相馬 貴彦  6


2階は、1階以上に物に溢れていた。

階段を上がった先は、少し広いスペースになっていて、動物のぬいぐるみがこちらを向いて並べてある。

小さな物から、1メートル以上あるだろう大きなぬいぐるみも置いてあった。

ぬいぐるみたちの後ろは窓になっていて外が見えるので、ベランダにはここから出るようになっているみたいだ。


もうここの雰囲気に慣れてきたこともあり、各々散らばって探索していく。

谷と松岡、華奈ちゃんの3人は右へと行ったので、俺と池町は左へ向かう。

池町の後に続いて左へ進んだ先の扉を開けると、ここは子供部屋のようだ。


ベッドが2つあるので、この家の子供は2人いたのだろう。

それにしてもだいぶ広い。

下で見た畳部屋3つ分くらいあるかもしれない。


「やっぱり子供部屋だからか、置かれてる物も子供用だったり、おもちゃだったりが多いね」


「かもね。ぬいぐるみとか多かったから女の子かと思ったけど、この部屋見た感じだと男の子っぽい、いや、どうだろ。そうとも限らないか」


「女の子がピンクに囲まれてる、なんて今時差別だからね。2人いたなら男女両方だったかもしれないし」


幼児用の滑り台も置いてあるし、色々な本が置かれた勉強机もあるので、年齢もよくわからないな。

ランドセルもいくつかあるので、誰かが置いていった物かも判断がつかない。


池町は楽しそうにおもちゃを物色しているので、部屋を出て1人反対側へと向かう。

脱衣所には、洗面台の鏡に向かってカメラを構えている谷がいた。


「何か映ったら、とか思わないの?」


そう声をかけると、鏡越しにこちらを見た。


「何か映ったら、と思ってるから撮ってるんだよ。一度でいいから撮ってみたいよね」


怖いもの見たさの気持ちはあるけど、俺はここまでではないな……

谷は鏡は満足したのか、扉を開けてお風呂場へと入っていった。


脱衣所の向かい側の部屋には、松岡と華奈がいた。

ここは寝室のようだ。

大きなベッドは掛け布団が捲られている。


「2人でベッドインしてたとこ?」


こんなところでやめろよな、と冗談めかして言うと、こんなとこのベッドになんて入るわけない、と華奈が怒った。


「これ、俺らじゃないですよ?」


「なにが?」


「布団。掛け布団、最初からこうなってたんで」


片側に寄るような形で、掛け布団が捲られている。

他の部屋はどこも物が多いだけで整理整頓されていた。

子供部屋のベッドも、まるで展示品かのように整えられていた。

なのに、ここだけ?

意識して見ると、寝ていた人が起きるためにどかしたまま、そんな風にも見えた。


なぜ、この家はこんなに気持ち悪いんだろうか……







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る