ブラコン妹は、今日もイライラしている

@JULIA_JULIA

ブラコン妹は、今日もイライラしている

「醤油とって」


 朝から不機嫌な声。俺は命令されるまま、醤油の入っている小瓶を妹の前に置いた。ちなみに妹は中学二年生で、俺は高校二年生である。そんな三つも歳上の俺に向かって、妹は続ける。


「目玉焼きは醤油に決まってるんだから、もっと気を利かせてよね」


 呆れたような態度で吐き捨てられた言葉。それの意味するところは、言われる前に置いておけ───ということだろう。しかしそれは、妹の理屈に過ぎない。俺の流儀は、目玉焼きには塩こしょう───なのだ。というか妹も、ついこの前までは塩こしょうだったと思うのだが。はて、好みが変わったのだろうか。それとも、例年よりも暑い春の陽気───いや、熱気にやられたのだろうか。より塩分を摂取しようとしているのだろうか。


「ったく。そんなんだから、モテないのよ」


 まさか醤油の配置場所だけで、俺のモテ具合が決定されていたとは驚きだ。そんな驚愕の事実に狼狽える中、トドメを刺しにくる妹。


「顔がんだから、気遣いくらいは出来るようになってよね」


 おい! とは、なんだ! 悪かったな、イケメンじゃなくて!


 心の中だけで言い返した。口に出すことは憚られる。なぜなら妹は怖いから。


「あー、もう! イライラする!」


 茶碗に盛られた白米の上に乗せた目玉焼きを、箸で何度もぶっ刺し、グチャグチャにする妹。かなりストレスが溜まっているようだ。ストレスフルというか、フルストレスというか。とにかく、フルスロットルで目玉焼きを潰す妹。そんな彼女は、ブラコンだ。


 え? どこがだって? いやいや、見れば分かるだろうに。ほら、見てみ。


 妹は、中学二年生の割りには、胸がかなり大きい。いや、大人の女性と比べても、相当な大きさだ。だから彼女は、ブラジャー選びに困っている。


 制服の白シャツから透けて見えるときのことを考えれば、可愛いデザインのブラジャーが良いそうなのだが、カップサイズが大きいために、選べるデザインが少ないとのことだ。ちなみに、白シャツの下に色の濃い肌着を着たり、白シャツの上からなにかを羽織る───という選択肢は、ないらしい。単純に暑い、とのことだ。




 というワケで、妹はブラジャーに対して、コンプレックスをいだいているのだ。つまり彼女は、ブラジャー・コンプレックスである。


 よって妹は、歴としたブラコンなのだ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ブラコン妹は、今日もイライラしている @JULIA_JULIA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説

宇宙人、襲来

★3 SF 完結済 1話