前のエピソード――第2話　加害者の心理とその背後にあるもの

いじめを受けた被害者がどれほど深い苦しみを抱えるか、外からは見えないことが多い。いじめは物理的な暴力だけでなく、言葉や態度で他者を傷つける行為も含まれるが、その影響は表面的なものに留まらず、心の奥深くにまで浸透する。被害者は自分を責め、自己価値を失い、孤立感と絶望感に包まれることがある。

いじめが始まると、被害者は最初、何が起きているのか理解できずに戸惑うことが多い。なぜ自分が狙われているのか、その理由が見つけられず、次第に自分に問題があるのではないかと感じるようになる。この「自分が悪い」という思い込みは、いじめの持つ非常に残酷な側面だ。被害者は次第に自己否定を強め、自分の存在価値すら見失ってしまう。

私はかつて、いじめを受けた経験がある。その時期は、毎日が苦痛だった。教室に足を踏み入れるたびに、冷たい視線を感じ、無言の圧力が私を取り囲んでいた。誰も直接言葉を発しないが、無視や陰口が繰り返され、周囲の人間関係が閉ざされていく。その中で、次第に「自分は存在してはいけないのではないか」と感じるようになった。

いじめの被害者は、誰かに助けを求めたいと思いながらも、その声を上げることができない場合が多い。なぜなら、助けを求めることが「弱さ」だと感じてしまうからだ。社会や学校の中で、「いじめられる側にも原因がある」という誤った考えが広まっていることも、被害者が声を上げにくい一因となっている。実際にいじめを受けた時、私は誰にも相談できなかった。「自分が悪いのだから、我慢するしかない」と思い込んでいたのだ。

しかし、いじめによる心の傷は決して軽いものではない。長期間にわたっていじめを受けると、被害者は心の中で徐々に自己を否定し、誰も信用できなくなる。人間関係に対する信頼が崩れ、将来に対する希望も失われていく。私も、いじめが終わった後でも、人とのコミュニケーションに対する不安や恐怖を抱え続けた。その傷は、時間が経っても完全に癒えることはなく、ふとした瞬間に過去の痛みが蘇ることがある。

いじめは、被害者の心に長期的なトラウマを残す。学校や職場でのいじめが原因で、後の人生においても対人関係に問題を抱える人が多い。自信を失い、社会的に孤立しがちになる被害者は、再び自分を取り戻すために多大な時間と労力を費やすことになる。いじめは一瞬の出来事で終わるものではなく、長期的な影響を被害者に与え続ける。

被害者が救われるためには、まず周囲の理解が必要だ。いじめがもたらす精神的な苦しみは、外見からは見えないかもしれないが、その痛みは実在する。社会全体がいじめに対する認識を改め、被害者の心のケアを重要視することで、いじめの影響を和らげることができるかもしれない。いじめによって傷ついた人々が、自分を取り戻し、再び前向きに生きられるようにするためには、私たち一人ひとりの意識と行動が必要だと強く感じる。