星宮朱莉②

 「むぅ~……」


朱莉はなぜか機嫌が悪そうだった。ムスッとしている。少し頬を膨らませている。機嫌が悪そうでも朱莉は狂いそうになるくらい可愛い。



「ど、どうしたんだ朱莉」


「……ふんっ」


ふんっ、って言ってても可愛い。


「アニメおもしろくなかったのか?」


「違う! 100回観ても飽きないくらいおもしろかった!」


「じゃあなんでそんなに怒ってるんだ?」


セリフと表情が全然合ってなくて俺は戸惑う。



「……それ……」


「え、これ?」


朱莉が指さしたのは、俺が今持っているスマホ。



「大ちゃんさぁ、なんで私がいるのにスマホばっかり見てるの?」



なんだ? 俺がスマホを楽しんでいるのが気に入らないのか?



「なんだよ、朱莉だって俺がいるのにずっとアニメ観てただろ」


「いやアニメは別だよ」


「なんでだよ」


自分がアニメ観てるのはいいのに俺がスマホ見てるのはダメなんか。ワガママか。ワガママなところも可愛いけど。



「スマホで何見てたの? ちょっと見せて」


「あ、ちょっ……!」



朱莉にスマホを奪い取られてしまった。

今スマホの画面には赤ビキニを着た朱莉の画像が……! 水着の朱莉を楽しんでいたのを本人に見られるとかちょっと……いやかなり恥ずかしい。


朱莉は俺のスマホをまっすぐ見つめる。

わああ、やめろそんなにしっかり見るな。恥ずかしすぎて穴を掘って埋まりたくなる。


スマホを見ている朱莉の表情がみるみる赤くなっていく。

そこにあるのは自分の水着画像だ、朱莉もすごく恥ずかしいだろう。お互いに恥ずかしいだけだから早くスマホ返してくれ。



「……大ちゃん、これは浮気だよ」


「なんで!?!?!?」



変態とかスケベとかキモいとか、そういうことを言われる覚悟はしていた。しかしまさかの浮気発言。あまりにも聞き捨てならない。



「ちょっと待てよ朱莉! 俺は水着画像を見てたんだぞ!? 他の女の子じゃないぞ!? 何がどう浮気なんだよ!?」


「これは確かに私の画像だけどさ、今ここに私がいるのに、なんで私の画像なんか見てんの? 私が見たいなら見ればいいじゃん。なんでわざわざ画像なんか見てるの?」


「だって朱莉がずっとアニメ観てて俺に構ってくれないから……」


「関係ない。見てよ。私以外のものなんか見ちゃダメ」


「いやだからこの画像は正真正銘朱莉だろ!?」


このでかい胸、胸に透ける血管。間違いなく朱莉のグラビア写真だ。



「イヤだ。私の画像でも見ちゃイヤだ。大ちゃんが見るのはじゃなきゃイヤだ」



こいつ、自分自身に嫉妬してるのか。過去の自分ですら浮気対象なのか。めんどくさい。しかしそのめんどくささが可愛い。



「……大ちゃん、こういう格好が好きなの?」


「え……!?」


「この画像の私、赤いビキニ着てるけど」


「そ……それは……その……」



確かに俺が見ていた柚希の画像は赤ビキニである。

好きかと言われたらそりゃあ好きに決まってる。しかし現在ゴキゲンナナメな朱莉にはすごく言いづらい。



「ふぅーん……好きなんだ、赤ビキニ」


「…………」


俺は何も言い返せなかった。即否定できない時点でもう朱莉には何もかもお見通しだった。

朱莉にジト目で見つめられる。呆れられているような、罵られているような視線。グラビアアイドルにそんな目で見てもらえるなんてご褒美でしかない。少なくとも俺にはグッと来た。



「……じゃあ、ちょっと待ってて」



朱莉はそれだけ言って俺にスマホを返し、部屋を出ていった。

どうしたんだ朱莉は? 何をするつもりなんだ。待っててって何? 何を待てばいいんだ?


そう思いながら10分くらい待つと、部屋のドアが開いた。



ガチャッ


「お待たせ」


「……ッ!?!?!?」



俺の目が飛び出るかと思った。


なんと朱莉は、赤ビキニに着替えてきたのだ。



スマホの画像と全く同じ。スマホと本人を見比べても全く同じ。

グラビア撮影の時に着用していた水着を、今ここで着ている。


まるで2次元の存在が3次元の世界にやってきたような……具現化したような、魔法で召喚したような、そんな気持ちだ。オタクなら興奮しないわけがない。



「ど……どうして水着着てきたんだ朱莉……!?」


「だから、その赤ビキニが好きなんでしょ?」


「そ、それはまあ……」


「だから着た。撮影に使った水着だいたい持ってるし。どう?」


「……か、可愛い」



俺のような素人がグラビア撮影の現場に立ち会えるわけがない。

でも、今目の前にある光景は紛れもなく大人気グラビアアイドル。俺だけが見れる、俺だけのグラビアアイドル。



「ホラ、その画像と同じでしょ? なんなら同じポーズしてあげよっか?」


「……!!!!!!」



俺のベッドの上で、赤ビキニの朱莉は画像と全く同じポーズを取った。

悩ましい谷間を強調するセクシーポーズ。脳が溶けるほどの性的興奮を覚えた。



「ね? これでそんな画像なんて見る必要ないよね? 私だけを見て」



当然、朱莉しか見えない。他のものなんて何も見えない。

俺の部屋で、俺の部屋を背景にグラビアアイドル星宮朱莉が水着悩殺ポーズをしている。今ちょうどスマホ持ってるんだから撮影しまくりたいのに、そんなことも忘れるくらい朱莉に見惚れていた。


もうスマホに完全に意識が向いておらず、自分の手に持っているスマホの感覚もわからなくなるくらい朱莉に夢中で、自然とスマホをポトリと落とした。



「大ちゃんが望むならいつでもどんな水着でも着るしどんなポーズでもするよ?

だからもうスマホに保存されている私なんていらない。大ちゃんが見る女は私だけでいい」



そう言われてもな……彼女としての朱莉とオカズとしての朱莉はまた別であって……朱莉にも都合があるわけで、いくら彼氏でも俺の都合だけで朱莉を利用するわけにはいかない。だからオカズの朱莉も必要なんだ。

そう思っているはずなのに、今の朱莉を前にして、朱莉に意見することなどできるわけがなかった。究極に可愛くて美しくて、どんなことがあっても折れないような強い意志を宿した瞳をしている朱莉の前では、俺は何も逆らえない。



「大ちゃん、おいで」


「……っ」



逆らえない。魅惑的な彼女に近寄ることを許可されて逆らう理由などどこにもない。俺はゴクリと喉を鳴らして心臓をバクバクと激しく鳴らしながら近づいた。



近づいた瞬間、朱莉は俺をベッドの上に押し倒した。

赤ビキニの彼女が妖艶な表情で俺を見下ろす。



「画像の私はこんなことしてくれないでしょ?」


「あ、朱莉……」



豊満な乳房がたゆんとぶら下がり揺れる。水着だから大きさも形も谷間も自由に堪能できる。

雑誌で見た時やスマホで見た時と同じ位置に同じ形で、乳に透けた血管が俺の男の部分を極限まで昂らせた。


やっぱり俺は血管フェチだ。彼女の胸の血管を見ただけでこんなにも悶え狂う。



「朱莉……!」



俺はもう理性を保てなかった。朱莉を抱きしめて唇を重ねる。


それからの俺は興奮しすぎて無我夢中になりすぎて、自分でも何をしたか何をされたかよく覚えていない。

しかし夢のような極楽な時間だったことは間違いない。こんなにもエロくて可愛いグラビアアイドルの彼女と一緒に過ごせる時間なんだから。




『俺の彼女はGカップグラビアアイドル』



―――END―――

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俺の彼女はGカップグラビアアイドル 湯島二雨 @yushimaniama

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