無作為に人を傷つける者たちと、それに抗う者たち

第2話 加害者の心理とその背後にあるもの

いじめをする側、つまり加害者は、どんな心理で他人を傷つけるのだろうか。被害者としての立場からすると、いじめは無理解や悪意の産物に見えることが多い。しかし、加害者には加害者なりの理由や背景が存在することもある。

いじめの加害者は、しばしば自分が正当な理由で他者を攻撃していると感じている。たとえば、被害者が「変わっているから」や「みんなと違うから」という理由で標的にされることが多い。この「違い」を恐れる心理は、集団の中で安心を得たいという本能的な欲求に由来しているのかもしれない。集団に溶け込むことを重視する社会において、「異質な存在」は時として排除されがちだ。その排除が、いじめとして表面化することがある。

さらに、いじめの背後には、自己肯定感の欠如や家庭環境の問題が潜んでいることも少なくない。自分自身に自信が持てない加害者は、他者を攻撃することで一時的に自分を優位に立たせ、安心感を得ようとする。また、家庭での愛情不足や、暴力的な環境で育った場合、他者を傷つけることが「当たり前」になっていることもある。このような場合、いじめは自分自身を守るための手段として無意識に選ばれているのだ。

一方で、いじめが「集団の圧力」で行われることも多い。ある個人が他人をいじめることで、その行為が周囲に広がり、集団全体がそれに追随する。集団心理は非常に強力であり、他者を攻撃することが「正しい」とされる空気が作られると、誰もその行為に異を唱えられなくなる。このように、集団の中では、たとえ個人としての意志が弱くても、いじめが連鎖的に広がることがある。

また、加害者は自分の行為が他者に与える影響について、深く考えることが少ないことが多い。特に若い年齢では、相手の心の痛みや苦しみを想像する力が乏しく、行為の結果がどれほど深刻なものであるか理解していないことがある。こうした無理解や共感の欠如が、いじめを長引かせる原因にもなる。

いじめの加害者を一方的に悪者として捉えるだけでは、問題は解決しない。いじめの根本にある心理や社会的背景に目を向け、その背後に潜む不安や不満、自己否定感を理解することが重要だ。加害者がなぜいじめを行うのか、その理由を探ることで、いじめの連鎖を断ち切る一歩が踏み出せるはずだ。

いじめは被害者だけでなく、加害者自身にも深刻なダメージを与える行為だ。いじめを繰り返すことで加害者もまた、人間関係や社会的なつながりを失い、孤立してしまうことがある。いじめの原因をしっかりと理解し、加害者にも更生の道を提供することで、社会全体としていじめをなくしていく取り組みが求められている。