サーチライト
ヤマシタ アキヒロ
第1話
サーチライト
あの波さえ越えていれば
また穏やかな航路が
待っていたかもしれないのに
友人はバランスを崩し
船を転覆させてしまった
あの夜さえ越えていれば
またやわらかな朝日が
君を迎えたかもしれないのに
友人は判断を急ぎ
船を沈没させてしまった
真っ暗な海を行く
われらはみんな孤独な舟たち
ひとりに一つずつ
サーチライトを掲げながら
ライトの灯りは
一人分では心もとない
互いの航路を照らし合い
光と光が重なるとき
進むべき道が浮かび上がる
いま
君という大きな灯りを
僕は失ってしまった
おかげで僕の航路は
ずいぶんと暗くなった
真っ暗な海を行く
孤独な舟たちの辿る先
茫漠とした海は
いまも荒涼と広がっている
音もなく
おぼろげなサーチライトを
幾重にも交錯させながら
(了)
サーチライト ヤマシタ アキヒロ @09063499480
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます