「晩餐会の少女」アルベルト・ラディウス(匿名)(ある連合軍兵士の証言)


 あの頃は面白いくらい、探せばすぐに見つかった。両親からはぐれてしまった少女や、全ての肉親と死に別れてしまった少女たちが。現在みたいに、ちょっとイタズラをすると厳しく咎められる、というようなこともなかった。


 ルナシス帝国の帝都へ、ぼくたちローリエン王国所属の中隊は戦線を突き進んでいった。疲れてはいても、まだとても興奮していた。仲間たちが「時計、時計」と言いながら、降伏したルナシス人から時計を巻き上げるのを横目で見ながら、ぼくは少女を探していた。一応、ぼくも時計に興味があるフリをしていたけれど、本当はそんなものにはこれっぽっちも関心がなかったんだ。ぼくが関心があったのは幼い少女たちだけだ。どんなにうす汚れていても、どんなにみすぼらしい身なりをしていても、どんなにガリガリに痩せていても、少女たちは美しかった。


 夜になると、仲間たちは昼間目をつけておいたご婦人たちを、晩餐会に招待するために出かけていった。晩餐会--草むらや納屋で繰り広げられる一方的な欲求の充足行為、すなわち強姦だ。婦人たちは悲鳴を上げたりして抵抗したが、どんな抵抗も、連合軍の魔道武器の前には無力だった。


 仲間たちがそれぞれお目当ての婦人を連れ出した後、ぼくは人形をしっかりと抱いた4歳くらいの少女に声をかけた。

「チョコレートやキャンディーは好きかい?」

 少女はきょとんとした顔でぼくを見上げた。ぼくは胸のポケットからお菓子を出して、少女の目の前でブラブラさせた。とたんに少女の口もとからヨダレがあふれだした。ぼくが手を差し出すと、少女は従順に付いてきた。兄とおぼしき少年が懸命に止めようとしたが、ぼくが魔道武器で一殴りすると大人しくなった。


 その町に滞在している間、毎晩ぼくはその少女を草むらに連れていった。服を全て脱がせ、引き締まった小さな体の中に押し入った。ペニスにチョコレートを塗りたくって、それをなめさせたりもした。


 ある晩、少女はしくしく泣くだけで、言うことをぜんぜん聞かなかった。ぼくが無理矢理押し入ろうとすると、じたばたと暴れた。

「うるさい! 静かにしろ!」

 ぼくは怒鳴って、少女に殴打を浴びせた。それから少女の腕から人形をもぎ取り、手足をバラバラに引きちぎった。少女がさらに大声で泣こうとしたので、口もとにゲンコツを叩き込んだ。少女は意識を失ったが、ぼくは行為をやめなかった。目覚めていようと眠っていようと、それが少女であることに変わりはなかった。


 行為が終わってからしばらくたって、少女を起こそうとして、身体がやけに冷たいことに気がついた。息はしていなかったし、心臓も止まっていた。それなのに、まだしっかりと、もげた人形の腕を握りしめていた。


 道端に転がっていた死体の隣りに、少女の亡骸を横たえた翌朝、ぼくたちの中隊はその町を去った。


 公歴1345年五月、帝国大戦末期のルナシスの小さな町での事だ。



【おわり】

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子供はゆりかごに シュンスケ @Simaka-La

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