいていくと、母様は恥ずかしそうに顔を赤くして俯く。

 僕の今の年齢は5歳だけど、前世の年齢でいけば母様と同じくらいなので母様の姿はすごく可愛くて魅力的に見えた。


「母様、薬と食べ物だよ。元気になるみたいだから食べて?」

「あなたがいうなら、大丈夫かしらね?」


 母様は不安げな様子だったが、僕が上目遣いでしつこくお願いをしたことで大人しく食事と薬を飲んでソファーに寝転ぶ。

 少し休憩をして様子をみよう。

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