第3話 俺わるくない、運営側がわるい。

何も考えられない。一体俺が何したって言うんだ、まさか、あの棒か?あんな棒拾うんじゃなかった、そうだよ、あんなバグアイテム、耐久が無限なんて存在していいはずなかったんだ。

「くっそぉぉちくしょぉぉ!!!」

怒りの矛先がない。

「ちょっとてんちゃん!うるさいわよ!」

「うあぁぁぁぁぁ!!!」

枕に顔を埋め、スマホを見る。

「なんこれ、俺?」

オークを倒した動画が上がっている。それも〖衝撃!チート悪用プレイヤー現る!〗というタイトルで。俺のせいちゃうねん。運営のせいやねん。

頭の中で何故か関西弁で弁明をしながら、俺は精神的に疲弊していた。

「俺、これからどうすればいいんだよ、、。」


運営

多数の通報を受けた運営社は制作者、管理者、さらには社長まで総出で大騒ぎの状態になっていた。

「どこの誰か分かったか!?」

「はい!○○在住、18歳の谷川天智(やがわてんじ)という男性です!」

「他に特徴は!?」

「ごく普通のプレイヤーに見えます!情報は少ないものの、健全にプレイしていたと思われます!」

「やはりアカウントデータを直接確認するしかないか、、こんな事例初めてだぞ、おい!アカウントの回収を急げ!」

・・・

「これは、『デバッグ棒』か?なぜこの男の手に?」

「社長!彼のデバイスは初期型の、いわゆる『運営デバイス』と呼ばれる機種と同じようです!」

「まさか、その権限で『デバッグ棒』を取り出したというのか!?」

「いえ、それが、このデバイスは運営者デバイスではありますが、運営者権限は初期化されて使えないようです、、」

「そうか、、もっと精密な、ステータスを可視化してくれ」

「もう既に完了しています。」

「結果は?」

「体力値:280、精神値:213、身体能力値:325、感覚値:506、、技能値が、、」

成人男性(20代)の平均値を200、最大値を1000とした場合の値だ。そう、天智は感覚値が500と、異様に高かった。

「技能値がどうした」

「それが〖10€§〗と文字化けしているんです。つまり彼の技能値は、最大値の1000を超えています、、」

「なんだと?その上感覚値が506、身体能力が325なんて、トップアスリートの身体能力値が最大600だったんだぞ!」

「はい、私も目を疑っています、」

「ぶぅー、その少年、会社に招くんだ。アカウント返却はその後だ。」

「分かりました。メールを送信しておきます。」


「はぁぁ?なんじゃこの警察に連行されろ!みてぇなメール」

〖谷川天智様 この度、本社ゲームをプレイして頂きありがとうございます。アカウントを確認させて頂き、不審な点がございましたので、直接伺いたく、ご連絡させて頂きました。アカウントは後日、本社にて事実確認ができましたら、復帰させていただきます。〗

丁寧に住所や電話番号まで書かれている。

アカウント人質にされたら行くしかねぇじゃん。

後日、渋々本社へ行くことになった。

「すみません」

「あ、はい、お名前とご用件をどうぞ」

「ええと、谷川天智、用件は、、」

「谷川天智様ですか!!少々お待ちください!」

ん?一従業員にも俺の名前が伝わっているのか、と内心驚きながらも、数分後に中に案内された。さすが大手、綺麗だし、社ビル高いし、ついでに敷居も高い。社長室に案内されたが、すげぇ怖い、何言われるのか分からないし、俺れ捕まるかも、、。というのも、この会社、新しい法律が出来上がるほど規模が大きい。お金が発生するこのゲームでは、チートを使うプレイヤーは犯罪者として扱われる。ビビるのも無理は無い、と思う。

「よく来たな、谷川天智、まあ座りたまえ。」

「ハ、ハイ。」

「さて、早速本題に入ろう。あのデバッグ棒、耐久力無限の棒はどうやって手に入れた?」

「ハイ、ええと、オークに殺された後、不具合か何かで森にリポップしたんですけど、たまたま落ちているのを拾いました」

「たまたま森に?なぜそんなところに開発者用アイテムがあるんだ?」

「いえ、僕にも分かりません、」

「うーん、少し待っていてくれ。」

そう言い残し、社長は社長室を出て行ってしまった。当たりを見渡すと、よく見る社長専用デスクや、専用のPC、後ろが窓張りのいい景色だ。と、辺りを見渡していると、ものの数分で社長が戻ってきた。

「いやー、疑ってすまない、どうやら社員の1人が欲に負けて、運営者デバイスでログインしたあと、あのデバッグ棒を落としたままログアウトしたらしい。そんな人間がいると、会社が不利益を被ることになるからクビを切っておいたさ。デバイスのデータは全て復旧しておいた。デバッグ棒は回収させて貰おう。そこで提案なんだが、天智くん、会社に入らないか?君は天性の才能があるようだ。その才能を会社のために活かしてはくれないか?もちろん報酬も出そう」

つまり、俺を制作者側にさせるつもりか?俺は、どうしたいんだ?

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