第21話 蛟竜討伐される
水香と小芳狐は,自分たちの外見を変えて,水香は小芳に変身し,小芳は水香に変身した。変身といっても,顔だけを少し変えるだけだ。なんら難しいことはない。
水香の豊満な胸は隠しようがないのでそのままだ。その胸を見れば,水香だとすぐにバレてしまうのだが。
水香と小芳は,馬車に乗って菩提大湖に向かった。馬車に,馭者はいない。水香が,馭者は不要だと伝えた。念話によって,馬に行き先を伝えることができるし,馭者がいると,敵から攻撃されてしまうと,足手まといになる。
このキャビンは,完全に密閉ではなく,隙間がところどころあり,中の様子が少し見える。若い女性2人が乗ってのは一目瞭然だ。
案の定,途中で,10人編成からなる馬に乗った盗賊の一団に襲われた。逆に襲われないほうがおかしい。どうぞ,襲ってくださいと言っているようなものだ。
水香「小芳,あなたの3日間の成果が試す時がきました。わたしを守ってください」
小芳狐「はい,水香様! 透明の霊力の触手,2メートルほど伸ばすことができるようになりました。体表の防御層も,鉄程度の強度にすることができます。後は,実践の経験を積んで,さらに扱い方のコツを掴んでいきます」
小芳狐は,キャビンから降りて,馬上のボスに近づいた。小芳の攻撃範囲は半径2メートル!
馬上のボスが,なにやら言葉を発したが,今は,そんな言葉を聞く余裕はない。
小芳は馬に近づいた。2メートルの範囲内に入った,馬の前脚を霊力の触手でドンと打った。そのため,馬は前のめりになり,馬上のボスは,前方に飛ばされた。その結果,労せずして,ボスが小芳狐の間合いに入った。
シュパー!
小芳の触手の先の刃が,ボスの首を刈った。
彼女は,すぐに次のターゲットに向かった。今度は,同時に,3頭の馬の前脚を強打して,3名の盗賊を前方に飛ばした。
シュパー!シュパー!シュパー!
3名の盗賊の首が飛んだ。
それを見た他の6名の盗賊は,ヤバイと判断,すぐに馬主の向きを後方に向けて去ろうとした。しかし,馬の動作は,鈍いものだった。向きを変えるだけで2秒もかかってしまう。
2秒もあれば,6頭の後脚が小芳狐の間合いに入ってしまい強打するのは容易だ。その結果,盗賊たちが背面から後ろに倒れた。
シュパー!ーーー
6人の首が空中に飛んだ。
その後,小芳は盗賊の体から貴重品を盗んだ。水香は折角なので10名から寿命エネルギーを奪ってミイラ状にしていった。
小芳「水香様! どうでしたか?」
水香「相手が油断してくれてよかったわね。もっと胸元を空ければ,さらによかったかもしれないわ」
小芳「はい!頑張ります!」
その後ハプニングもなく,数時間後に菩提大湖に無事に着いた。
小芳「水香様,この数時間で,触手の長さを4メートにまで伸ばすことができました」
水香「凄い進歩ね。加速は使えるの?」
小芳「はい,5倍速ができるようになりました」
水香「では,ご主人様の命令通り,小芳は,わたし,『水香』として行動してください」
小芳「水香様,ご安心ください。水香様として,蛟竜を討伐してみせましょう」
小芳は,自分の周囲に霊力の球を展開して,湖の中に飛び込んでいった。数分後,湖の底に着いた。底は,かなり暗かった。
しばらく,湖の中央方向に歩いていた。
シューー!シューー!
2発の氷結弾が小芳を襲った。それらは,霊力の球にぶつかって砕けた。地表ならいざ知らず,水中では,氷結弾の威力が大幅に低減した。
小芳は,氷結弾が来た方向に向かった。
シューー!ーー
何度も氷結弾が小芳を襲った。だが,水中のため,威力が大幅に低減したためほとんど威力はなかった。
氷結弾を放ったのは蛟竜だ。
蛟竜は,氷結弾がまったく効果ないので,最後の切り札を出すことにした。
蛟竜の尾っぽ部分で,小芳狐を覆っている霊力の球を巻いた。
バババーー!!
蛟竜は,全身に高圧の電流を流した。
バリーーン!
尾っぽによる圧力と高圧電流の相乗作用によって,霊力の球を破壊した。蛟竜の尾っぽは,確実に小芳を巻いた。
小芳は,高圧電流に耐えた。霊力を蓄えた体は,通常の何倍もの強靱な肉体に変化させていた。それが幸いしたようだ。
蛟竜は,霊力の球を破壊したので,後は,このまま水中で小芳の窒息死を待てばい。
小芳の体から,霊力の棘が出て,蛟竜の鋼鉄よりも硬い体に刺し込んだ。そこで,その棘が直角の角度で何本にも分かれたので,決して外れないようにした。
小芳が呼吸を止めれる時間はせいぜい10分まで。それまでに湖面上に出なくてはならない。
小芳は,足の部分を,霊力で大きなヒレ状に変えて,全力で湖面に向かった。
だが,蛟竜も必死だ。蛟竜も小芳を水中に留まらせるため,全力で湖底の方に引っ張った。
小芳はいくら霊力のヒレを漕いでも湖面に出ることはできなかった。
1分,2分,,,5分,7分と時期が過ぎた。
小芳は,これ以上自分の力ではどうにも出来ないと悟った。
彼女は.已むなく念話で水香に助けを求めた。
小芳『水香様!助けてください!どうしても湖面に出ることができません!このままでは窒息死してしまいます!』
その念話が発せられたらと同時に,小芳の体全体が水香の霊力層で覆われて,湖面上に引っ張り出された。それに伴って,蛟竜の全貌が露わになった。
蛟竜は,全長8メートル,最大胴体の直径2メートルもの蛇状の怪物だった。
その姿が湖面上に出るや否や,水香による霊力による刃で頭部が切り落とされた。蛟竜の鋼鉄よりも硬い鱗など,水香の刃に比べたら,豆腐並みの柔らかさとなんら変わりない。
その後,蛟竜の体は解体されて肝臓が取り出されて,その3分の1の大きさを夕霧から預かった容器に入れて,残りを2等分して,水香と小芳が食べた。
最も,小芳は『気』による火炎で焼いてから食べて,水香は霊力を覆ってそこから精気を吸収した。それだけで水香の胸が一回り大きくなった。
小芳狐「水香様!体が超超気力アップしました!もう誰にも負けない感じがします!上級はおろか,S級を越えて仙人になった気分です!!」
水香「よかったわね。わたしは貯蔵に廻すだけにするわ」
水香は,さらに蛟竜の死体全体に霊力を覆って,そこから寿命エネルギーを奪っていった。
30分後,蛟竜の体は干からびてミイラ状になっていった。
それに伴い,水香の胸は,また馬鹿でかくなってしまった。でも,圧縮するすべを心得ているので,すぐにIカップの大きさに戻した。ただし,その乳房の重さは40kgにも達した。
…
水香と小芳が去った後,やや離れた場所から,多紀医師が派遣した偵察隊が出てきた。彼らは,ミイラ状態にされた蛟竜をまじまじと見て恐怖を覚えた。いったいどうやったらこんなことになるのか? しかも,あの『水香』は水中に10分以上も潜っていた。まさに怪物!
彼らは,ミイラ状になった蛟竜を1メートルの長さに切断して,それを持ち返ることにした。
ーーー
ちょうどその頃,桜川城の状況視察を終えて,真天宗に向かっていた笛吹仙人の頭に激痛が走った。
笛吹仙人「え?! この痛さは,,,契約獣が死んだ? 俺のペットの蛟竜が死んだ?」
笛吹仙人としても,こんな痛さを感じるのは初めてだ。激痛の後,蛟竜の存在を感じることができなくなった。契約獣が,何らかの異変が生じたことを示す。もっとも考えやすいのは,蛟竜の死亡だ。
笛吹仙人は剣流宗出身だ。彼は情報がほしい時,剣流宗の宗主に聞く。剣流宗の早乙女宗主はS級中期の剣士であり,笛吹仙人の直弟子でもある。
彼は,最寄りの飛脚問屋に寄って,伝書鳩を剣流宗に飛ばした。
偶然なのだが,剣流宗宗主は,たまたま蛟竜に関する正確な情報を持っていた。
2日後に,剣流宗から返信が来た。それによれば,梅山城の女中,水香が蛟竜を討伐した可能が高いとの返事だった。
笛吹仙人「水香という名前? あの桜川城を壊滅させた大妖怪・水香か?」
笛吹仙人は,今からでも梅山城に行こうとも思った。でも,慌てる必要もないので,予定通り真天宗に行くことにした。すべての情報は,真天宗に集まる。敵を知ることが大事だと思い直した。
ーーー
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