第2話 やらかした

「今から頭かち割りに行く!」

とは言ったものの、武器の形状や、加工材料はどうしようか。いっそ殴り殺せるならこの木の棒で殴りに行くか?

「めんどくせぇ、とりあえず最初作ったレア性能の鉄の棒で挑んでみるか」

鉄の棒を作ってダンジョンに入る。一応ロングソードも買っておいたので、最初のモブはロングソードを使って進み、大型モンスター、オークと遭遇した。

「よぉ、次は殺られねぇ。殺り返してやるよ!」

鉄の棒を構え、敵の頭に向かって振りかぶる。もちろん見た目は剣なのでこんぼうで防御する。だが切れ味がない武器は物理的な衝撃を与えることに特化している。剣の形をした棒をこんぼうに叩きつけ、反動で顔に向かって振りかぶり、鼻を叩く。遠心力が相まって顔にに強い衝撃が走る。

ゴキッ  バリバリ...

骨が折れる音と同時に鉄の棒はユニーク棒に戻り、相手は混乱、鼻を打ったことによりスタンが発生しこんぼうから手を放した。俺はすかさず足元に飛び込み、右のすねを叩きつけ、足を崩して機動力を潰した。決定的なダメージが与えられないので、もう一度頭に飛び込み、頭頂部へ打撃を狙う。もちろん相手は急所に入れられることを恐れ、手で防御をした。俺はすかさず構えを変え、身体をひねり、手を避けて目に棒を突き立てた。グア゙ア゙ア゙と叫び、目を抑えながら倒れ込む。

「次はお前の番だ」

ガッ、ガッ、ガッ

頭をかち割ってやった。

「お、お前、」

声が聞こえ、驚きのあまりバッと振り返った。一部始終を見ていたらしい。攻略に来た追随者たちが戦闘を見て唖然としていた。

「棒で倒すなんて、何者だ?そもそも棒で倒すことの出来る敵なのか?」

唖然とする冒険者たちを横目に先へ進んでいく。

「待ってくれ!聞かせてくれ、どうやってそこにいたオークを倒すことが出来たんだ?」

「見てなかったのか?頭かち割ったんだよ。」

「違う、俺は過程を聞いて、、」「過程なんか聞いてなかっただろ?それに、過程を聞いて何になるんだ?お前に、お前たちにできると思ってるのか?」

冷たく当たる俺に黙り込んだ冒険者。

「、、、現実に忠実なこのゲームは、武器性能での違いはあるものの、ほとんどが自分の技量とセンスによるものだ。俺は、これ一本でどこまでのし上がれるか気になった。こいつには耐久性という概念がない。」

「なんだって、、?耐久性がないだと、、、?そんなぶっ壊れの性能、この世界にとって異物だ」

「たかが棒だろ?俺は武器性能の差を技術で埋めるセンスと能力がある。分かったらもう突っかかってくんな。」

俺は進む。俺の限界を知るまで進み続ける。


数時間後、ある動画が投稿された。

〖衝撃!チート悪用プレイヤー現る!〗

その動画は瞬く間に100万、200万再生を突破し、一日で総再生回数800万再生を記録した。

<匿名:誰だか知らんが、チート使って楽しいのか?ww>

<匿名:ゲームがけがされた!今すぐ責任とれ!>

<匿名:運営に通報しようぜwwこいつ終わりだなwww>

<匿名:そりゃ、中盤のダンジョンは人が多いんだからバレるに決まってんだろwww雑魚乙ー運営様排除よろしくぅーww>

批判の声が殺到し、運営への通報連絡が鳴り止まなかった。そんなことは知らずに、ボス攻略のためにボス部屋に向かっていた俺は偶然ある隠し穴を発見した。誰かが見つけて入ったような形跡はなく、通る人も限りなく少なかったためか、そこにあった金銀財宝に目が眩みそうになった。そう、この世界にはゲーム通貨換金制が導入されている。つまり、ゲームで稼いだお金を現実の通貨に変換することができる。チート疑惑で大騒ぎしていたのもこの換金システムによるものだった。

換金の金額の内訳を見て更に目を疑った。日本円にして約3800万円。ゴブリンやオークが長年NPCから搾取し、溜め込んでいたものだろう。、、、一回やってみたかったんだよな。俺は財宝に飛び込む。くそ痛ぇ。けどなんか幸せ。気を緩めていると、警告通知が来ていることに気付いた。

〖過度な通報を受け、強引ではありますが運営側がアカウントの調査を致します。プレイヤー様には勝手ながらログアウトしていただきます。何も無ければ数時間後、お詫びとともにアカウントへのログインが可能となります。〗

なんだこれ、警告?それと、下に表示されてるのは、、、

〖強制ログアウトまで 8s、7s、6s、、、〗

体が光って消え始める

「なんでだ、嘘だろ、ま、ま待て、やめ、、、」

俺は強制ログアウトさせられた。そしてまだ俺はこの事の重大さを知らなかった。

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