松岡 祐樹  3


結局、谷さんが見せたかったのは何だったんだろうか。

特に気になるものはなかったが、お試し版的なやつなのかな。

1日2日でこんなのまで作ったなんて、よっぽどのが映っていたということかもしれない。


あれ?もしかして俺が着いたらまたみんなで見る感じなのかな?

俺以外が知ってる状況で見るのも何か嫌だ。

めちゃくちゃ反応見られそう。

だからって1人で見るのもつまらないけど…


相馬さんに動画のお礼ともう少ししたら着くことを送ったが、返事が来ることはなかった。

ふと、何故谷さんからではなく相馬さんから送られてきたんだろう、と思ったが別に大したことではないと深く考えることはなかった。





大学近くのバス停に着いたので降りると、友人が待合所に座っていた。

俺が乗ってきたバスとは別方向行きのバスを待っているのだろう。


「おつかれ。これから帰るとこ?」


声をかけるが返事もなく下を向いたままだった。

聞こえなかったのかと思い、少し声を大きくしてもう一度声をかけるととても驚いた様子でこちらを向いた。


「え?あれ?…………松岡じゃん。いつからいた?」


「いつからって、今バス降りてきたんだよ。

一回声かけたのにスルーされたし」


「あぁ……気づかんかった」


「ん?どうかした?」


「いや……別に……」


やけに含みのある返しばかりで余計に気になってしまう。


「えっと、松岡今のバスに乗ってたん、だよな?……変な人とか、乗ってなかった?」


「変なって、どうゆう?」


「なんていうか……黒くて………………」


黒い。

言葉が出なかった。

咄嗟に足元を見るが、当然足首は隠れていて見えるわけがない。


「……あー、ごめん。ただの勘違いだわ。普通に降りてきた人の服装が黒系だっただけだと思う」


俺が黙ってしまったのを自分が変な事を言ったからだと思ったようで、彼は慌てて訂正した。


「へ、変なこと言うなよ!びっくりしたじゃん。黒い服の人なんてどれだけいると思ってんだよ」


「……だよな!昨日ホラー系の映画見たからその影響かも」


「なに?そうゆう系好きなの?俺今からこの前行ってきた心霊スポットで撮った動画見に行くんだけど」


「マジか。俺は……実際行くのとか絶対無理だわ。見えるのとか、キツいし……」


「………………あーっと、じゃあ、俺そろそろ行くわ」


「おぉ……おつかれ。またな」


友人はスマホを取り出して何かし始めたので、別れて大学へと向かう。


少し歩いたところで、ふとバス停の方を振り返ると友人がこちらを見ていた。

目が合うと彼はまた下を向いてしまう。


友人は、降りてきた人の服が黒だったから勘違いした、と言っていた。


さっきバスから降りたのは、俺一人だった。




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