第6話 島と僕らの秘密
■エグナシア島 第五地下休憩室
「坊ちゃま、体温が低下しております。風邪をひかれますよ」
ゆさゆさとゆすられたことで僕は目が覚める。
ご飯も食べたこととソファーが柔らかかったことで、ついつい寝てしまったようだ。
口元からよだれが垂れているのかちょっと水っぽい感じがしたまま僕は目をこすってアモスをみる。
「アモス、母様の具合はどう?」
「はい、ルシア様を先ほどスキャンしましたが体の異常は確認できませんでした」
「よかったぁ……」
「んふぅ……アリ……オス?」
ソファーに寝ていた母様が目をゆっくりと開けて体を起こした。
顔色はとてもよく、元気になったのが一目でわかる。
切れ長の瞳が僕を見て、朱色の唇が微笑みを浮かべた。
今まで弱弱しかったから気付かなかったけど、僕の母様ってかなり美人?
血がつながっているとはいえ、その美貌にドキドキしてしまう。
「坊ちゃまの体温が急上昇しています、風邪をひかれたのでしょうか?」
「あらあら、それは大変ね! アモスさん、アリオスの具合を確認してもらえるかしら?」
「も、もう! 二人とも! 僕は大丈夫だよ! それで、母様も元気になったからこの島を制御している部屋に行きたいんだけどいいかな?」
体温が上昇しているのは僕でもわかる。
けれど、その理由をしられたくないので急いで僕は話題を変えた。
これだけ科学っぽいものが多いのであれば、制御室があるはず。
もし、僕の前世の知識ができるならばこの島を掌握できるんじゃないかなと考えたのだ。
「かしこまりました。では坊ちゃま、ルシア様こちらへ」
「私はもう少しここで休んでいるわ。まだ体がふわふわしているの」
アモスが僕らを案内しようとしたら、母様はソファーに座って待つといいだす。
ここで一人にするのはちょっと不安だ。
僕はアモスのスカートのすそを引っ張ってみあげる。
「母様を補助するアモスみたいなメイドはいないの?」
「かしこまりました。検索します……該当端末が確認できました。こちらに来るように伝達しましたので、私達は先に行きましょう」
アモスの目に光の線が走り、何かの通信を行ったのが分かる。
どういう仕組みなのかわからないけれど、機械工学を学んできた僕としては興味津々だ。
「じゃあ、母様いってきます!」
僕とアモスは休憩室を後にした。
■エグナシア島 地下制御室
アモスに案内されたたどり着いた部屋はアモスが耳からコネクターを出してロックを解除して入れない厳重な場所だった。
予想通りというか予想以上というか、部屋のいたるところに島の外部の様子や地下の様子が映っている映像が空中に浮いて散らばっている。
触れば動いて整理できるので、まるでVR空間に入ったかのような気分だった。
「すごい……これは……すごいよ……」
「坊ちゃまはこれらを制御できる唯一の人間として登録されております」
「それはどうして?」
「坊ちゃまやルシア様がこの島を管理していた古代文明人の末裔だからです。遺伝情報を読み取り、ロックが解除されたため私はアグリオスが動けるようになりましhた」
僕が思っていた予想の斜め上の答えが返ってくる。
古代文明人の末裔が母様や僕だって?
「じゃあ、魔力が僕にないのもそれが理由なの?」
「魔力というのが情報不足の為回答ができませんが、坊ちゃまはより濃い古代文明人の血があることになっています。少なければ制御可能レベルに制限がかかります」
アモスの言葉に僕は唖然とした。
もし、僕の魔力不足が古代文明人と呼ばれるこの島を制御していた存在の特性であるなら、この島は僕だけが操れる島なのだ。
発達した文明の利器を持ってしまったことに怖さもあるが、それよりも快適に暮らせる手はずを整えるのが先である。
「わかった。この島の力を有効に使うようにするよ。まずは僕と母様の住まいをちゃんと建てることと畑を作って安定した食料の確保からだ」
「坊ちゃま、それではいけません」
今まで僕の言うことに文句を言わなかったアモスが急に否定してきたので僕は驚いてアモスを見上げた。
アモスは無表情なままで僕を見つめ返し、こう告げる。
「わたくしと呼びだした端末の管理設備も追加してください」
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