松岡 祐樹 4
クラブ室に着くと、予想外の光景が広がっていた。
華奈は床に倒れているし、沙也加さんは放心したように一点を見つめて動かない。
タチの悪い冗談かと思ったが、倒れている心配の方が勝った。
「華奈?どうした?大丈夫か?」
声をかけても起きない。
呼吸はしているので、寝ているのか気絶しているのか。
「沙也加さん?何かあったんです?ってか、他の2人は?」
沙也加さんも聞こえていないのか何も反応しない。
「沙也加さん?……沙也加さん!」
ハッと顔を上げ、ようやく俺の存在に気がついたようだった。
「何かあったんですか?華奈はなんで倒れてるんです?」
「あ………………えっと………そうだ……相馬が……相馬…………」
うわ言のように何度か『相馬』と呟きながらゆっくりと立ち上がると、弱々しい足取りで窓へと向かっていく。
「……………………………なんで……………」
しばらく窓から下を覗き込んでいたかと思ったら、またへたり込むように座ってしまう。
「……沙也加さん?どうしちゃったんです?」
「わかんない」
「え?」
「私もわかんないの……相馬が、急に変なこと言い出したと思ったら、窓から飛び降りちゃうし………でも、下見てもいないし…」
飛び降りた?
相馬さんが?
「え?……ち、ちょっと待ってくださいよ。飛び降りたって何ですか⁈ 下にいないって、え?どうゆうことです?」
「わかんないよ…………そこの窓から落ちるのを見たの。絶対に。だから谷は急いで下に行ったんだけど、さっき下見たら相馬のこと探してキョロキョロしてる谷と目があって。どこにも相馬がいないの……」
「いや、そんな……冗談、ですよね?」
「……………」
嫌な沈黙が流れる。
『びっくりしたか?ドッキリでした!』
と、相馬さんと谷さんが出てきてくれたらどんなに良かっただろうか。
華奈は、きっと落ちる瞬間を見て……
動かして良いものか分からず、横たわる華奈に寄り添って座り、手を握るしか出来なかった。
少しすると、部屋のドアが開いて谷さんが入ってきた。
「あ、谷さん……」
彼はとても疲れた様子で、入ってくるなり椅子に座り込んだ。
相当走ったのかもしれない。
顔色は良くないが、額には汗が浮かんでいる。
その後華奈も目を覚ましたが、状況が好転することはなかった。
空気を変えようにも、唯一見ていない俺が何を言ったところでだろう。
そのうえ、俺にあったことを話したらさらに空気を重くするだけなので、何も言うことはできなかった。
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