相馬 貴彦  3


見た目は至って普通の家だ。

和風の家というより洋風?

洋風とまではいかないかな。

こうゆうよく見かける感じの家はなんて言うんだろう。

住宅街の中にあっても何ら違和感は感じない。

二階建てだがすごく大きいわけでもなく、少し白が強いベージュの家。


壁は汚れてはいるが、本当に少しだけ。

今まで行ったことのある廃墟のように窓ガラスが割れていることもないし、植物のつるで覆われているといったこともない。

そもそも、家の周りの植物は整えられているかのように綺麗だ。

ここまで来る道は人が歩く分には支障ないが、伸び切った枝や草が邪魔で車は入ってこれなかったのに。

無理やり通る事も出来なくはないだろうが、車体は傷だらけになるだろう。


「……誰も、住んでないんだよね?」


「そのはず、だけど……」


中の様子を伺おうにも、どの窓もカーテンが閉まっていて中を覗くことは出来なかった。

中に入って誰かが寝てました、では肝試しではなくただの不法侵入だ。

家主が起きてきて、警察を呼ばれてもおかしくない。

もちろん、空き家だとしても不法侵入には変わりないのだけれど……


「さすがに人は住んでないでしょ。車どころか自転車だって無いし、この辺り店なんてなかったから徒歩だけで生活してくのは大変すぎるって」


「確かに……願いが叶うって場所でもあるんだし、叶った人が感謝の気持ちで掃除とかしていくのかもね。それか、単純に不動産屋さんとかで管理してるとか?」


そう言われたら、そうかもしれないと思えてくる。

家の前でも廃墟だと思って普通に話したり笑ったりしていたのだ。

これだけ数人の話し声が外から聞こえてきたり、窓から懐中電灯の明かりが入ってきても誰かが起きたような気配もない。


「とりあえず、玄関開いてるか試してみる?聞いた話だと普通に玄関から入れるって言ってたから、これでもし鍵がかかってたらやばいってことでダッシュで逃げよう」


すごい行き当たりばったりな作戦だな、と皆に笑われるがこれが今出来る一番簡単な判断方法だと思う。

せっかくN県まで車を走らせてここまで来たのに、試さずに帰るなんてのはナシだろう。


「まぁそれ以外思いつかないし、やってみよっか。ゆっくりやれば大して音出さずに確かめられるし。もちろん言い出しっぺの相馬がやってくれるんでしょ?」


「まぁこの場所にしたのも俺だしね。それぐらいやりましょう」


谷に後ろで動画をまわしてもらいつつ、ドアへと近づいていく。


「いつもと違う緊張感があるんだけど……」


そうカメラに話しかけると早く行けと急かされる。

せっかく撮ってるんだから実況とかあった方が盛り上がるのに。


ドアノブに手をかけ、ゆっくりと回す。

カチャ…


「……鍵は無し。やっぱ空き家っぽいよ」










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