相馬 貴彦  4


俺の報告を聞いて、少し離れた所で見守っていた3人が近づいてくる。


「相馬さんどいてどいて。相馬さんの出番はチェックまでで終わり!」


最初に入るのは自分だとばかりに、ドアに手をかけていた俺の前に松岡が割って入ってくる。


「いつも俺が最初だし。これは譲れないよねー。じゃあ、お邪魔しまーす……」


ゆっくりとドアを開け、少し開けた隙間から1人で中を覗いている。


「あー、なんかすごいっすね……これはちょっと……ん?……うわっ!!」


何かに慌てて、急にドアを閉める。

突然のことに、全員が呆然としてしまった。

松岡の荒い息遣いだけがしばらく続く。


「……どうしたの?松岡くん、大丈夫?」


華奈が声をかけると、松岡は息を整えつつ答える。


「……あー、びっくりした。別に、全然大したことじゃないんだけど、なんか、見た時に気持ち悪くて、思わず声出ちゃったっていうか、なんていうか……とりあえず見てください」


見たら分かると思います、と松岡はゆっくりドアを開いた。


家の中を見て初めに感じたのは、とにかく物が多い、ということだった。

靴箱や廊下に色々な物が置かれていた。

ゴミで溢れているというわけではなく、ペンや人形など様々な物が飾られているといった感じ。

これが今までこの家を訪れて祈った人達が置いていった私物なのだろう。



「……あ……松岡の言ってるのはこれか」


「私もいきなり見てたら声出ちゃってたかも……」


谷と池町が、下を見ながら顔を顰めている。

華奈ちゃんは声も出ないようだ。

何のことかと自分も下に懐中電灯を向けると、そこには靴が並んでいた。

5足分。

サイズも種類もバラバラで、置かれ方も揃えてある物もあれば少しズレている物もある。

そんなに汚れや古い感じもないので、元の住人の物では無いかもしれない。


言われなくてもわかった。

気持ち悪いのは、これだ。

家の中に溢れている他の様々な物とは違う。


この靴は置かれたんじゃなく、履いていた人が、ここで靴を脱いでいったんだ。


見た瞬間、何故かそんな気がした。

そんな確証はないし、当然他の物と同じで置かれた物なんだろう。

でも、脱いでいった物にしか思えなかった。

だから、気持ちが悪い。


「この靴って……」


カメラで靴を撮影しつつ、谷もそれ以上言葉が出ないようだった。

皆気持ち悪さを感じているということは、本当に脱いでいった靴?

なら履いていた人はどこに?

わざわざ別の靴を持ってきて、一度脱いで家に入り、それに履き替えて帰った?


それとも、まだ中に?







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