最終決戦その2

 ビルが倒壊し、瓦礫の山が周囲にいくつかある。もはや車も走ることがまともに走ることができない道路だが、かつて道路の車線の真ん中であった場所に私は仁王立ちし、上空に浮かぶ黒いモノリスを睨みつけた。

 全ての元凶。1週間前、突如として東京の上空に現れ、落ちてくることもなく3日経過した。そして正午、太陽の光以上に明るい光を黒いオブジェクトから発した瞬間、都内のビルは崩壊し、人々は跡形もなくなった。あれは爆発だったのだろう。

 今でこそ雨によって鎮火したが、閃光の直後は夜になっても赤々と都内が燃え盛っていた。

 数学の授業が終わった瞬間。チャイムと共に周囲が光に包まれ、宙を浮いている感覚を味わったとほぼ同時に足に激痛が走っていた。校舎が破壊され、地面に叩きつけられたのだから。

 さて、今の私はというと、あの時と同じ制服姿である。別に制服が破けてもいなければ、体に外傷ひとつない。地面に叩きつけられたのに今は仁王立ちしている。

 この理由は少し過去に遡らなければいけない。


 昔の私は自分の感情を制御できなかった。

 小学校低学年の時、クラスメートの男子複数人に何か嫌なことを言われた。からかわれただけだと思うが、当時の私は怒り狂った。

 その結果、気づいたら彼らがその場に血を流して倒れていた。いわゆる病院送りだ。

 両親とその男子生徒の家に何度も足を運んだ記憶がある。両親は平謝りし、相手の男子生徒が悪いはずなのに、相手の親から激昂を浴びせられ、家に帰れば両親は私のことを娘どころか、人間として見てくれなくなっていた。

 私には不思議な力があったのだ。超能力というべきか。念動力と脅威的身体回復能力だ。

 


 親から見放され、最低限の世話しかされてなく、学校でも居場所がなくなった。仲良くしてくれた友達も離れて行った。

 ある日、不良の中学生がたち私の小学校に来た。今思えばイキっている男子中学生。金髪にしたが、成長期の途中だからか身長は今の私よりも小さかった。タバコを吸いながら、私の小学校の前で待ち伏せしていた記憶もあるから、その影響で身長止まっていたのかもしれない。

 病院送りにした小学生がいるとかで喧嘩を売りに来たみたいだった。学校の先生たちも最初は男子中学生をつまみ出そうとしたんだろうけど、先生たちよりも先に私が遭遇してしまった。

 案の定、集団で暴力を振るわれた私、最初は我慢していたが、結局能力で男子中学生たちを容赦なく叩きのめしてしまった。痛みと恐怖で限界に達したからだ。

 一命を取り留めた男子中学生たちだったが、日常生活に支障が出る形になったと聞いている。

 さすがに警察沙汰になったが、見た目が細い私がこんなことをするはずがないと思われたのと、相手の男子中学生の素行の悪さから、私は見逃された。過去にクラスメートを病院送りにしたのもふざけていて怪我をしたとは表向きにはなっていたため、なぜか今回も絡んできた中学生が自分たちで怪我をしたことになったらしい。

 小学校高学年になるまでにこういう不良に何回も目をつけられた私は、生活環境の悪化もあって、鬱憤晴らしに相手を叩きのめすようになっていた。もちろん大事にならない程度に力を制御できるようになっていたためだ。

 中学に入る頃には、私は地元で最強になっていた。見た目は別に不良でもない。不良の子たちの遊びは全く好きではなく、本や漫画を静かに読むのが好きだったからだ。


 中学に入っても、私に挑んでくるやつはら絶えなかった。小学校の時点で高校生に挑まれることもあったが、中学に入ると高校生だけでなく、もう少し上の年齢の人たちにも絡まれるようになっていた。そして裏の世界の怖いおじさんたちの抗争にも巻き込まれたこともある。なぜか私がターゲットにされたのだ。

 また別ベクトルで巻き込まれたのは、代々悪霊を祓っている一族の中学の同級生と悪霊との戦いだ。それはそれで長くなるので割愛。


 今に戻る。私は能力でモノリスの爆発から助かった。今、都内で生き残っている人物は私だけかもしれない。いや、このモノリスの爆発は都内だけで済んでいるのかすらもわからない。もしかしたら世界中でモノリスが現れているのかもしれない。情報が何も入ってこない、誰にも会ってない状況からその可能性がとても高いように感じる。


 私に絡んできた不良や怖い大人たちもモノリスの爆発でもういないだろう。所詮は人間だ。

 悪霊を祓う私とは違う超能力を持ち合わせた彼も、モノリスのような物理攻撃には絶えられなかったのかもしれない。彼は人間離れした運動神経を持ち合わせていた。私は念動力による補助で人間離れした運動能力を発揮するが、彼はそういうものではなかった。もちろんアスリートを降霊して、一時的にバフをかけたりもしていたが。 だが彼も所詮人間。

 

 年齢と共に能力が強くなっていた気はしていたが、制御をずっとしてきたため、全力を出したらどうなるか自分でも分からない。

 モノリスに向けて手を伸ばす。

 この物体はどのくらいの強度だろうか。一握りで潰れてくれるなよ。どこかそんな期待をしている私がいた。

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