第15話 理解らせるリスト

 その後、ほどなくしてソウタは冒険者ギルドにたどり着いた.。しかし、荷車ごと建物の中に入るわけにもいかず、どうしたらいいかと立ち止まり思案していた。どう考えても荷車を置いて中に入るのは、治安がおわってそうなこの街では盗んでくれといっているようなものだし……そんな事を考えているとそこに子供たちが通りかかり話しかけられる。


「うわ~っ! すげ~たくさんの魔物~! これ全部、一人で倒したの?」「すごい……」「俺、この魔物知ってる! これって銀級の人でも一人じゃ倒すの難しいんだよ! すげぇ~」


 そう言って子供たちは興奮気味に荷車に積まれた魔物を遠慮なしにペチペチと叩く。


「ちょうど良かった! 君たち、ギルドの職員さんを呼んできてくれないか? もちろん、御駄賃あり! どう?」


「マジで? すぐに呼んでくる。ちょっと待ってて」


 それを聞いた三人組はすごい勢いでギルドの中に消えていき、本当にすぐに受付嬢らしき女性を連れて戻ってきてくれた。


「リヤン、危ないから引っ張らないで! 仕事中って言ってるでしょ! 放しなさい」


「兄ちゃん連れてきたよ!」


 そう言われオレの前に立たされた女性は何かを察したのか、急に頭を下げて謝罪を始める。


「…………す、すみません! うちの弟が本当に申し訳ありませんでした。そ、それで、いったいこの子はまた何を……?」 


「えっ? 違います、違います! 魔物を売りたかったんですが量が多かったので、この子たちに職員さんを呼んできてもらうようにお願いしたんです」


 そう言うと女性は、ほっと胸をなでおろす。どうやらこの女性は三人組のリーダーっぽい男の子の姉だったらしい。この対応を見るとこの弟にはいつも苦労させられているようだ。


「じゃあ、約束だろ?」


 リヤンと呼ばれた彼がそう言って手を出すと他の二人も一緒に手を出す。っていっても、この世界では子供への御駄賃っていくらが適正なんだろ? わからないので逆に聞いてみることにする。


「そうだな、約束したし……で、普段はこういう時、いくらぐらいもらってるの?」


「「「えっ?」」」


「……え~と……ぎ、銀貨一枚とか? なっ!」


「えっ! あっ! うんうん」「……うん、そ、そうだね」


 他の二人が逆にびっくりしてるじゃん! 日本円で千円か、大分ふっかけてきたな! そう思っていると彼の姉がすぐさま、それを否定する。


「何言ってるの! いつもは銅貨を数枚貰えればいいほうでしょう!」 


「姉ちゃん、なんで言っちゃうんだよ。じゃあ、じゃあ……せめて銅板は?」


 えっ、銅板? まさかチケットのことか? 確か二枚ぐらい残ってたけど…………もちろんあげる気はないが、これはうまくいけばチケットの情報が得られるかもしれない。これはちょっと話を聞きたいし、飯にでも誘うか……。 


「銅板はちょうど切らしてるんだよね……。もしこれを売るのを待っててくれるなら、何か食いに連れて行ってあげれるけど、それでどうかな?」


「マジで? 待つ待つ! なっ!」 


「「うん!」」


「じゃあ、みんなはその辺でちょっと待っててくれる? え~と……それで冒険者の登録とこちらの魔物を売りたいんですが……これだけあれば見習いは卒業できそうですかね……?」


「……というと、ダンジョン探索が目的でしょうか? どこか他の支部に登録をされていれば、ここで一からランクを上げをしなくても、銅級以上であればダンジョンには入ることは可能ですが……」


「他でも登録はしてないですね! あっ! 商人ギルドには登録しています」


「なるほど……ちなみにこちらの魔物はご自身で?」


「仲間と一緒でしたが、まあ、そうですね」


「なるほど、わかりました。それでは解体所にご案内いたしますね」


 その後、一旦、子供たちと別れ、案内に従いギルドの裏にある解体所に荷車を運び入れる。すると、ギルド職員の女性が何かを解体中の男たちに向かって声を掛ける。


「すみませ~ん! お客様です! 誰かお願いします!」


 『あいよ~』っという気だるそうな声とともに、プロレスラーのようなムキムキのおっさんが作業の手を止めこちらに向かってきた。


「ほ~これは…………急ぎで欲しい素材とかはあるか?」


 特にないことを伝えると査定するから少し待てと、引換券となる数字が書かれた板を渡された。


「オルソさん、査定が終わったら結果を受付までお願いします」


 『あいよ~』っとまた気だるそうに手を振ると、若手に指示を出して荷車から魔物を下ろし始める。


「うおっ! 親方。このデカいのリーダーじゃないっすか? うわっ! こっちはビックボアだし!」


「馬鹿、こっちはもっとすげぇぞ! 見てみろよ」


「うは~珍しっ! アルクスじゃん。」


 何か最初にロイロが捕まえてきた鹿みたいな生き物が、アルクスという珍しい獲物だったようだ。解体所の若者がオレが持ってきた獲物をみて盛り上がっているのを見ていると、後ろから声を掛けられ我に返る。


「それでは登録手続きをしますので受付に移動しましょう」


「は、はい。お願いします」


 今度は建物内の通路を使い移動する。この通路は正面入口の広間に続いていて、獲物の量が少ない時にはこちらの通路から解体所に行けるようになっているそうだ。広間につくといくつものテーブルが並んでいて、そこに座り飲み食いしているガラの悪い人間たちの視線が一気にオレに集まる。


「見ない顔だな」「おいっ! あいつの着ているもの見てみろよ」「金持ちのボンボンが何しに来たんだ?」「依頼にでも来たんじゃねえか?」


 …………思いっきり聞こえてるんだよね。こんな朝っぱらから酔っ払っているのか声のボリューム調整がぶっ壊れているらしい。やっぱりこの服は目立つか……この後、買いに行ったほうがいいな。せっかく見た目が出来るだけ普通の服を選んだのに、素材が普通じゃなかったっていうね……。

 

「リズちゃん! リズちゃん! そいつは何よ?」


 いかにも脳筋の軽薄そうな男が木のジョッキを持って近づいてきた。こういう時に限って関わりたくないやつが絡んでくるんだよな……。

 

「今日から登録する新人さんですよ! 皆さん、優しく色々教えてあげてくださいね」


「リズちゃんの頼みなら、こんなクソみたいなやつでも一端の冒険者にしちゃうしちゃう! それで今晩なんだけど美味しい飯屋見つけたんだけどさ――」


「――ごめんなさい! 弟の面倒があるので……それじゃ新人さんは端の受付カウンターにお願いします」


 そう言うとリズさんは、逃げるように受付カウンターの職員側に向かって行ってしまった。オレも向かおうとすると強い力でヘッドロック気味に肩を組まれる。


「おい、リズちゃんはオレが狙ってんだ! わかってんだろ? ちょっかいかけたら殺すからな…………行け!」


 言いたいことを言うと受付の方向に背中をドンっと押され、倒れ込みそうになりながらかろうじてこらえると後ろから大勢の笑い声が聞こえた。正直、腹は立った。でも今までまともに喧嘩もしたことがないし、体格の差を考えると現段階ではまず敵わないだろう。理解わからせるのは基礎値を上げてからたっぷりしてやるからな。そう思い、今笑っている奴らの顔をしっかり目に焼き付け、理解らせるリストに登録していった。

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異世界でもガチャが引きたい! 東雲うるま @kemuri0812

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