俺の彼女はGカップグラビアアイドル
湯島二雨
星宮朱莉①
「いい……」
「ああ、すごくいいな……」
「すげぇ可愛い……」
「すげぇエロい……」
高校の教室の隅っこ。床に広げられたエロ本。それに男子数人が集まってじっくりと読んでいる。
巻頭グラビア、ビキニ姿の巨乳の女の子に、男子たちはみんな鼻の下を伸ばして前かがみになっている。
周りに女子がいるのに堂々と読んでいる。女子から冷たい目で見られてもお構いなしの様子。というかグラビアの女の子に無我夢中で周りの光景が一切目に入ってこないといった感じだ。
まあ俺もその男子グループの1人だけどな。このグループで俺は一番下っ端で、俺が一番エロ本が見にくい位置にいた。
「顔もすげぇ可愛いけどさ……やっぱりおっぱいだよな……」
「ああ、素晴らしいおっぱいだ」
「やっぱり巨乳だな、巨乳はすべてを解決する」
「おっぱいでかくて最高だよな、
エロ本……正確には青年向け漫画雑誌の表紙を飾っているグラビアアイドル。
今年のグラビアアイドルコンテストでグランプリに輝いた、今最も勢いのあるグラビアアイドルだ。人気トップと言っても過言ではない。
動画サイトでも彼女の動画はぶっちぎりで再生数が多かった。200万回くらいは再生されてた。彼女でヌいてる男子の多さを証明する数字だ。
超絶整った可愛すぎるフェイス、たわわなGカップ、スタイル抜群すぎ、どこをどう見ても神といえる女の子、それが星宮朱莉。
「おっぱいの血管が透けてるのがたまらん!」
「わかるー、俺も朱莉ちゃんの影響で血管フェチになったわ」
彼らが話してる内容で俺の耳がピクッと反応した。漫画とかでよくある、耳が大きくなるあの感じだ。
そう、星宮朱莉の巨乳に透けてる血管、俺もたまらなく好きだ。
「なぁ、平沼はどう思う?」
「え、俺!?」
平沼は俺の名前。
「朱莉ちゃんメッチャいいと思わねぇか!?」
「あ、ああ、すごくいいと思うぞ……」
「だよなぁ~、朱莉ちゃん可愛いしおっぱいでけぇし最高だよな!」
「そ、そうだな」
それに関しては全肯定である。全肯定に決まっている。
俺も星宮朱莉大好きだ。大ファンだ。彼女のことを考えながら自分を慰めた回数も星の数くらいある。彼女がいないと生きていけない、なくてはならない大切な存在だ。
あんまり強くは言えないけど、この男子たちよりも、誰よりも俺の方が朱莉が好きだって自信はある。
「あぁ~、朱莉ちゃんが俺の彼女だったらいいのになぁ~」
「はは、夢見てんじゃねぇよ」
「いいじゃねぇか、夢くらい見させろよ! なぁ、平沼」
「え!? あ、ああ……」
男子たちの話に、俺は少しビクッとした。
夢か……確かに夢だ。夢だと思っていた。つい最近までは。
―――
学校を終えて、俺は家に帰ってきた。
どこにでもあるごく普通のマンション。5階までしかなく高層というわけではないし、セキュリティも万全というわけでもない。俺はこのマンションの3階に住んでいる。
「ただいまー」
俺は家のドアを開けた。
「おかえりー」
家の奥からすぐに返事が返ってくる。ものすごく可愛い声だ。
俺はドキドキしながら声がした方に行く。
ゴロゴロしながらアニメを観ている女の子。
部屋も服装もだらしなくて、ポテトチップスを食べている。絵に描いたようなぐうたら状態。
ここは俺の部屋……のはずなんだが、彼女に占領されている。
そんな彼女こそが、星宮朱莉だ。
俺は、星宮朱莉と付き合っている。
雑誌の表紙を飾るくらいのトップグラビアアイドルが俺の彼女。
さっき教室で、悩ましい表情と谷間で男子たちを魅了していた彼女が、たった今、俺の家に存在している。ゴロゴロのんびりと寛いでいる。
今でも夢なんじゃないかと思っている。彼女と付き合ってさらに同棲している今の状況、まるで雲の上をふわふわと浮いているような気分だ。
俺は特に何も特別なことはない凡人。そんな俺がなぜ星宮朱莉と付き合っているのか。
俺はガチのオタクだ。家にフィギュアを何体もコレクションしているくらいのオタクだ。実際に朱莉が観ているテレビの上にも美少女フィギュアがズラリと並んでいる。
ほとんどの女子にキモがられるであろうこの部屋、この女子ウケ最悪な空間にあの星宮朱莉がいるのだ。あまりにも異様な光景。
どう考えても俺が星宮朱莉のような最高最強の女の子と付き合えるわけがない。でも事実、俺は彼女と付き合っている。
彼女と付き合ったきっかけは、半年前に遡る。
半年前、俺はコミケに行った。そこにいたんだ、星宮朱莉が。
グラビアアイドルとしてではなく、1人の客として星宮朱莉がコミケに来てて、偶然出会った。運命があるなら俺は信じる。
あの時の朱莉は帽子をかぶってメガネもかけててすごく地味な格好をしていた。有名人なグラビアアイドルだから変装してたんだろう。周りにもバレないくらいちゃんと変装できていた。
でも俺は変装した彼女を星宮朱莉だと一目で見抜いた。俺が星宮朱莉の大ファンだからである。
朱莉の好きなアニメと俺の好きなアニメが同じで、欲しかったグッズも同じで、俺たちは意気投合して仲良くなった。
運命というものが存在するのなら俺は信じる。朱莉が俺の彼女になって、今こうして同棲しているのだから。
「大ちゃ~ん」
「な、なに?」
朱莉が俺の名前を呼ぶ。俺のことは大ちゃんって呼んでくれている。俺大地だから。
名前を呼ばれるだけでドキッとする。
「テーブルの上にあるポテチ取ってくんない?」
「あ、ああ、わかった」
朱莉はアニメに夢中で一瞬たりともテレビから視線を外そうとしない。
自分で取ろうとすれば3秒もかからないだろというくらいのことでも俺にお願いしてくる。
まあ、朱莉は俺の彼女だけど、ほとんど尻に敷かれている。
付き合ってるんだからもっとこう、イチャイチャできることもたくさんあるだろうと思っていたんだけど、彼女は俺よりもアニメの方が優先らしく、あまり構ってもらえないのが現状である。
俺はオタクではあるがアニメより朱莉の方が好きなのに……
まあ別にいいんだけどさ。朱莉が幸せなら俺はそれだけで大満足だし。
「はい、これ」
俺は言われた通りにテーブルの上にあったポテチを朱莉に手渡す
「ん、ありがと」
朱莉はそれだけ言ってまたアニメに集中し、それ以降何も言わない。アニメの音声だけが俺の部屋に響いていた。
まあこれがいつものことだ。俺は慣れた。付き合っていてもよしよししてくれたり膝枕してくれたり添い寝してくれたり……なんてのは幻想だということがわかった。
朱莉は好き放題やっている。ならば俺だって好き放題やらせてもらおう。
俺はスマホを見る。スマホの待ち受けは、ビキニ姿の星宮朱莉。
それだけじゃない、俺のスマホにはビキニの朱莉がいっぱい。俺はベッドでゴロゴロしながらそれをひたすら眺めて楽しむ。
目の前に本物の星宮朱莉がいるのに、俺はスマホの中の星宮朱莉に夢中になっている。
本物はアニメに夢中で構ってくれないから仕方ない。朱莉はすごく真剣にアニメを観ているんだ、邪魔でもしようものならガチギレされる。
だから朱莉に構ってもらえない時はスマホの中の朱莉に慰めてもらうのだ。
スマホの朱莉もすごく良い……でかい胸、胸に透けた血管……たまらない。
いくら彼女でも本人をジロジロ見てたら怒られるが、スマホの朱莉ならいついかなる時でも好きなだけいくらでも見ていられる。最高だ。
最高すぎて男の部分が膨らんでくる。
「ちょっと大ちゃん?」
「わっ!?」
スマホの朱莉に夢中になりすぎてて、いつの間にか朱莉が俺の顔を覗き込んでいたことに気づかなかった。
本物の朱莉が、近い。可愛すぎる。なんて可愛いんだ。
「あ、あれ? アニメ観てたんじゃなかったのか?」
「もう終わった」
「そ、そうなのか?」
テレビに目をやると、確かにもう終わって電源が切れていた。アニメが終わったことに気づかなかったほど俺は水着姿の朱莉に夢中になっていたということか。朱莉に負けないくらい、俺も好きなものに対する集中力はすごかったんだな。
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